栗田 宜明 特任教授

栗田 宜明 特任教授

大学院医学研究科 臨床疫学分野 特任教授

栗田 宜明

Noriaki Kurita, MD, PhD, FACP


[English version]

連絡先:kuritanアットマークfmu.ac.jp

1979年生まれ。埼玉県出身。2004年東京大学卒。京都大学大学院医学研究科医療疫学分野で臨床疫学の研鑽を積んだ後、2014年4月から福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンター講師、2015年4月から附属病院 臨床研究教育推進部 副部長 兼 講師。2016年4月から同部 部長 兼 准教授。2019年4月から大学院医学研究科 臨床疫学分野の主指導教員を務め、特任教授。京都大学博士(医学)。日本内科学会 総合内科専門医、日本腎臓学会 腎臓専門医、日本透析医学会 透析専門医、米国内科学会 American College of Physicians (ACP) 上席会員(FACP)、社会医学系専門医協会 指導医、日本臨床疫学会 上席専門家。

私は大学卒業後、市中病院で臨床に没頭していました。しかし、病院にいながら研究発表をする機会に恵まれたことがきっかけで、臨床研究に興味を持ち始めました。これに並行して、臨床の中で自分が見つけた小さな発見が本当であるか、疑問を科学的に検証するための方法を深く学びたいという衝動に駆られるようになりました。その結果、大学院進学を決意し、臨床疫学を学ぶことにしました。

臨床研究の核心部分は、医療上の切実な疑問を科学的に回答可能な形式で発掘できているかどうかと、疑問の分析結果を明瞭に可視化し、結果の意味と重要性を如何に伝えることができるかにあると感じております。これは医療者だからこそ取り組み甲斐があるものと思います。

これまで、地域住民の健康増進に資する疫学研究と、第一線でご活躍される各科の臨床エキスパートの先生方と共同で行なう臨床疫学研究に関わらせていただきました。
福島の地でも皆様にご指導を頂きながら、お役にたてるよう努めて参ります。


【研修歴・臨床歴】

社会福祉法人 三井記念病院 初期研修医 2004年4月-2006年3月
社会福祉法人 三井記念病院 内科(腎臓内科) 2006年4月-2010年3月

【競争的研究資金】

科学研究費補助金 挑戦的研究(萌芽) 令和4–6年度 (課題番号22K19690) (研究代表者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(B) 令和4–6年度 (課題番号22H03317) (研究代表者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(C) 令和4–6年度 (課題番号22K10450) (研究分担者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(C) 令和4–6年度 (課題番号22K10560) (研究分担者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(C) 令和3–5年度 (課題番号21K10314) (研究分担者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(B) 特設分野研究 令和1–3年度 (課題番号19KT0021) (研究代表者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 若手研究 平成30–32年度 (課題番号18K17970) (研究代表者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 基盤研究(B) 平成28–30年度 (課題番号16H05216) (研究分担者:栗田 宜明)
科学研究費補助金 若手研究(B) 平成27–29年度 (課題番号15K16518) (研究代表者:栗田 宜明)
科学研究費助成事業 基盤研究(C) 平成26–28年度 (課題番号26463271) (研究分担者:栗田 宜明)
科学研究費助成事業 基盤研究(C) 平成25–27年度 (課題番号25460638) (研究分担者:栗田 宜明)

【受賞】

2019年 日本臨床疫学会 第3回年次学術大会 専門家優秀賞 [記事]
2018年 日本臨床疫学会 第2回年次学術大会 優秀口演賞

【主な臨床研究】

査読つき英文論文の数は85編。そのうち、筆頭著者・共同筆頭著者としての数は31編、責任著者・最終著者*としての数は47編。

(*研究の着想・デザインから解析・論文執筆までのエフォートを、他の共著者と同等かそれ以上に割いたケースに限る)

[治療法の評価に関する研究]

Shimizu S*, Niihata K*, Nishiwaki H*, Shibagaki Y, Yamamoto R, Nitta K, Tsukamoto T, Uchida S, Takeda A, Okada H, Narita I, Isaka Y, Kurita N#, and Japan Nephrotic Syndrome Cohort Study group. (*equally contributed; #corresponding author)
特発性ネフローゼ症候群患者におけるレニン-アンジオテンシン系阻害薬の新規処方と初回の完全寛解との関係性:全国コホート研究
Clinical and Experimental Nephrology 2023; (in press)

