會田 哲朗 博士研究員

會田 哲朗 博士研究員

総合内科・総合診療学講座 / 総合内科・総合診療医センター 講師

會田 哲朗

Tetsuro Aita, MD, PhD, FACP


[English version]

1987年生まれ。山形県出身。2012年福島県立医科大学卒業。2021年4月福島県立医科大学 大学院医学研究科 臨床疫学分野入学。2023年10月ロンドン大学衛生熱帯医学大学院 疫学修士課程にも入学。2024年3月博士課程早期修了(臨床疫学分野)、医学博士を取得。2024年より臨床疫学分野の博士研究員。

僻地・離島医療、地域中核病院での医療、大学病院での医療と様々な診療形態で働き、総合内科医として研鑽してきました。臨床医として患者様を全力で診察する中で現場の疑問を解決しうる臨床研究、特に臨床疫学研究に興味を持つようになり、集中して学びたいと思い門を叩かせていただきました。臨床研究という軸は今後強みになりうると、総合内科医として感じております。大学院生の間、臨床現場から生じる疑問の解決の一助となるrelevantな臨床研究を、福島から世界に発信することができました(Emerg Infect Dis 2023, Int J Infect Dis 2023)。引き続きこのような研究を発信できるように、また、臨床疫学の指導ができるよう学んで参ります。

【所属学会・資格】
日本内科学会(総合内科専門医・内科指導医)
米国内科学会(ACP上級会員)
プライマリ・ケア連合学会
日本病院総合診療医学会(認定医)
日本感染症学会
日本臨床疫学会
総合診療特任指導医

【研修歴・臨床歴】
2012年 沖縄県立中部病院 初期臨床研修
2014年 沖縄県立中部病院 内科専攻医
2016年 沖縄県立北部病院 総合内科
2017年 福島県立医科大学 総合内科
2024年 福島県立医科大学 総合内科・総合診療学講座
2024年 福島県立医科大学 総合内科・総合診療医センター


[主な臨床研究]

  1. Tominaga R*, Ikenoue T*, Ishii R, Niihata K, Aita T, Okuda T, Shimizu S, Taguri M#, Kurita N#. (*co-first authors; #co-last authors)
    日本人の骨粗鬆症患者へのロモソズマブとビスフォスフォネート使用による心臓血管系への安全性の比較:操作変数法を用いた新規ユーザーデザイン
    Journal of Bone and Mineral Research 2025; doi:10.1093/jbmr/zjaf010 (in press)

    この研究は、骨粗鬆症治療薬であるロモソズマブとビスフォスフォネートが心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の発生に及ぼす影響について、日本の骨粗鬆症患者を対象に比較したものであり、ロモソズマブが心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている中でビスフォスフォネートとの比較を通じてロモソズマブの安全性を評価することを目的としました。日本の医療レセプトデータ(医療機関が診療報酬を請求する際に作成する記録)を利用し、骨粗鬆症の診断を受けたかもしくは脆弱性骨折を経験し、ロモソズマブまたはビスフォスフォネートを新規に処方された患者約6万人弱を対象に分析しました。1年以内の心血管疾患について、ロモソズマブの非調整発生率比は1.08倍(95%信頼区間: 1.00–1.18)であり、さらに操作変数法と呼ばれる治療適応によるバイアスを補正する方法で分析した結果、ロモソズマブのハザード比は1.30倍(95%信頼区間: 0.88–1.90)でした。以上から、ロモソズマブはビスフォスフォネートと比較して1年以内の心血管疾患リスクを有意に増加させる明確なエビデンスがあるとは言えませんでした。この研究は、ロモソズマブの心血管リスクが重大でない可能性を示唆する一方で、統計的パワーが十分でない可能性もあるため、より大規模な疫学研究が望まれます。

    滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの池之上辰義先生と東京医科大学 医療データサイエンス分野の田栗正隆先生らとの共同成果(チームプロダクト)です。主筆は、富永亮司先生が務められました。主指導教員は、研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。

  2. Kanakubo Y, Kurita N#, Ukai M, Aita T, Inanaga R, Kawaji A, Toishi T, Matsunami M, Munakata Y, Suzuki T, Okada T. (#corresponding author)
    血液透析における人を中心に据えた医療の質とアドバンスケアプランニングへの参加との関連性
    BMJ Supportive & Palliative Care 2024; 14: e2872-e2879. doi:10.1136/spcare-2024-004831

  3. Inanaga R, Toida T, Aita T, Kanakubo Y, Ukai M, Toishi T, Kawaji A, Matsunami M, Okada T, Munakata Y, Suzuki T, Kurita N#. (#corresponding author)
    血液透析患者における医師への信頼、多次元ヘルスリテラシー、服薬アドヒアランスの関係性
    Clinical Journal of the American Society of Nephrology 2024; 19: 463-471. doi:10.2215/CJN.0000000000000392

