業績

Kurita N*, Miyashita J*, Nishimura M*, Kawarazaki H, Sofue T, Toida T, Inoue K, Kado H, Toda S, Nishiwaki H, Sugitani S, Nakaya I, Yamada Y, Yamamoto M, Shibata S, Maeda A, Oka H, Nishino T, Suzuki T, Komukai D, Furusho M, Inanaga R, Nishi K, Taki Y, Shimizu H, Yamada S, Asano K, Miyasato H, Murakami M, Tsutsui T, Nakamura T, Adachi T, Asada H, Uehara K, Tsukamoto T, Zamami R, Raita Y, Miyoshi K, Okamoto T, Ito T, Terawaki H, Fukuhara C, Yamamoto M, Naganuma T, Nagai K, Nagai K, Fujisaki K, Tamura Y, Shimizu H, Hirashio S, Nakanishi S, Furukata S, Nakano N, Shibagaki Y. (*co-first authors)
Journal of Nephrology 2026; doi:10.1093/joneph/aajag079 (in press)


本研究では、腎代替療法の選択における共同意思決定(Shared Decision-Making: SDM)の根幹となる「患者が自身の価値観を医療者へ伝えること」に着目し、その抵抗感と背景要因を明らかにしました。全国49施設で実施した調査では、約4分の1の患者が私生活や価値観について医療者に話すことへ抵抗を感じており、この抵抗感が強いほどSDMの質が低いことが示されました。さらに、量的・質的データを統合した収斂型混合研究法により、医療者への信頼や健康を優先したいという思いが価値観の開示を後押しする一方で、療法選択への姿勢、性格的特徴などが、価値観を開示できる患者と開示しにくい患者を分ける重要な要因であることが明らかとなりました。
これらの結果から、真に患者中心の腎代替療法選択を実現するためには、医療者が患者一人ひとりの価値観、感情、性格、療法選択への姿勢の多様性を理解し、信頼関係を築きながら意思決定を支援することが重要であることを示しています。本研究は、科学研究費補助金(JP21K10314、JP19KT0021、JP22K19690)の助成を受けたPREPARES研究PREference for PAtient REnal replacement therapy and Sharing Study)の成果です。栗田が研究構想、量的・質的データの統合解析、および論文執筆を担当し、質的研究の専門家である宮下先生、西村先生と共同で質的データの分析・解釈を行いました。

Kurita N.
腎臓診療のための臨床疫学:研究の問いの立て方 ― バイオマーカーから患者報告型アウトカム(PRO)まで
Clinical and Experimental Nephrology 2026; 30: 559–569. doi:10.1007/s10157-026-02822-z


本総説は、腎臓医かつ臨床疫学者の視点から、日常診療で生じるクリニカルクエスチョンを、どのように質の高い臨床研究へと発展させるかを解説した論文です。医療の質を「構造・プロセス・アウトカム」で捉える基本モデルをベースにして、バイオマーカー評価のような従来型の研究から、患者報告アウトカム(PROs)、患者の体験や感情、さらには医療者と患者の関係性といった主観的要素までを、臨床疫学の枠組みの中で体系的に整理しています。臨床統計学的手法そのものだけでなく、「何を問い、なぜそれを問うのか」というリサーチ・クエスチョンをデザインする力の重要性を強調している点が特徴であり、患者を中心に据えた腎臓診療を実現するための臨床研究の考え方を、次世代の医療者・研究者に向けて示しています

Yamaguchi T, Takahashi N, Inanaga R, So R, Kikuchi H, Noma H, Sasai H, Kamada K, Sugimoto T, Tsushima H, Ichikawa T, Miyake H, Fujita S, Ono K, Miwa Y, Hasegawa A, Suzuki N, Onishi A, Matsui T, Watanabe R, Hasegawa Y, Ono R, Isozaki T, Ishikawa Y, Yajima N, Kurita N.
JMIR Research Protocols 2025; 14: e78612. doi:10.2196/78612
Aita T, Miyawaki Y, Katayama Y, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Yajima N, Gupta AB, Kurita N
処方エラー、予約エラー、個人情報が他者に聞こえてしまう経験と医師への信頼低下の関係性
Journal of General and Family Medicine 2026; 27: e70086. doi:10.1002/jgf2.70086