ネフローゼ症候群GL作成ワーキンググループから発案されたクリニカル・クェスチョン、膜性腎症などの特発性ネフローゼ症候群の治療中に処方されるレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、はたして完全寛解に有効なのか?を検証しました。尿蛋白・腎機能などのように時々刻々と変化する交絡因子を調整するため、周辺構造モデルで解析しました。副腎皮質ステロイドやその他の免疫抑制剤が約9割の患者に投薬された中、約3分の2の患者でRAS阻害薬が新たに処方されました。特に膜性腎症ではRAS阻害薬の新規処方により、完全寛解が高く発生する可能性が示されました(調整発生率比2.27倍)。清水さやか先生(京都大学)・博士研究員の西脇宏樹先生・新畑覚也先生を中心に解析・論文化が進められました。主指導教員は、当時のワーキンググループリーダーの柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁でリサーチ・クエスチョンの発案に関わり、清水先生・新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援にコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。

Akizawa T*, Kurita N*, Mizobuchi M, Fukagawa M, Onishi Y, Yamaguchi T, Ellis AR, Fukuma S, Alan Brookhart M, Hasegawa T, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、シナカルセトのPTH依存的な有効性
Scientific Reports 2016; 6: 19612.
[ 紹介記事(日本骨代謝学会) ]

二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者において、シナカルセト処方開始の有効性がintact PTHの重症度の別に異なるかどうかを調べました。その結果、シナカルセト処方開始の有効性は、iPTH が高いほど大きい可能性があることが示されました。この研究はステアリング委員の先生によるご指導、iHopeの大西良浩様の支援、東北大学の山口拓洋先生、大阪大学の新谷歩先生らのご助言など、多くの先生方のご協力で実現しました。

Haga N, Kurita N, Yanagida T, Ogawa S, Yabe M, Akaihata H, Hata J, Sato Y, Ishibashi K, Hasegawa O, Kojima Y
ロボット支援下前立腺摘出術における、有棘性縫合糸による縫合が組織ダメージと下部尿路症状の縦断変化へ与える影響
Surgical Endoscopy 2018; 32: 145-153.
[ 紹介記事(研究支援) ]

前立腺がんの手術治療時に使われる縫合糸の違いで、手術後の尿道・尿道周囲の傷害の程度や、排尿の機能・QOLに一時的な違いが生じることを示しました。当時、泌尿器科学講座におられた羽賀先生がリサーチ・クエスチョンを考案され、弊分野の教員が、研究計画・解析論文化で参画させていただきました。この論文が発信されてから2年後の2020年度、羽賀先生は福岡大学医学部 腎泌尿器外科学講座の主任教授にご就任されました [詳しくはこちら]。

Kinjo Y, Kurita N, Nakamura F, Okabe H, Tanaka E, Kataoka Y, Itami A, Sakai Y, Fukuhara S
胸腔鏡・腹腔鏡併用下の食道摘出術の有効性:食道がんにおける術後合併症と中期的な腫瘍学的アウトカムの比較
Surgical Endoscopy 2012; 26: 381-390.

[検査・診断法の評価に関する研究]

Kurita N#, Wakita T, Kamitani T, Wada O, Mizuno K. (#corresponding author)
運動器疾患でのサルコペニア拾い上げを目的としたSARC-F質問票の診断精度の検証と、SARC-F+EBM診断法の開発
The Journal of Nutrition, Health & Aging 2019; 23: 732-738.

サルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-F質問票の診断精度を、運動器疾患およそ960人で検証しました。さらに、"EBM"(EldelyとBMI)の追加による診断精度の改善を調べました。感度・特異度は、SARC-F単独では不良でしたが、SARC-F+EBMでは約80%・70%でした。SARC-F単独に比べて、SARC-F+EBMの感度やAUCが優れました。この簡便な"SARC-F+EBM"がスクリーニングに応用できる可能性を示しました。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。加齢や疾患で筋肉量減少 サルコペニアの新診断方法考案. 福島民報. 2019年8月1日 日刊29ページ. また、福島民友に掲載されました。筋力低下に新診断選別法 福島医大 栗田特任教授チーム. 福島民友. 2019年8月11日 日刊4ページ.]

Nishiwaki H*, Niihata K*, Kinoshita M, Fujimura M, Kurosawa K, Sakuramachi Y, Takano K, Matsunaga S, Okamura S, Kitatani M, Tsujii S, Hayashino Y, Kurita N. (*equally contributed)
糖尿病で持続的な微量アルブミン尿への進展を予測する尿中C-メガリン:コホート研究
Diabetes Research and Clinical Practice 2022; 186: 109810.

