幣分野ではデザインや解析・論文化の面で学内・外の臨床研究を支援させて頂いております。ここでは、幣分野と連携して実際に臨床研究論文を発信された学内の講座の先生の寄稿をご紹介致します。

研究発信された先生

富永 亮司 先生
(会津医療センター整形外科・脊椎外科 講師 [現 医療法人財団 岩井医療財団 稲波脊椎・関節病院])

論文タイトル・雑誌名

Tominaga R, Kurita N, Kokubun Y, Nikaido T, Sekiguchi M, Otani K, Iwabuchi M, Shirado O, Fukuhara S, Konno S.
“Dose-response relationship between spino-pelvic alignment determined by sagittal modifiers and back pain-specific quality of life”
European Spine Journal 2021; 30: 3019-3027.
[abstract]

この研究が明らかにしたこと

本研究では、脊椎のX線写真で計測される「骨盤形態角(Pelvic Incidence)と腰椎前弯角(Lumbar Lordosis)の差分(PI-LL)」が10°を超えるほど、腰痛に伴う生活の質が低くなる可能性を示しました。「脊柱の変形がどの程度あると、腰痛に伴う生活の質がどの程度インパクトを受けるのか?」という成人脊柱変形の診療では切実なクリニカル・クエスチョンに対して、従来の研究よりもより正しく詳しい分析デザインを用いて明らかにしました。

この研究は臨床や診療ガイドラインにどのように貢献する可能性があるか

成人脊柱変形に対する矯正手術は、医療技術や手術器具の改良が進んだため、近年では多く行われるようになってきています。一方で、矯正の指標となる脊柱アライメントと腰痛に特化されたQOLとの関係性についての知見は、これまで検討が充分には進んでいませんでした。本研究では、どれぐらいの脊柱アライメントになるとQOLが悪化する傾向があるのかを、質の高い研究を行った上で示しております。本研究結果は、今後の脊柱変形の分類や手術計画の一助になる可能性があると考えています。

臨床疫学分野/臨床研究教育推進部との共同作業に関して

共同作業で有用と感じたことや感想は

「成人の脊柱変形、いわゆる「腰曲がり」の治療は数多く行われるようになってきているが、どのような矯正目標を達成すべきかについては、質の高い研究で明らかにされていない」ということに常日頃から疑問を感じておりました。脊柱アライメントに関するデータを利用できる環境を頂き、先行研究の限界点である単純な相関関係の検討ではなく、様々な交絡因子を考慮した用量反応関係を検討することで、より脊柱アライメントと腰痛特異的QOLの真の関係性に迫る研究アプローチを学ばせて頂きました。

栗田先生とはその後も共同研究を継続して行わせて頂いております。毎回新たな視点や最新の手法、より質の高い研究にするための論文構成などご指導頂き、自分の研究の質が数段レベルアップするようにご尽力頂いており、大変感謝しております。