Kurita N, Maeshibu T, Shimizu S, Aita T, Wakita T, Kikuchi H.
BioPsychoSocial Medicine 2025; 19: 26. doi:10.1186/s13030-025-00347-7


日本では「やせ」「太り気味」のどちらにも問題のある食行動が見られ、社会的な課題になっています。今回の研究では、

  • 身体イメージのズレ(自分の体型を実際よりも“やせている/太っている”と思い込むこと)
  • ヘルスリテラシー(健康情報を理解し、活用する力)

が、食行動にどう影響するのかを調べました。

【研究でわかったこと】
① 体型を正しく認識できているかどうかに関係なく、機能的ヘルスリテラシー(基本的な読み書き・理解力) が高い人は、問題のある食行動をとりにくいことがわかりました。

② “情報をうまく取得する力”や“批判的に考える力”の食行動への影響は、体型の思い込みで変わる:特に、伝達的ヘルスリテラシー(人と相談したり、情報を活用する力) の影響が「身体イメージのズレの種類」で逆転していました。

  • 自分を“実際よりやせている”と思っている人 → 伝達的ヘルスリテラシーが高いほど 感情的な食行動をとりやすい
  • 自分を“実際より太っている”と思っている人 → 伝達的ヘルスリテラシーが高いほど 感情的な食行動をとりにくい

つまり、同じ“情報をうまく取得する力”でも、「自分の体型認識」がズレている方向によって関係がまったく変わりました。

【何が言えそうなのか?】
基本的なヘルスリテラシーの向上は、誰にとってもプラスではありますが、伝達的・批判的ヘルスリテラシーを伸ばす支援は、身体イメージのタイプに合わせた工夫が必要かもしれないことが示唆されました。
本研究の成果(チームプロダクト)は、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号JP22H03317; 研究代表者:栗田)を受けて得られたものです。

栗田宜明, 河原崎宏雄, 石橋由孝, 柴垣有吾
腎と透析 2025; 99: 522–529. doi:10.24479/kd.0000002067

腎臓・透析における臨床研究で用いられるPRO (patient reported outcome) とPRE (patient reported experience)に関するコンセプトや使い道、健康関連ホープ尺度について解説しています。

Kurita N, Maeshibu T, Aita T, Wakita T, Kikuchi H.
BioPsychoSocial Medicine 2025; 19: 15. doi:10.1186/s13030-025-00337-9


肥満は個人の生活習慣の問題にとどまらず、社会や行政が取り組む健康政策(パブリックヘルス)においても重要な課題です。私たちの研究では、「やり抜く力(グリット)」と肥満の関係を、日本の成人を対象に調べました。
その結果、グリットが高い人ほど「肥満ではない」傾向があることが分かりました。さらに詳しく分析すると、この関係は「コントロール不能な食べすぎ(制御不能な摂食)」や「感情的な食べすぎ(感情的摂食)」が少ないことを通じて説明できることが明らかになりました。
つまり、グリットと肥満の関連は、グリットが高い人ほど食行動をより適切に保ちやすいことと結びついている、という間接的なメカニズムによる可能性が示唆されました。
この研究は、肥満対策を考える上で「個人の性格そのものに注目する」のではなく、「食行動という具体的な行動に働きかけること」が重要であることを示しています。
科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号JP22H03317; 研究代表者:栗田)を受けた研究の成果(チームプロダクト)です。※本研究は、「食と心の関係」の教育と研究を推進する米国の非営利団体「The Center for Nutritional Psychology(CNP)」のウェブサイトで紹介されました。