尿中バイオマーカーの1つ、C-megalinが、早期の糖尿病性腎症(微量アルブミン尿の持続)の発症を予測するか否かを検証したコホート研究です。1型糖尿病と2型糖尿病の方752名を対象にしました。尿中C-megalin・クレアチニン比は、尿中アルブミンの量が少ない状態であるほど、微量アルブミン尿の発生との関係性が強くなることが示されました。また、尿中アルブミンに尿中C-megalinを上乗せすることで、持続する微量アルブミン尿の発症予測が改善する可能性も示されました。主指導教員が、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化を進めました。メンターのお1人であった林野泰明先生(天理よろづ相談所病院)のご支援や、きっかけを作ってくださった淺沼克彦教授(千葉大学)や福原教授(京都大学)など、多くのご縁のお蔭で第二弾を可視化することができました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。糖尿病患者、腎臓での合併症 予測に新検査法「有効」. 福島民報. 2022年3月29日 日刊25ページ. また、福島民友に掲載されました。糖尿病性腎症の発症予測 検査方法開発へ 福島医大. 福島民友. 2022年4月1日 日刊3ページ.]

Yokoyama K*, Kurita N*, Fukuma S, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、ミネラル代謝の測定頻度:ガイドライン達成および治療の調節との関係性
Nephrology Dialysis Transplantation 2017; 32: 534–541.
[ 海外学会の公表記事 ]

血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。



Kurita N#, Kinoshita M, Fujimura M, Kurosawa K, Sakuramachi Y, Takano K, Okamura S, Kitatani M, Tsujii S, Norton CE, Hayashino Y. (#corresponding author)
糖尿病における尿中C-メガリンとアルブミン尿・腎機能の関係性:横断研究
Journal of Nephrology 2022; 35: 201–210.

尿中バイオマーカーの1つ、C-megalinが、腎機能やアルブミン尿を反映するか否かを検証した横断研究です。1型糖尿病と2型糖尿病の方1576名を対象にしました。尿中C-megalin濃度と、尿中C-megalin・クレアチニン比はいずれもアルブミン尿の増加とともに上昇することがわかりました。腎機能が保たれているステージに限っては、腎機能が低くなるほど尿中C-megalin濃度の値が高くなる可能性が示されました。C-megalinの臨床的意義については、縦断的な検証が必要です。主指導教員が、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化を進めました。メンターのお1人であった林野泰明先生(天理よろづ相談所病院)のご支援や、きっかけを作ってくださった淺沼克彦教授(千葉大学)や福原教授(京都大学)、分析のご助言をくださったNorton教授(ミシガン大学)など、多くのご縁のお蔭で第一弾を可視化することができました。

[QOLの利活用に関する研究]

Fukuhara S*, Kurita N*#, Wakita T, Green J, Shibagaki Y. (*co-first authors; #corresponding author)
健康関連ホープ(HR-Hope)を測定する尺度:開発と計量心理学的検証
Annals of Clinical Epidemiology 2019; 1: 102-119.

健康に関連するホープの概念を測定可能にすることを目的に、18項目健康関連ホープ尺度(HR-Hope)の開発と計量心理学的検証を行いました。「健康と病/Health & illness」、「役割と社会的なつながり/Role & social connectedness」、「生きがい/Something to live for」の3つのドメインで構成されます。高い信頼性係数と、一般人向けの希望尺度よりもすぐれた基準関連妥当性が確認できました。治療が困難な疾患を有する患者や超高齢者を対象とした研究におけるアウトカム指標として活用されることが期待されます。また、健康行動を規定する心理的な要因の1つとしても、今後の活用が期待されます。科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号16H05216; 研究代表者:柴垣有吾; 研究分担者:福原 脇田 栗田)を受けて実施した研究です。全文読めます[free-fulltext]。

Kurita N#, Akizawa T, Fukuhara S. (#corresponding author)
自己報告のエネルギーとして測定した活力と血液透析患者の関連因子、および臨床アウトカム:J-DOPPS研究
American Journal of Kidney Diseases 2019; 73: 486-495.
[ 紹介記事(福島医大HP) ]

バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。

Kurita N#, Wakita T, Ishibashi Y, Fujimoto S, Yazawa M, Suzuki T, Koitabashi K, Yanagi M, Kawarazaki H, Green J, Fukuhara S, Shibagaki Y. (#corresponding author)
慢性腎臓病患者における健康関連ホープと治療のアドヒアランスとの関係性:多施設横断研究
BMC Nephrology 2020; 21: 453.

成人の慢性腎臓病(CKD)の病期(ステージ)と健康関連ホープ尺度(HR-Hope)との関係性、およびHR-Hopeとアドヒアランスの負担感・身体指標との関係性を横断的に分析しました。HR-Hopeスコアが高いほど、水分制限・食事制限の負担感が軽く、収縮期血圧が高くないことがわかりました。HR-Hopeスコアは、保存期ステージ5の参加者で最も低く、ステージ5DのHR-Hopeスコアはステージ4と同程度でした。
CKDの治療アドヒアランスは、健康に関連するホープをどの程度持っているかに依存しており、そのホープはCKDの病期によって異なる可能性があることを示しました。
科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号16H05216; 研究代表者:柴垣有吾; 研究分担者:福原 脇田 栗田)を受けて実施した研究です。のちに、腎代替療法についての選択肢を患者さんが理解するための対話法に関するトピックを掲載している米国NPOのウェブサイト記事の中で、本研究論文が引用されました[米国Home Dialysis Central:How to Talk to Patients About Home Dialysis: Four Steps for Professionals]。

