オーサーシップとクレジット

1. はじめに

“publish or perish”と半世紀以上も前から言われているぐらい、大学では論文を発表することが、重要な業績の1つとされている。研究業績が重視されすぎることによる焦りからなのか、あるいはマンパワー・資金力が相対的に欧米より低下して不利な研究環境にいることで生じる焦りからなのか、日本は撤回論文数で突出した研究者が多い国であると指摘されている(榎木英介. サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン)1

このような研究不正を予防するために、研究方法やデータ源を透明にする動きや、オーサーシップ(authorship/著者の資格)のポリシーを明示する動きが推奨されるようになってきた2

臨床研究を行う上でも、研究不正の予防は1つのトピックになっており、義務づけられている研究倫理の講習で学ぶ内容である。弊分野のメンバーが、これらのトピックを知っておくことは学内外の研究者と共同研究を進めていく上で有用と思われる。なぜなら、研究不正は、望ましい行為であるクレジット(研究者がその研究に労力や時間つぎ込んで実質的な貢献[contribution]をしたことを認める行為)と表裏一体の関係で密接に絡み合うためだ。このため、本ページで以下のトピックを簡潔に記す。

 

オーサーシップ、著者の貢献のページ

このページは、以下の行為が適切であるかどうかを考えるために用意した。

  • 自分の研究論文を良い雑誌に載せてもらいたいために、ほぼ研究に関わっていない著名な先生を共著者にした。
  • 研究論文に全く目を通さない同僚を、自分の研究論文の共著者に加えた。
  • 論文執筆に多大な貢献をした共同研究者を、共著者リストに加えなかった。
  • 筆頭著者の論文に研究不正が発覚したが、共同著者の私は「責任がないし、説明できない」と主張した。

 

著者の順番、責任著者が著者の貢献に与える印象は?

このページは、以下の習慣について考えるために用意した。

  • 第2著者が筆頭著者に次いで研究に質と量で貢献をしたが、最終著者が責任著者を務めた。
  • 筆頭著者の指導者を兼ねる研究の責任者が、第2著者となるべきか最終著者となるべきかで悩んでいる。

 

盗用、引用、著作権

このページは、以下の行為が適切であるかどうかを考えるために用意した。

  • 他の論文に書かれている考察を、自分の研究論文の考察にそのままコピペして、出典は書かなかった。
  • 講演会で演者が話したアイデアを、会場にいたものが断りなく使用して研究した。
  • 他の講演者のスライドを、自分の講演発表で自分ののもののように使いまわした。
  • 上司が部下の未発表のアイディアや研究を見て、自分の論文として発表した。

 

2.参考文献

  1. 榎木英介. サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン. Yahoo!ニュース. https://news.yahoo.co.jp/byline/enokieisuke/20180822-00094058/. Accessed Dec 22, 2019.
  2. McNutt MK, Bradford M, Drazen JM, et al. Transparency in authors’ contributions and responsibilities to promote integrity in scientific publication. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018;115(11):2557-2560. doi: 10.1073/pnas.1715374115