概要

肥満は心血管疾患などの様々な合併症を引き起こすため、世界レベルで問題となっている代謝疾患です。実際、肥満の基準に用いられる体格指数の平均値は、日本人男性で経年的に上昇している傾向がみられます(Tsugane S. Eur J Clin Nutr 2021)。そこで食行動と肥満の関係について理解を深めることが必要とされ、食行動の特徴を評価するための質問票が1980年頃からいくつも開発されてきました。食行動は無意識のうちに受け入れてきた多面的な考えや信念の結果であり、行動的な要素、認知的な要素、感情的な要素を含むと一般的に考えられています(Bond MJ. Int J Obes Relat Metab Disord 2001)。最も広く用いられている質問票は、故Stunkard博士が開発したThree-Factor Eating Questionnaire (TFEQ)です。この質問票は別名でEating Inventoryとしても知られ、51項目の質問によってCognitive restraint(自発的な食事制限-21項目)、Disinhibition(脱抑制、つまり抑制の外れやすさ-16項目)、Hunger(空腹感-14項目)の三つの領域を測定することができます。日本語版TFEQが30年以上前に開発されています(足達淑子ら. 行動療法研究 1992)。

一方でKarlsson博士らにより開発されたTFEQ-R21は、TFEQが様々な国で検証された結果、オリジナルのTFEQと異なる概念に分類された質問票です(Cappelleri JC, Karlsson J et al. Int J Obes (Lond) 2009)。21項目の質問によってCognitive restraint認知的抑制、つまり意識的に食事を制限すること-6項目)、Uncontrolled eating制御不能な摂食、つまり空腹や、食事量をコントロールできないことにより、食べ過ぎること-9項目)、Emotional eating感情的摂食、つまり不快な気分のときに食べ過ぎること-6項目)の三つの領域を測定することができます。栗田、菊地裕絵(国立国際医療研究センター病院)らは、翻訳・逆翻訳の正式な手続きを経て、TFEQ-R21日本語版を作成しました。原作者のKarlsson博士(エレブルー[Örebro]大学)にも逆翻訳の意味内容をご確認いただき、日本語版の使用許可を得ました(2022年10月10日)。他の研究者もTFEQ-R21日本語版を公表していますが、本ページで紹介するTFEQ-R21日本語版は、日本語訳作成に求められるプロセスを手順通りに実施し、信頼性・妥当性が検証されています。したがって、世界に発信する臨床研究を目標とする場合に、安心してご活用・引用して頂けます。ご利用を検討される方は、プレプリントサプリメントに情報が掲載されていますので、ご覧ください。

  • 21項目の質問文があり、次の三つのドメインを測定することができます。
    • Uncontrolled eating (UE):問3, 問6, 問8, 問9, 問12, 問13, 問15, 問19, 問20で構成
    • Cognitive restraint (CR):問1, 問5, 問11, 問17, 問18, 問21で構成
    • Emotional eating (EE):問2, 問4, 問7, 問10, 問14, 問16で構成
  • 項目1-項目16は逆転項目です。
  • 項目1から項目20については、それぞれの質問文に対して、4つの回答文の中から1つを選択してもらいます。
  • 選んだ回答文に対して、1点から4点までの得点が付与されます。
  • 項目21については、質問文に対して、8段階の数字から1つを選択してもらいます。
  • 項目21で選んだ数字のうち、1-2点を1、3-4点を2、5-6点を3、7-8点を4として再変換します。
  • ドメインスコアは、各ドメインごとに項目の平均値として計算するか、(項目の合計得点-可能な最低得点)÷(可能な最高得点-可能な最低得点)×100の換算によって0-100点の得点として計算します。
  • Cronbachのαによる内的整合性信頼性は、Cognitive restraintで0.79、Uncontrolled eatingで0.89、Emotional eatingで0.92でした。
  • 類似の食行動の尺度や体格指数との相関の程度を調べることで、基準関連妥当性を検証しました。

TFEQ-R21日本語版の版権者

Noriaki Kurita, Hiroe Kikuchi

尺度の利用について

非営利目的のご利用の場合

TFEQ-R21日本語版を活用して研究を行い、学会・論文で発表したい場合や、教育目的の書籍で使用される場合は、無償でご利用ください。但し、下記のプレプリント(medRxiv 2024)の引用を条件とします。

Kurita N, Maeshibu T, Aita T, Wakita T, Kikuchi H.
The grit personality trait, eating behavior, and obesity among Japanese adults.
medRxiv. 2024:2024.04.13.24305766. DOI: 10.1101/2024.04.13.24305766

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