Kurita N#, Oguro N, Miyawaki Y, Hidekawa C, Sakurai N, Ichikawa T, Ishikawa Y, Hayashi K, Shidahara K, Kishida D, Yoshimi R, Sada KE, Shimojima Y, Yajima N. (#corresponding author)
日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)における主治医への信頼感、健康関連ホープ、服薬アドヒアランス尺度との関係性:TRUMP2-SLEプロジェクト
Rheumatology (Oxford, England) 2022; (in press)

日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)の方々を対象に、主治医への信頼感健康関連ホープ服薬アドヒアランス尺度とどのように関係するかを横断的に分析しました。主治医への信頼が厚いほど、あるいは高いホープを抱くほど、服薬アドヒアランス得点が高いことと関係しました。科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けた♣️TRUMP2-SLE♠️プロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果であり、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生、岡山大学の宮脇先生らとのチームプロダクトです。

Tsugihashi Y, Hirose M, Iida H, Hayashi S, Yasunaka M, Shirahige Y, Kurita N, and the ZEVIOUS group.
在宅医療患者における要介護度分類の妥当性を日常生活機能・サルコペニアの主観的な指標から検証する:ZEVIOUS研究
Geriatrics & Gerontology International 2021; 21: 229-237.

東京・奈良・長崎で在宅医療を受ける患者の要介護度と自己報告による生活機能・身体機能との関係性を横断的に分析しました。生活機能は国際生活機能分類(ICF)を反映するWHODAS2.0で、身体機能はサルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-Fで評価しました。要介護度が高くなるほど、自己報告に基づく生活機能や身体機能のレベルが低下することを示しました。
長崎在宅Dr.ネット・医療法人社団鉄祐会・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku Evaluative Initiatives and Outcome Study)の成果(チームプロダクト)です。

[転帰を予測するスコアリング開発の研究]

Kamitani T, Wakita T, Wada O, Mizuno K, Kurita N#. (#corresponding author)
"U-TEST" - 整形外科患者におけるサルコペニアの簡便な診断サポートツール: SPSS-OK研究
British Journal of Nutrition 2021; 126: 1323-1330.

SPSS-OKプロジェクトの第7報目となります。2つの質問と2つの患者属性からサルコペニアを診断するサポートツールを開発して、U-TESTと名づけました (U = Underweight, T = Thinning, E = Elderly, ST = Strength)。京都大学の 紙谷司先生が主筆で、あんしん病院の和田先生、関西大学の 脇田 貴文先生らとともに発信したチームプロダクトです。指導教員の栗田宜明が研究デザインの立案から始めたプロジェクトからの成果であり、解析・論文化までを支援しました。[※研究成果を発表した筆頭演者の紙谷司先生に対して、2022年2月25日に第6回日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会 大会長賞が送られました: 記事URL ]


Doi T*, Yamamoto S*, Morinaga T*, Sada K*, Kurita N*, Onishi Y. (*Equally contributed)
透析前腎臓診療を受けていた慢性腎臓病ステージ5の、血液透析を導入してから1年以内の生存を予測するスコア
PLoS One 2015; 10: e0129180.
[ 紹介記事(日本語) ]

血液透析患者の生命予後は以前に比べて改善している一方で、血液透析導入後に早期にお亡くなりになる患者さんも残念ながらいらっしゃいます。そのような患者を予測することは、透析導入の意思決定を医師・患者間で行う際に有用な情報となる可能性があります。本研究では、保存期腎不全診療を受けていた患者において、血液透析導入1年後の死亡リスクを予測するスコアを開発しました。予測に使う因子は、血液透析導入時の診療情報から入手可能なものです。さらに、予測スコアの内的妥当性も検証しました。今後、外部妥当性の検証が必要です。ご縁を頂き、広島大学・新潟大学・名古屋大学・岡山大学の腎臓・透析医の先生方とともにご一緒することができた研究です。他大学の先生がリサーチ・クエスチョンを考案され、教員が研究計画の立案、解析、論文化にコミットしました。

[臨床現場のアウトカム研究(その他)]

Kawada H*, Kurita N*, Nakamura F, Kawamura J, Hasegawa S, Kotake K, Sugihara K, Fukuhara S, Sakai Y. (*Equally contributed)
British Journal of Surgery 2014; 101: 1143-1152.