    日本の血液透析患者を対象に質問紙調査を行い、健康に関する情報を入手して適切に活用する力(ヘルスリテラシー)が服薬を指示通りに続ける程度(服薬の遵守度)にどのように影響するか、またこの影響が医師への信頼度によってどのように中継されるかを調査しました。

    その結果、機能的なヘルスリテラシーと伝達的なヘルスリテラシーは、服薬の遵守度と良い関係があることが分かりましたが、批判的なヘルスリテラシーが高いと服薬の遵守度が低下する傾向がありました。さらに、これらのヘルスリテラシーと服薬の遵守度の関係は、医師への信頼によって中継される可能性が示されました。言いかえると、健康情報を理解する力が高いほど、服薬の遵守度が高くなりますが、これは医師の治療の説明などに対する信頼が役割を果たしており、信頼するほど医師の指示通りに服薬を続けられる傾向があるという考えを、研究が支持しました。
    この結果から、血液透析患者の服薬の遵守度を向上させるためには、適切なヘルスリテラシーに対応したアプローチだけでなく、医師との信頼関係の構築も重要であることが確認できました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。福島医大 人工透析患者の服薬行動調査 効用に懐疑で中断の傾向 稲永医師、栗田特任教授のチーム. 福島民報. 2024年1月31日 日刊21ページ. また、研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。医療情報 積極収集する患者 服薬順守度高く 福島医大の稲永医師ら調査. 福島民友. 2024年1月31日 日刊19ページ.]

  4. Aita T, Sando E, Katoh S, Hamaguchi S, Fujita H, Kurita N
    日本における発疹熱(murine typhus)の血清有病率とその予測因子:大規模な血清疫学研究
    Emerging Infectious Diseases 2023; 29: 1438-1442. doi:10.3201/eid2907.230037

    「発疹熱」の日本での報告は稀ですが、2020年8月から11月にかけて、房総半島南部の2,382人の住民を対象に、この疾患の疫学を明らかにするための調査を行いました。原因菌であるRickettsia typhiの血清有病率と、同時に「ツツガムシ病」として知られる病気の病原菌であるOrientia tsutsugamushiの血清有病率も調査しました。驚くべきことに、Rickettsia typhiの血清有病率はOrientia tsutsugamushiの1.4倍も高いことがわかりました。これにより、「発疹熱」が現代において、発生はしていても注目されていない病気であることが示唆されました。この研究は、総合内科・臨床感染症学講座の山藤教授がリードしたプロジェクトで、大学院生の會田先生が筆頭著者として参画しました。主指導教員は、主要評価項目の解析やリスク因子の解析と結果の見せ方、論文の書き方で力を注ぎました。[※本研究の成果が、福島民報 日刊に掲載されました。「発疹熱」見逃されている恐れ 福医大研究チーム発表 適正診断へ実態解明急ぐ. 福島民報. 2023年8月5日 日刊27ページ. 福島民友 日刊に掲載されました。発疹熱見逃しか 高い抗体保有率 積極的な検査を 福島医大研究成果. 福島民友. 2023年8月4日 日刊23ページ.]

  5. Aita T, Sando E, Katoh S, Hamaguchi S, Fujita H, Kurita N
    日本におけるリケッチア感染症の紅斑熱グループと発疹熱グループの血清学的交差反応性
    International Journal of Infectious Diseases 2023; 130: 178-181. doi:10.1016/j.ijid.2023.03.012

    この研究は、日本紅斑熱(感染症法で四類感染症に指定されています。原因菌はRickettsia japonicaです。)という病気を確定診断された人々の血清が、発疹熱という別の病気の原因菌であるRickettsia typhiの抗体検査に対して交差反応をする頻度を調べたものです。その結果、約20%の症例で交差反応が確認されました。しかし、ペア血清中の両方のIgM/IgG力価を比較することで正確に診断できる症例があり、鑑別困難な症例は全体の5.6%にとどまりました。この研究は、総合内科・臨床感染症学講座の山藤教授がリードしたプロジェクトで、大学院生の會田先生が筆頭著者として参画しました。主指導教員は、主要評価項目の解析や結果の見せ方、論文の書き方で力を注ぎました。[※本研究の成果が、福島民報 日刊に掲載されました。福医大の研究チーム 「日本紅斑熱」患者の抗体の2割 「発疹熱」の抗体と誤認される可能性. 福島民報. 2023年5月17日 日刊3ページ.また、福島民友 日刊に掲載されました。感染症の抗体 誤認恐れ 福島医大発表 日本紅斑熱と発疹熱. 福島民友. 2023年5月18日 日刊19ページ.]

[ 主な学会発表 ]
Aita T, Kurita N, Katoh S, Hamaguchi S, Sando E.
Non-negligible seroprevalence of murine typhus and its predictors in Japan: a large-scale seroepidemiological study
ACP Internal Medicine Meeting 2022, Apr 28, 2022; Web/Chicago