富永 亮司 博士研究員

富永 亮司 博士研究員

博士研究員

富永 亮司

Ryoji Tominaga, MD, PhD


[English version]

1980年生まれ。福島県出身。2006年福島県立医科大学卒。2014年4月京都大学大学院 社会健康医学系専攻 医療疫学分野 特別研究学生、臨床研究者養成コース受講生。2015年ハーバード公衆衛生大学院Principles and Practice of Clinical Research修了。2016年3月福島県立医科大学 大学院医学研究科 博士課程修了(運動機能再建学分野)。

【所属学会・資格】
日本整形外科学会(整形外科専門医)
日本臨床疫学会(認定専門家)

【研修歴・臨床歴】
2006年 財団法人星総合病院 初期臨床研修
2008年 福島県立医科大学整形外科学講座
2018年 福島県立医科大学会津医療センター 整形外科・脊椎外科学講座


【主な臨床研究】

  1. Tominaga R*, Ikenoue T*, Ishii R, Niihata K, Aita T, Okuda T, Shimizu S, Taguri M#, Kurita N#. (*co-first authors; #co-last authors)
    日本人の骨粗鬆症患者へのロモソズマブとビスフォスフォネート使用による心臓血管系への安全性の比較:操作変数法を用いた新規ユーザーデザイン
    Journal of Bone and Mineral Research 2025; doi:10.1093/jbmr/zjaf010 (in press)

    この研究は、骨粗鬆症治療薬であるロモソズマブとビスフォスフォネートが心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の発生に及ぼす影響について、日本の骨粗鬆症患者を対象に比較したものであり、ロモソズマブが心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている中でビスフォスフォネートとの比較を通じてロモソズマブの安全性を評価することを目的としました。日本の医療レセプトデータ(医療機関が診療報酬を請求する際に作成する記録)を利用し、骨粗鬆症の診断を受けたかもしくは脆弱性骨折を経験し、ロモソズマブまたはビスフォスフォネートを新規に処方された患者約6万人弱を対象に分析しました。1年以内の心血管疾患について、ロモソズマブの非調整発生率比は1.08倍(95%信頼区間: 1.00–1.18)であり、さらに操作変数法と呼ばれる治療適応によるバイアスを補正する方法で分析した結果、ロモソズマブのハザード比は1.30倍(95%信頼区間: 0.88–1.90)でした。以上から、ロモソズマブはビスフォスフォネートと比較して1年以内の心血管疾患リスクを有意に増加させる明確なエビデンスがあるとは言えませんでした。この研究は、ロモソズマブの心血管リスクが重大でない可能性を示唆する一方で、統計的パワーが十分でない可能性もあるため、より大規模な疫学研究が望まれます。

    滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの池之上辰義先生と東京医科大学 医療データサイエンス分野の田栗正隆先生らとの共同成果(チームプロダクト)です。主筆は、富永亮司先生が務められました。主指導教員は、研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。

  2. Sato M, Tominaga R, Kurita N, Sekiguchi M, Otani K, Konno Si, Oi N
    地域在住高齢者における嚥下障害と運動機能の関連性
    Geriatrics & Gerontology International 2023; 23: 603-608. doi:10.1111/ggi.14632

    南会津・只見町の65歳以上の地域住民を対象にした研究です。1732名を分析した結果、EAT-10で評価した嚥下障害に対して、握力の低さと、動的なバランス機能の低下を反映するTimed Up and Goの測定時間が関連しました。筆頭著者は、リハビリテーション医学講座の佐藤先生です。主指導教員は、博士研究員の富永先生とともに、リサーチ・クエスチョンの明確化と解析論文化のサポートでコミットしました。

  3. Tominaga R, Kurita N#, Sekiguchi M, Yonemoto K, Kakuma T, Konno S-i. (#corresponding author)
    腰部脊柱管狭窄症診断サポートツールおよび腰部脊柱管狭窄症自己報告型問診票の診断精度
    PLOS ONE 2022; 17: e0267892. doi:10.1371/journal.pone.0267892

    腰部脊柱管狭窄症(LSS)の診断サポートツールと自己報告型問診票の診断精度を、1657施設の整形外科外来のセッティングで検証し、北米脊椎外科学会(NASS)のLSSの臨床記述と比較しました。診断サポートツールと自己報告型問診票の診断精度は、それぞれ91.3%と83.8%、特異度は76.0%と57.6%であり、感度においてNASSの臨床記述よりも優れました。主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・研究デザイン・論文化でコミットしました。本学の整形外科学講座や他大学の先生方との共同成果です。