大腸がんのステージ(病期)分類に用いられるTNM分類には、かつて主要血管根部のリンパ節転移の有無が含まれていました。TNM分類7版には、主要血管根部のリンパ節転移が含まれず、その代わりに転移リンパ節の個数でリンパ節分類が決まっていました。本研究は、根治的リンパ節廓清をうけたステージIIIの大腸癌がんの多施設コホートを用い、主要血管根部のリンパ節転移がTNM分類7版と独立に、生命予後に関連することを示した。また、TNM分類7版に主要血管根部のリンパ節転移を加えると、生命予後の予測が改善することを示した。筆頭著者の川田先生(当時、京都大学)がリサーチ・クエスチョンを考案され、教員が解析・論文化でコミットしました。

Kurita N, Hayashino Y, Yamazaki S, Akizawa T, Akiba T, Saito A, Fukuhara S
透析間体重増加と生命予後の関係性を、血清アルブミンとのインターアクションで再考する:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2017; 27: 421-429.

血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。


Miyamoto M, Kurita N, Suemitsu K, Murakami M
透析導入前の慢性腎臓病ステージ5における、内シャントと生命予後のアウトカム
American Journal of Nephrology 2017; 45: 356-364.
[ Editorial記事 ]

保存期腎不全(CKD)で内シャント(AVF)を作製するタイミングについては、欧米のガイドラインでは早期(CKDステージ4)を推奨しています。しかし、早期の作製をする場合、透析を導入する前にAVFが閉塞したり、お亡くなりになる割合が高い実態が報告されていました。本邦のガイドラインでは、AVFを作製するタイミングについて、CKDステージ5の段階を推奨していることに本研究では着目しました。その結果、CKDステージ5でAVFを作成した後に、透析を始める前にAVFが機能しなくなったり・お亡くなりになる割合は低いことを明らかにしました(1年で約5%)。本邦独自のステージでの作製する診療実態を記述した研究です。教員が計画立案・解析・論文化に参画しました。研究は総説記事に取り上げられました[Editorial記事: When Is the Right Time for Arteriovenous Fistula Placement in Patients with End-Stage Renal Disease? (末期腎不全患者の内シャント造設の適時はいつなのか?)]。また、UpToDateに引用され、「腎不全患者の血管アクセスが必要と思われる時期、とくに推算GFRで5-15ml/min/m2のころに、血管アクセス外科医に患者さんを紹介すべき」というUpToDateの著者によるオピニオンの礎となりました。 [Arteriovenous fistula creation for hemodialysis and its complications]。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。

Katayama K, Kurita N#, Takada T, Miyashita J, Azuma T, Fukuhara S, Takeshima T. (#corresponding author)
嚥下リハビリテーションを受けた誤嚥性肺炎の高齢者における経口摂取開始のタイミングと院内アウトカムの関係性
Clinical Nutrition 2022; 41: 2219-2225.

白河厚生総合病院(福島県白河市)に入院し、摂食・嚥下リハビリテーションを受けた高齢の誤嚥性肺炎患者を対象に、24時間以内の経口摂取開始(早期開始)と院内アウトカムとの関連について分析しました。48時間以降の経口摂取に開始した群と比較して、24時間以内の経口摂取開始によって経口摂取退院の可能性が増えるという十分なエビデンスは得られませんでしたが、24時間以内の経口摂取開始は入院期間の短縮と関連しました。慎重な嚥下機能評価に基づいて早期の経口摂取を決めることで、誤嚥性肺炎の予後を悪化させずに在院日数を短縮できる可能性を示しました。当時、白河総合診療アカデミーのシニアレジデントであった片山皓太先生の臨床研究の成果です。白河総合診療アカデミーの教員の先生方とのチームプロダクトでもあり、リサーチ・クエスチョンの明確化に高田先生・宮下先生・東先生・福原先生で指導され、リサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化に竹島先生・主指導教員がコミットしました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。誤嚥性肺炎患者の経口摂取 1日以内再開で入院日数が短縮. 福島民報. 2022年10月25日 日刊20ページ. また、福島民友に掲載されました。誤嚥性肺炎の患者 入院24時間以内の食事再開 退院まで日数短縮 福島医大研究. 福島民友. 2022年10月25日 日刊20ページ.]

[ヘルスサービスリサーチ]

Hayashi S, Shirahige Y, Fujioka S, Tsugihashi Y, Iida H, Hirose M, Yasunaka M, Kurita N, and the ZEVIOUS group.
在宅医療患者における患者本位の医療とアドバンスケアプランニングとの関係性:ZEVIOUS研究
Family Practice 2022; (in press)

東京・奈良・長崎で在宅医療を受ける患者の患者経験(ひらたく言えば、患者さん本位の医療を受けた経験を評価するスコア)アドバンスケアプランニングの参加との関係性を横断的に分析しました。患者経験はプライマリ・ケアの質を反映するJPCAT-SFで評価しました。患者経験が良好であるほど、アドバンスケアプランニングの参加割合が高いことを示しました。患者経験のドメイン別に調べても同様の関係性があることも確認できました。
医療法人社団鉄祐会・長崎在宅Dr.ネット・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku Evaluative Initiatives and Outcome Study)の成果(チームプロダクト)です。主指導教員が、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化でフルコミットしました。

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N#. (#corresponding author)
誤診経験と現主治医への信頼との関係性
Journal of General Internal Medicine 2022; 37: 1115-1121.

