博士研究員の臨床研究論文がヘルスサービス研究専門誌のBMC Health Services Research誌に受理されました

医師全般への信頼が、特定の医師に対する信頼の形成に強く影響すると考えられています。他方で、特定の医師への信頼感は高い状態で維持されることが多く、患者は信頼する医師を許そうとする傾向があると言われています。本研究では、家族の受けた医療に対する不満が、医師全般への信頼感と、自分の主治医への信頼感にどのように影響するのかを調べました。この目的のために、5項目版のWake Forest Physician Trust Scaleを日本語化しました。研究の結果、不満に伴う医師全般への信頼感の低下の大きさは、自分の主治医に対する信頼感の低下よりも大きいことが確認されました。

博士研究員の小黒奈緒先生が着想し、主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。大学院研究生の鈴木先生も論文作成に協力しました。昭和大学リウマチ・膠原病内科の矢嶋准教授、関西大学脇田教授、ウェイク・フォレスト大学医学部Hall教授との共同成果です。


Oguro N, Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Wakita T, Hall MA, Kurita N#. (#corresponding author)
家族の医療体験が自分の主治医や医師全般へのトラスト(信頼感)に与えるインパクト
BMC Health Services Research 2021; 21: 1122. doi:10.1186/s12913-021-07172-y

非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の成人患者を対象に、家族が受けた医療に不満を抱くと、現在の主治医に対する信頼度や医師全般に対する信頼度にどのような影響があるかについて調査を行いました。主治医に対する信頼度は、今回我々が日本語化した5項目の短縮版Wake Forest Physician Trust Scaleで評価しました。結果、家族の受けた医療に対する不満は、医師全般に対する信頼の低下と関連していることがわかりました(平均差は-9.58点、95%信頼区間は-12.4点~-6.76点)。現在の主治医に対する信頼度も低下しましたが、低下の程度は医師全般に対する信頼度の低下に比べて小さいものでした(平均差は-3.19点、95%信頼区間は-6.02点~-0.36点)。ウェイク・フォレスト大学医学部のMark Hall教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[※この研究は、健康政策やヘルスサービスリサーチの専門誌であるThe Milbank Quarterly誌に引用されました。具体的には、家族のコンテキストが健康の社会的決定要因のメカニズムを理解する上で重要であることの根拠に用いられました。]

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