「なぜあなたは論文が書けないのか?」の著者、佐藤雅昭先生(東京大学呼吸器外科)のWeb講演を拝聴しました

7月17日に、「なぜあなたは論文が書けないのか?」の著者であられる佐藤雅昭先生(東京大学呼吸器外科)のWebセミナーを拝聴しました。低侵襲腫瘍制御学講座の本多通孝先生のお招きによるものでした。大変ありがたかったです。

臨床と研究の両立をお題とする講演から刺激を頂き、久々に幸せな気分になれました。自分にとって特に印象的であったのが、肺移植後の閉塞性細気管支炎症候群の集団から、亜型の集団(restrictive allograft syndrome)を発見され、国際的に認められるようになるまでの道程でした。

論文を書くことは、細かな作業(スモールステップ)の積み重ねで、実はあまり独創的なプロセスではない、というお考えでいらっしゃいました。
確かに、論文の執筆には、お作法があるという点では独創性はないと考えます。
このことは、小職も大学院講義で取り扱っています。

研究テーマをどうやって見つけるのかという質問に佐藤先生がご提示された考えも印象的でした。無理やりひねり出したテーマは長く続かない。むしろ、自分で調べているものを突き詰めるものほど、大きく発展する可能性がある、というものでした。肺移植後の亜型の集団を発見された経験談に裏打ちされた佐藤先生のご意見ですから、説得力があります。

臨床研究の独創性は、佐藤先生の体験談にあるように、まだ明かされていない疑問を見つけるプロセスで求められる特性です。このプロセスは、スモールステップの一言では対処することのできない、地道な探求の作業-例えば、既存の生体試料や情報データの調査と分析、検証、そこからの改善案や仮説の導出など-が求められると、私は考えております。

臨床現場で気づいた発見が、教科書や先人の知恵や論文で述べられていることとは違う可能性があると感じた時には、その発見のインパクトの大きさがその時点でわからなくても、心躍るものでした(病と共に生きる人や、ケアをする人の役に立つ可能性があるという点で)。その原体験が小職にとっての臨床研究の出発点でした。

そのプロセスを突き詰めていきたいと思える程の強いモチベーションがある時は、佐藤先生が講演の中でおっしゃった、「臨床と研究の境目が、気づかないうちに無くなっている状態(フロー状態)」なのだと思います。
弊分野でご一緒する大学院生や、小職の大学院講義にご参加いただいている皆様におかれましても、フロー状態になれるだけの発見に出会えることを願っております。

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