著者の順番、責任著者が著者の貢献に与える印象は?

1. はじめに

論文業績に対する貢献は、筆頭著者(first author)が最も大きいはずであり、その論文の発表にあたって研究の実行・分析・執筆に最もエフォートを割いた人に割り当てられるポジションが筆頭著者であることは、疑いの余地がないと思う。

問題はそれ以外の共著者をどう決めるかである。臨床研究では多施設で複数の共著者の貢献があって初めて論文が完成できるケースが増えている。そのため、著者の順番や、責任著者(corresponding author)最終著者(last author)をどのような基準で決めるのか、合議しておかないとなかなか決められない。なぜならば、著者の順番、責任著者、最終著者の決め方が、施設によって異なっているためだ。

著者のリストを見ただけでは、共著者の貢献の質と量があいまいであったからこそ、クレジットを明確に示すことが推奨されるようになってきた。クレジットには、研究の発案・研究デザインの計画・データ収集・解析・結果の解釈・論文の草稿作成・実質を伴う指導などに細分化される(詳しくは:オーサーシップ、著者の貢献 を参照)1。これらの細目が論文の中で“正直に”明記されていれば、少なくとも共著者の貢献の「質」-つまり、どの共著者が研究のどの段階で具体的な貢献をしたのか-がわかるようになる。だから、著者の順番・責任著者・最終著者をどう決めるかは、もはや問題ではなくなるはずだ。

ところが、著者の貢献が明示されていない場合、読者は著者の順番や責任著者が誰であるかによって、貢献の質や大きさの認識を誤ってしまう可能性が、研究より明らかにされている2。本稿では、この研究結果を紹介したい。

なお本稿を記すことになったきっかけは、レジデント時代に苦楽を共にした阿部 智一先生(筑波記念病院 救急科 診療部長/筑波大学医学医療系 客員教授)が、私たちの研究の中で第2著者や最終著者がどうやって決まるのかをお尋ねいただいたことであった3。阿部先生は、今では数多の臨床研究論文を出版され、後進育成に励んでおられる。頂いた機会に感謝申し上げます。

2. 調査項目

これは2002年に実施された、北米(カナダ・アメリカ)の外科部門および内科部門の部門長176名からの回答を分析した研究である。
研究者たちが部門長に調査した内容は大きく分けて2つある。

  • 仮想の臨床研究のタイトルと5人の著者を作成して、どの著者が以下の細目について貢献していると思うかをたずねた:研究の構想とデザイン、データ取得、データの分析と解釈、論文の草稿、論文の修正、統計解析、研究資金の獲得、運営の支援、研究の監督。回答は筆頭著者が責任著者の場合と、最終著者が責任著者の場合に場合分けして得られた。また、どの著者のポジションが、最も栄誉があると思うかを回答してもらった。
  • 著者の順番を決める基準として、次の項目に関してどの程度強く同意するかをたずねた:作業した量、アルファベット順、著者の年功序列、ランダム順、原稿執筆への貢献度、研究資金の獲得、など。

3. 著者のポジション・責任著者と貢献に対する印象の関係性

研究の着想とデザインへの貢献したのはどのポジションにいる著者だと感じるのか?興味深いことに、著者のポジションが変わらなくても、責任著者が誰であるかによって印象が異なるらしい。それを示しているのが下の図だ。

筆頭著者が研究の着想やデザインに貢献したと思われているかどうかは、筆頭著者が責任著者を兼ねている時に生じやすい。筆頭著者のみと、最終著者との共同のみで回答の4分の3程度を占める(89+32=121)。
一方で、最終著者が責任著者を兼ねている時には、最終著者が着想やデザインに貢献していると考える回答が多かった。最終著者のみと、筆頭著者との共同のみで回答の4分の3弱を占める(56+62=118)。筆頭著者のみが貢献していると考える回答の多さは3番目にとどまった(22)。

筆頭著者がデータの分析や解釈に貢献したと思われているかどうかは、筆頭著者が責任著者を兼ねている時に生じやすい。筆頭著者のみと考える回答が多い(82)。印象が様々なようで、その他のパターンを考える回答も多い(47)。
一方で、最終著者が責任著者を兼ねている時には、最終著者が分析や解釈に貢献していると考える回答が多い。最終著者のみと、筆頭著者とあわせてのパターンが3分の1弱を占める(9+41=50)。

要するに、最終著者が責任著者を兼ねていると、研究の着想やデザイン・データの分析や解釈に対しての筆頭著者の貢献が認識されにくくなっていることがわかる。

4. 筆頭著者・最終著者以外の貢献に対する印象は?