成人の非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の患者を対象に、患者本人及び、患者家族の誤診経験が現主治医への信頼にどの程度影響をおよぼすのかを調べました。主治医に対する信頼は、今回我々が日本語化した11項目の改良版Trust in Physicians Scaleで評価しました。患者および家族の誤診経験は、現主治医に対する信頼の低下と関連していました(平均差 -4.30点、95%CI -8.12点~-0.49点および-3.20点、95%CI -6.34点~-0.05点)。隠れた信頼低下の原因として、患者本人や家族の誤診体験に着目することの重要性が示唆されました。スタンフォード大学医学部のThom教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト (the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報に掲載されました。患者らの誤診体験 別の医師でも信頼低下. 福島民報. 2021年7月7日 日刊2ページ. また、福島民友に掲載されました。主治医の信頼度数値化 福島医大 患者への質問票開発. 福島民友. 2021年7月7日 日刊3ページ. また、デンマーク患者安全学会が発行するニュースレターでも紹介されました。Fagligt Nyt om patientsikkerhed, Dansk Selskab for Patientsikkerhed.]

Niihata K*, Nishiwaki H*, Kurita N#, Okada H, Maruyama S, Narita I, Shibagaki Y, Nakaya I.(*Equally contributed; #corresponding author)
診療方針のばらつきと、ネフローゼ症候群診療ガイドラインからの乖離:腎臓専門医の調査研究
Clinical and Experimental Nephrology 2019; 23: 1288-1297.
[ 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績 ]

ネフローゼ症候群GLワーキンググループで行った調査研究で、主指導教員は柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁で参画させていただきました。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などのネフローゼ症候群に関する診療のばらつきの実態を調べました。また、診療のばらつきを決定する、腎臓専門医の特性、施設の特性などを調べました。本研究では、専門医が担当する症例数が多い場合、ステロイドの投与期間が長いことがわかりました。また、経験年数が長い場合、あるいは大学附属病院の場合、高齢者へのステロイドの減量投与が行われやすいことがわかりました。専門医の回答割合が低かったため、今後はより代表性のあるサンプリングで検証することが望まれます。中屋来哉先生(岩手県立中央病院)を中心に、博士研究員の新畑覚也先生・西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)で調査票を作成されました。主指導教員は、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援でコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。[free-fulltext (全文読めます)]

Nishiwaki H*, Niihata K*, Shimizu S, Shibagaki Y, Yamamoto R, Nitta K, Tsukamoto T, Uchida S, Takeda A, Okada H, Narita I, Isaka Y, Kurita N, and Japan Nephrotic Syndrome Cohort Study group. (*equally contributed)
成人特発性ネフローゼ症候群におけるレニン-アンジオテンシン系阻害薬の処方と処方関連因子:全国コホート研究
The Journal of Clinical Hypertension 2021; 23: 999–1007.

ネフローゼ症候群GL作成ワーキンググループから発案されたクリニカル・クェスチョンです。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などの特発性ネフローゼ症候群に対するレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の処方実態を調べました。ネフローゼの治療開始前に4割弱の患者にRAS阻害薬が処方されていました。処方されていなかった患者のうち、約3分の1の患者でRAS阻害薬が新たに処方されました。特に膜性腎症や、観察開始時点の収縮期血圧が高い患者ほど、新規処方される実態が明らかとなりました。今後は、RAS阻害薬により蛋白尿を寛解させるだけの有効性が実臨床で認められるかどうか、その検証が望まれます。西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)・博士研究員の新畑覚也先生を中心に解析・論文化が進められました。主指導教員は、当時のワーキンググループリーダーの柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁でリサーチ・クエスチョンの発案に関わり、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援にコミットしました。

Yazawa M, Omae K, Shibagaki Y, Inaba M, Tsuruya K, Kurita N
血液透析患者における透析施設までの交通手段と健康関連QOLとの関係性:J-DOPPS研究
Clinical Kidney Journal 2020; 13: 640-646.

