概要

患者と医師の信頼関係(トラスト)は、対人関係の中でも中心的なものであり、それ自体が重要であると信じられています。医師への信頼が高い患者は、その後の治療のアドヒアランスが高くなり、適切に予防行動をとる可能性が、研究から示されています。
米国では、トラストが古くから医学分野で盛んに研究されていました。トラストが医療におけるコミュニケーション研究の1分野を形成し、医学研究の裾野を広げています。米国でトラストが医学研究の対象となっている背景には、米国における医療制度の急速な変化によって、医療に対する信頼が損なわれたのではないかという懸念があります。
本邦でも、医療におけるトラストの重要性は増しているように思います。共同意思決定(SDM:シェアード・ディシジョン・メイキング)に対する関心の高さや、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う医療供給体制の変化に対する不安は、医療に寄せるトラストに密接に関係しているはずです。

栗田、矢嶋信幸(昭和大学)、小黒奈緒(昭和大学)、脇田貴文(関西大学)らは、翻訳・逆翻訳の正式な手続きを経て、修正Trust in Physician Scale日本語版を作成しました(Suzuki R, Yajima N, Oguro N, Wakita T, Kurita N, et al. J Gen Intern Med. 2021)。原作者のお1人であるDavid H. Thom教授(スタンフォード大学医学部)にも逆翻訳の意味内容をご確認いただき、日本語版の使用許可を得ました(2020年4月20日)。本ページで紹介する修正Trust in Physician Scale日本語版は、主治医(担当医)に対する信頼を11項目の質問によって測定するスケールであり、専門領域を問わずプライマリ・ケアの現場においても使用に適しています(Thom DH, et al. Med Care. 1999; 37(5): 510-7)。日本語訳作成に求められるプロセスを手順通りに実施し、信頼性・妥当性を検証したものです。したがって、世界に発信する臨床研究を目標とする場合に、安心してご活用・引用して頂けます。

  • 11項目の質問文があります。
  • 問1・問5・問7・問11が逆転項目です。
  • それぞれの質問文に対して、5つの回答文の中から1つを選択してもらいます。
  • 選んだ回答文に対して、1点(まったくそう思わない)から5点(とてもそう思う)までの得点が付与されます。最高得点は55点になります。
  • (合計得点-最低得点[11点])÷(最高得点[55点]-最低得点[11点])×100の換算によって、0-100点の得点に変換できます。

修正Trust in Physician Scale日本語版の版権者

Noriaki Kurita, Nobuyuki Yajima, Takafumi Wakita, Nao Oguro, David H. Thom

尺度の利用について

非営利目的のご利用の場合

修正Trust in Physician Scale日本語版を活用して研究を行い、学会・論文で発表したい場合や、教育目的の書籍で使用される場合は、無償でご利用ください。但し、下記の論文(JGIMで公開済み)の引用を条件とします。

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N#. (#corresponding author)
誤診経験と現主治医への信頼との関係性
Journal of General Internal Medicine 2021; (inpress)

成人の非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の患者を対象に、患者本人及び、患者家族の誤診経験が現主治医への信頼にどの程度影響をおよぼすのかを調べました。主治医に対する信頼は、今回我々が日本語化した11項目の修正Trust in Physicians Scaleで評価しました。患者および家族の誤診経験は、現主治医に対する信頼の低下と関連していました(平均差 -4.30点、95%CI -8.12点~-0.49点および-3.20点、95%CI -6.34点~-0.05点)。隠れた信頼低下の原因として、患者本人や家族の誤診体験に着目することの重要性が示唆されました。スタンフォード大学医学部のThom教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト (the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報に掲載されました。患者らの誤診体験 別の医師でも信頼低下. 福島民報. 2021年7月7日 日刊2ページ. また、福島民友に掲載されました。主治医の信頼度数値化 福島医大 患者への質問票開発. 福島民友. 2021年7月7日 日刊3ページ.]

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N.
Association of patients’ past misdiagnosis experiences with trust in their current physician: the TRUMP2-Net study.
medRxiv. 2021:2021.01.25.21250300. DOI:10.1101/2021.01.25.21250300

営利目的でのご利用の場合

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