責任著者が筆頭著者の場合であっても最終著者の場合であっても、それ以外の著者(第2著者から第4著者)の貢献についての回答には、大きなばらつきがあったそうだ。第2著者から第4著者に対して、特定の貢献を認識したのは40%未満であったと要約している。

ちなみに、この研究の途中段階と思われる研究レターでは、第2著者、第3著者、第4著者の著者に対して、50%以上の部門長が回答した貢献の細目は、原稿の修正のみだったと報告されている4

 

5. 栄誉のある著者のポジションはどこか?

筆頭著者が最も栄誉のあるポジションであると考えられている。
興味深いことに、最終著者が責任著者の場合は、最終著者が最も栄誉があるポジションと考える回答が多くなった(15→46)。

2番目に栄誉があると考えられたポジションは、責任著者が筆頭著者であるか最終著者であるかで若干異なる。
筆頭著者が責任著者を兼ねる場合、最終著者に次いで(65)、第2著者が多かった(58)。
最終著者が責任著者を兼ねる場合、最終著者と答える回答が多数を占め(95)、その次が筆頭著者であった(42)。第2著者と答える回答は少なかった(17)。

6. どんな基準で著者の順序を決めるべきか?

下の図を見れば一目瞭然である。その研究に注いだ作業量論文執筆への貢献度を基準とすることに8割以上の部門長が賛同している。
研究資金の獲得、年功序列で決めることに賛同する部門長が3割弱-1割強を占めた。
ICMJEのオーサーシップの基準によれば、研究資金の獲得は基準に含まれないので、個人的には興味深い。

 

7. おわりに

著者の貢献を明示すれば、筆頭著者以外の研究に対する貢献の大きさはおのずとわかるものだと思っていた。著者の順番を、研究に対する作業の量や論文執筆に対する貢献にもとづいて決めるべきという部門長たちの考えは、自分にとってほっとするものであった。

自分の身近なところでは、第2著者が第1著者と同等かそれ以上の量と質で論文に貢献をしているケースを良く知っている。しかし、その貢献を明示しない限り、とりわけ最終著者が責任著者である場合、第2著者に対する栄誉が与えられにくくなるらしい。これは不幸なことである。幸いなことに、第2著者がしばしば責任著者を兼ねている自験例が増えている。おそらくそのようなケースでは第2著者に対して研究の発案やデザイン、分析から解釈まで貢献を認知してもらえるのだろうと想像するが、今回紹介した論文ではそのような設定がない。

最終著者は、指導教員であり上級著者であるとみなされることが多い。この研究の考察中でもそのような先行研究を紹介していたが、この研究ではそれだけでなく、部門長たちが最終著者のポジションを筆頭著者に次いで重んじていることが明らかとなった2。それと同時に、最終著者は、研究の着想やデザイン・データの分析や解釈に貢献しているだろうという期待もデータが語っている。しかしながら、最終著者は貢献の質や量に関わらず、組織における地位によって自然と決まる(決めざるを得ない?)ケースもままあることを、お読みいただいている皆様は実感しているのではないだろうか。

この所感を書いている時点において、小職が役者不足ながら最終著者や責任著者を仰せつかったケースでは、原則的に研究の着想・デザインから解析・論文執筆までのエフォートを、他の共著者に劣らずかそれ以上に割いている。読者が著者の順位だけで著者たちの貢献の質や量を誤って判断しないためにも、著者らは論文に対する貢献を明示するとともに、実際の貢献の量や質に応じて、著者の順序や責任著者・最終著者を話し合って決めていくことが望ましい。

8. 参考文献

  1. オーサーシップ、著者の貢献. 福島県立医科大学大学院医学研究科 臨床疫学分野. https://noriaki-kurita.jp/resources/authorship-credit/authorship/. Accessed Jul 5, 2020.
  2. Bhandari M, Guyatt GH, Kulkarni AV, et al. Perceptions of authors’ contributions are influenced by both byline order and designation of corresponding author. J Clin Epidemiol. 2014;67(9):1049-1054. doi: 10.1016/j.jclinepi.2014.04.006
  3. Authorshipの順番の決め方は? 阿部研究室. https://abelab.sakura.ne.jp/blog/Authorshipの順番の決め方は?/. Accessed Jul 8, 2020.
  4. Bhandari M, Busse JW, Kulkarni AV, Devereaux PJ, Leece P, Guyatt GH. Interpreting Authorship Order and Corresponding Authorship. Epidemiology. 2004;15(1):125-126. doi: 10.1097/01.ede.0000100282.03466.2c