透析施設へ自力で通院できる血液透析患者では、他者による運転よりも、自分で運転する場合や、自転車や徒歩で通院する場合の方が、将来の健康関連QOLが良好である可能性が示されました(健康が日常生活機能に及ぼすインパクトや、主観的な健康感がより良いということです。身体的コンポーネントサマリースコア、精神的コンポーネントサマリースコアのいずれもです)。聖マリアンナ医科大学の谷澤先生がリサーチ・クエスチョンを発案され、臨床研究教育推進部の大前先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と、論文執筆の支援でコミットさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあってか、ジャーナルの総説記事にもとりあげられました [Editorial記事: Often forgotten, transport modality to dialysis may be life-saving (透析施設への移動手段は忘れられがちだが、命を救うかもしれない)]。小職の地域では遠方から通院する必要がある方が多いため、解釈はもちろん慎重でないといけないと思っております。


[地域住民のアウトカム研究]

Kurita N# (#corresponding author)
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故と福島市の出生率の関係性:分割時系列解析
JAMA Network Open 2019; 2: e187455.
[ 原発事故から2年間の福島市の出生率は低下 3年目以後は震災前からの長期的な少子化トレンドに ]

本研究では、大震災と原発災害が福島市の出生率(月別データ)に与えた影響を、臨床疫学的手法で分析しました。震災後2年の間は、およそ10%の出生率の低下があったと推定しました。震災後2年以降から2017年までの出生率は、震災前の傾向と同様でした(分割時系列解析という手法によると、震災によって出生率の傾向が震災前と比べて変わったとは言えない分析結果を得ました)。一時的な出生率の低下からの回復は、復興の努力の反映であると考えられました。全文読めます[free-fulltext]。また、日経メディカル・福島民報・福島民友で紹介されました。[原発事故から2年間の福島市の出生率は低下 3年目以後は震災前からの長期的な少子化トレンドに]



福島市の出生率低下 震災前と同じ水準に. 福島民友新聞. 2019年3月7日 2ページ

Ito F, Tsutsumi Y, Shinohara K, Fukuhara S, Kurita N#. (#corresponding author)
前面衝突事故の時には車の前面形状の違いが外傷重症度の違いに影響する
PLoS ONE 2019; 14: e0223388.

車はエンジンの位置の違いにより、「鼻のある」ボンネット型と、「鼻のない」キャブオーバー型のトラックおよびワゴンに分けられます。正面衝突事故で救急搬送された軽自動車の乗員943名を対象としたコホート研究により、四肢骨盤が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.2倍、ワゴンの場合に3.4倍高くなることが明らかとなりました。また、頭部頸部が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.0倍高くなることもわかりました。大学院生の伊藤 文人先生と一緒に主指導教員が研究を着想し、解析論文化を指導しました。福島県にも還元しうる知見を得ました。太田西ノ内病院の篠原一彰先生、救急医で交通外傷に詳しい堤悠介先生、福原先生のお蔭でもありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております

Kurita N, Horie S, Yamazaki S, Otoshi K, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S.
高齢男性での、男性ホルモンの低値・うつ症状と転倒:横断研究
Journal of the American Medical Directors Association 2014; 15: 30-35.
[ 海外学会誌紹介記事 ]

転倒は寝たきりの主な原因であり、発症予測・予防が重要です。本研究では、高齢男性に多く見られるテストステロン減少やうつ状態が脆弱性の一因となることに着目し、転倒との関係性を調べました。その結果、テストステロンが低い状態とうつ状態の両者は、独立に転倒と関係することがわかりました。男性ホルモン欠乏とうつ状態は合併しうるため、転倒の危険性を相乗的に高める可能性が示唆されます。今後は縦断的な評価が必要です。この研究成果は、順天堂大学の 堀江 重郎 教授、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野のご縁で実現したものです。堀江先生より、メディカルトリビューンでご紹介いただきました。[テストステロンで男らしさと健やかさを保て!]

Kurita N, Yamazaki S, Fukumori N, Otoshi K, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Horie S, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S
地域在住の成人では、過活動膀胱の症状の程度は転倒に関連する:LOHAS研究
BMJ open 2013; 3: e002413.
[ 海外学会誌紹介記事 ]

過活動性膀胱(かかつどうぼうこう)と転倒の関係性を分析した横断研究です。過活動膀胱は、尿意切迫感(突然にトイレに行きたくなって我慢ができない状況)を中心に、頻尿・夜間頻尿・失禁を伴うものです。過活動性膀胱の症状が重症であるほど、転倒との関連が強くなることを明らかにしました。福島県只見町・南会津町の地域住民(40歳以上、平均68歳)が対象となっています。平成20年より実施されているLOHAS研究からの成果で、京都大学医療疫学分野の福原教授、本学整形外科学講座の菊地先生・紺野教授、順天堂大学泌尿器科学講座の堀江教授のご縁で研究をさせていただくことができました。米国泌尿器科学会の医学誌で紹介されました。[海外学会誌紹介記事]

