博士研究員の臨床研究論文が脊椎領域のトップジャーナルの1つであるEuropean Spine Journal誌に受理されました

脊椎の変形を引き起こす病気のために、腰痛が生じたり生活機能が妨げられたりします。しかし、脊椎の変形がどの程度あると、腰痛に関連する生活の質(QOL)が低下するのかに関しては、十分に解明されていませんでした。
本研究では南会津・只見町の地域住民を対象に、脊椎・骨盤のアライメントと腰痛特異的QOLの用量反応関係を調べました。SRS-Schwab ASD分類の3つの矢状面修飾因子(sagittal modifier)のうち、特に骨盤形態角(pelvic incidence)と腰椎前弯角(lumbar lordosis)の差分(PI-LL)が大きいほど、臨床的に意味のあるQOLの低下が見られました。
博士研究員の 富永亮司 先生が主筆で、指導教員の 栗田 宜明 が、リサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。本学整形外科学講座の先生方、京都大学の福原教授らとの共同研究の成果です。

Tominaga R, Kurita N, Kokubun Y, Nikaido T, Sekiguchi M, Otani K, Iwabuchi M, Shirado O, Fukuhara S, Konno S
SRS-Schwab ASD分類の3つの矢状面修飾因子(sagittal modifier)でみた脊椎・骨盤アライメントと腰痛特異的QOLの用量反応関係
European Spine Journal 2021; 30: 3019-3027. doi:10.1007/s00586-021-06965-3

「脊柱の変形がどの程度あると、腰痛に伴う生活の質がどれぐらいインパクトを受けるのか?」これが、成人脊柱変形の診療で重要なクリニカル・クエスチョンとなっています。国際側弯症学会では、脊椎のX線撮影から得られる脊椎・骨盤アラインメントの計測値を、変形の程度の指標としています。
本研究では、矢状面で計測される「骨盤形態角(Pelvic Incidence)と腰椎前弯角(Lumbar Lordosis)の差分(PI-LL)」が10°を超えるほど、腰痛に伴う生活の質が低くなる可能性を示しました。脊柱変形に伴って骨盤で体の重心を保とうとする代償メカニズム(cone of economy)と代償の限界を説明できる知見と考えられます。博士研究員の富永亮司先生が着想し、主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。福島県の南会津・只見町の成人を対象に行われた研究で、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野との共同成果です。

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