  4. Tominaga R, Kurita N, Kokubun Y, Nikaido T, Sekiguchi M, Otani K, Iwabuchi M, Shirado O, Fukuhara S, Konno S
    SRS-Schwab ASD分類の3つの矢状面修飾因子(sagittal modifier)でみた脊椎・骨盤アライメントと腰痛特異的QOLの用量反応関係
    European Spine Journal 2021; 30: 3019-3027. doi:10.1007/s00586-021-06965-3

    「脊柱の変形がどの程度あると、腰痛に伴う生活の質がどれぐらいインパクトを受けるのか?」これが、成人脊柱変形の診療で重要なクリニカル・クエスチョンとなっています。国際側弯症学会では、脊椎のX線撮影から得られる脊椎・骨盤アラインメントの計測値を、変形の程度の指標としています。
    本研究では、矢状面で計測される「骨盤形態角(Pelvic Incidence)と腰椎前弯角(Lumbar Lordosis)の差分(PI-LL)」が10°を超えるほど、腰痛に伴う生活の質が低くなる可能性を示しました。脊柱変形に伴って骨盤で体の重心を保とうとする代償メカニズム(cone of economy)と代償の限界を説明できる知見と考えられます。博士研究員の富永亮司先生が着想し、主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。福島県の南会津・只見町の成人を対象に行われた研究で、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野との共同成果です。

  5. Kato K, Otoshi K, Tominaga R, Kaga T, Igari T, Sato R, Kurita N, Konno S
    高校野球選手における筋骨格系の痛みと心理的ストレス反応の関連性:横断的研究
    The Orthopaedic Journal of Sports Medicine 2021; 9: 23259671211054422. doi:10.1177/23259671211054422

    整形外科学講座の加藤欽志先生が筆頭で解析論文化したリサーチ・クエスチョンが、米国整形外科スポーツ医学会の系列誌に掲載されました。福島県の高校野球選手944名を対象に「体のどこの部位の筋骨格系の痛みが、強い心理的ストレス反応と関係するか?」を分析した調査研究です。特にピッチャーでは、重度の肘痛・腰痛の経験が、強い心理的ストレス反応と関連することがわかりました。博士研究員の富永亮司先生と主指導教員が解析・結果の解釈・論文の準備で参画させて頂きました。

  6. Omae K, Kurita N#, Takahashi S, Fukuma S, Yamamoto Y, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group (Collaborators: Iida H, Niihata K, Tominaga R). (#corresponding author)
    AGEs蓄積と過活動膀胱(OAB)の関係性:須賀川研究
    Asian Journal of Urology 2021; 8: 189-196. doi:10.1016/j.ajur.2020.03.004

    終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、過活動膀胱である可能性が高いか否かを検証した横断研究です。過活動膀胱は、尿意切迫感(突然にトイレに行きたくなって我慢ができない状況)を中心に、頻尿・夜間頻尿・失禁を伴うものです。膀胱組織における終末糖化産物の関与を示唆する先行研究があったにもかかわらず、健常な後期高齢者においては、過活動膀胱との関連性があるとはいえませんでした。ネガティブスタディーは一般的にアクセプトされにくいですが、臨床研究教育推進部の大前先生が辛抱強く研究を続けて出版されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。全文お読みいただけます[free-fulltext]。

  7. Niihata K*, Takahashi S*, Kurita N#, Yajima N, Omae K, Fukuma S, Okano T, Nomoto Y, Omori K, Fukuhara S. (*Equally contributed; Collaborators: Iida H, Tominaga R; #corresponding author)
    高齢地域住民における終末糖化産物(AGEs)の蓄積と難聴の関係性:須賀川研究
    Journal of the American Medical Directors Association 2018; 19: 235-239.e1. doi:10.1016/j.jamda.2017.09.008

    終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、聴力障害である可能性が高いことを示した横断研究です。新畑先生と高橋先生がリサーチ・クエスチョンを考案し、主筆されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。

Tominaga R, Sekiguchi M, Yonemoto K, Kakuma T, Konno S
Establishment of reference scores and interquartile ranges for the Japanese Orthopaedic Association Back Pain Evaluation Questionnaire (JOABPEQ) in patients with low back pain.
J Orthop Sci 2018; 23: 643-648
[abstract]

Tominaga R, Fukuma S, Yamazaki S, Sekiguchi M, Otani K, Kikuchi S, Sasaki S, Kobayashi S, Fukuhara S, Konno S.
Relationship Between Kyphotic Posture and Falls in Community-Dwelling Men and Women: The Locomotive Syndrome and Health Outcome in Aizu Cohort Study.
Spine (Phila Pa 1976) 2016; 41: 1232-1238
[abstract]