Kurita N, Horie S, Yamazaki S, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S
男性ホルモンの低い値が低い腎機能と関係する:LOHAS研究
Journal of the American Medical Directors Association 2016; 17: 371.e1-.e6.
[ テストステロンで男らしさと健やかさを保て! ]

福島の高齢化地域に在住の成人男性848名を対象にした横断調査です。唾液テストステロン濃度が低いほど、推算糸球体濾過量(eGFR)が低いことを示しました。この関係性は、年齢などの背景因子で補正した上での結果でした。60歳以上の高齢者に限定して分析した場合も同じ結果でした。この研究により、腎機能は男性ホルモンの低下によって減少する可能性が示唆された。今後、縦断的な検証が必要であると考えております。この研究成果は、順天堂大学の 堀江 重郎 教授、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野のご縁で実現したものです。堀江先生より、メディカルトリビューでご紹介いただきました。[テストステロンで男らしさと健やかさを保て!]

Iida H*, Kurita N*#, Takahashi S, Sasaki S, Nishiwaki H, Omae K, Yajima N, Fukuma S, Hasegawa T, Fukuhara S. The Sukagawa Study Group (*equally contributed; #corresponding author)
超高齢者の塩分摂取量・体重過多が高い血圧と関係する:須賀川研究
The Journal of Clinical Hypertension 2019; 21: 942-949.

須賀川市の後期高齢者288名(平均年齢80歳)を対象に、一日食塩摂取量(田中式で推定)、体重と血圧上昇との関連を横断的に調査しました。一日食塩摂取量の平均は9.1g/日でした。食塩摂取量と体重の1標準偏差あたりの増加が、収縮期血圧4.1mmHg および5.3mmHg の上昇と関連しました。体重の1標準偏差あたりの増加が、拡張期血圧2.7mmHg の上昇と関連しました。生活習慣の変容により後期高齢者の血圧を管理できる可能性を示しました。大学院研究生の飯田 英和先生が着想し、主指導教員が解析論文化を指導しました。臨床研究イノベーションセンターのOB・現スタッフの努力の賜物で行うことができた研究です。須賀川市にも還元しうる知見を得ました。皆様のお蔭でありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております。[※研究成果が、7月11日の 福島民報 日刊に掲載されました。後期高齢者の高血圧 食塩摂取量と体重 関連. 福島民報. 2019年7月11日 日刊25ページ.]

Tominaga R, Kurita N, Kokubun Y, Nikaido T, Sekiguchi M, Otani K, Iwabuchi M, Shirado O, Fukuhara S, Konno S
SRS-Schwab ASD分類の3つの矢状面修飾因子(sagittal modifier)でみた脊椎・骨盤アライメントと腰痛特異的QOLの用量反応関係
European Spine Journal 2021; 30: 3019-3027.

「脊柱の変形がどの程度あると、腰痛に伴う生活の質がどれぐらいインパクトを受けるのか?」これが、成人脊柱変形の診療で重要なクリニカル・クエスチョンとなっています。国際側弯症学会では、脊椎のX線撮影から得られる脊椎・骨盤アラインメントの計測値を、変形の程度の指標としています。
本研究では、矢状面で計測される「骨盤形態角(Pelvic Incidence)と腰椎前弯角(Lumbar Lordosis)の差分(PI-LL)」が10°を超えるほど、腰痛に伴う生活の質が低くなる可能性を示しました。脊柱変形に伴って骨盤で体の重心を保とうとする代償メカニズム(cone of economy)と代償の限界を説明できる知見と考えられます。博士研究員の富永亮司先生が着想し、主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。福島県の南会津・只見町の成人を対象に行われた研究で、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野との共同成果です。

【主な症例報告】

Kurita N, Ito T, Shimizu S, Hirata T, Uchihara H.
Diabetes Care 2014; 37: e198-e199.

DDP-4阻害薬のビルダグリプチンで薬剤性肝障害に至った症例を報告しました。ビルダグリプチン内服中はリンパ球幼若化試験(DLST)が陽性で、他のDDP-4阻害薬に切りかえた後は肝障害の改善とDLSTの陰性化が確認されましたため、この薬剤に特異的な肝障害であったと考察しました。本報告は1例報告に過ぎませんでしたがDiabetes Careに掲載され、それから8年後には、イギリスのビッグデータをもちいてDDP-4阻害薬全体で急性肝障害が増加することを示した同誌の観察研究論文の中で引用されました。

Kurita N, Kotera N, Ishimoto Y, Tanaka M, Tanaka S, Toda N, Fujii A, Kobayashi K, Sugimoto T, Mise N
Crohn病に合併した血管沈着優位の二次性アミロイド腎症
Clinical Nephrology 2013; 79: 229-232.
[ UpToDateに引用されました ]

UpToDateに引用されました [overview of amyloidosis]。また、ジャーナルの表紙に採用されました。