業績

Kamitani T, Wada O, Mizuno K, Kurita N.
Clinical Nutrition ESPEN 2026; 74: 103334. doi:10.1016/j.clnesp.2026.103334

膝関節置換術(KA)は、痛みや身体機能を改善する有効な治療法ですが、術後の回復経過には患者ごとに大きな違いがあります。しかし、術後1年間の機能回復にどのような経過パターン(トラジェクトリ)があるのか、また、その違いを術前の筋機能で予測できるかは十分に分かっていませんでした。

本研究では、手術側の骨格筋指数(SMI)、大腿四頭筋力、位相角(Phase angle: PhA)を術前に測定しました。PhAは、生体電気インピーダンス法(BIA)から得られる指標で、近年では「筋質」や細胞の健康状態を反映する指標として注目されています。また、患者立脚型アウトカムであるKnee Society Score(KSS)の機能活動スコアを用いて、術前から術後12か月までのスコアの変化を評価しました。

その結果、患者は「低機能だが大きく改善する群」など、4つの回復パターンに分類されました。特に、術前のPhAが高い患者ほど、術後に良好な機能回復を示すグループに属する可能性が高いことが分かりました。一方で、骨格筋量(SMI)との関連は限定的でした。

これらの結果から、筋量だけでなく、筋質を反映するPhAを術前に評価することで、術後の回復が不良となるリスクの高い患者を予測できる可能性が示唆されました。

Endo Y, Tominaga R, Kurita N#, Fujita N, Wakita T, Kobayakawa M, Matsumoto Y, Ohtori S, Konno Si, Nikaido T, and Clinical Research Committee of the Japanese Society of Lumbar Spine Disorders. (#corresponding author)
The Spine Journal 2026; doi:10.1016/j.spinee.2026.04.024 (in press)

2023年、「日本腰痛学会」では、20–90歳の全国一般住民を対象とした大規模訪問調査「腰痛疫学調査」を実施しました(調査報告書はこちら)。本研究では、この全国調査データを用いて、日本語版オズウェストリー障害指数(ODI version 2.1a:腰痛によって日常生活がどの程度障害されているかを評価する代表的指標)の計量心理学的妥当性を検証するとともに、国民標準値(normative values)の推定を行いました。

解析の結果、ODI version 2.1a は、日本人一般住民において単一の総合スコアとして適切に利用できることが確認されました。さらに、腰痛有訴者におけるODIの国民標準値は平均20.23(標準偏差16.42)であり、腰痛の持続期間によって国民標準値が異なることが示されました(急性腰痛:12.54、亜急性腰痛:13.54、慢性腰痛:22.74)。

これらの知見は、臨床現場における患者の障害度の評価指標として、ODI version 2.1aをより適切に活用するための基盤になることが期待されます。また、日本人一般住民における基準値を提示したことで、今後の腰痛研究や疫学研究における比較指標としての活用も期待されます

本研究では、福島県立医科大学整形外科学講座の遠藤先生が筆頭著者を担いました。本研究は、二階堂先生、紺野名誉教授らが推進してきた全国腰痛疫学研究プロジェクトの主要テーマの一つとして実施されたものです。指導教員は、調査票の設計、リサーチクエスチョンの定式化、統計解析、論文作成に至るまで、研究全体にわたり中心的に関与しました。

また、ODI version 2.1aの計量心理学的評価については関西大学の脇田貴文教授、全国住民調査データの適正利用については福島県立医科大学医療研究推進センターの小早川雅男教授をはじめ、多くの研究者の支援を受けながら実現した成果でもあります。

Kawabata S, Kurita N, Nikaido T, Tominaga R, Endo Y, Fujita N, Konno Si, Ohtori S, and Clinical Research Committee of the Japanese Society of Lumbar Spine Disorders.
Spine (Phila Pa 1976) 2025; doi:10.1097/BRS.0000000000005576 (in press)

2023年に「日本腰痛学会」では、20〜90歳の全国の一般住民を対象に、訪問調査による大規模な「腰痛の疫学」調査を実施しました(調査報告書はこちら)。本研究では、この調査データを用いて、腰痛と睡眠障害の関係を分析しました。

その結果、慢性腰痛のある人では、睡眠障害を抱えている割合が高いことがわかりました。さらに、睡眠障害の増加は「痛みそのもの」よりも、腰痛によって日常生活がどの程度制限されるか(機能障害の程度)によって説明される可能性が示されました。つまり、痛みによる生活上の困難さが、睡眠の質により強く影響していると考えられます。

本研究は、藤田医科大学 整形外科学講座の先生方が主導されたもので、本学整形外科学講座からは二階堂先生、遠藤先生、そして弊分野から博士研究員の富永先生が参画しました。また、主指導教員は特に研究デザインおよび統計解析プランへコミットメントしました。

Tominaga R*, Ikenoue T*, Ishii R, Kurita N#, Taguri M#. (*co-first authors; #co-last authors)
Bone 2025; 200: 117624. doi:10.1016/j.bone.2025.117624


本報告は、以前我々が発表した研究論文――骨粗鬆症患者において、骨粗鬆症治療薬であるロモソズマブとテリパラチドが骨粗しょう症性骨折(上腕骨近位部骨折、前腕遠位部骨折、大腿骨近位部骨折、胸椎および腰椎の椎体骨折)の発生に及ぼす影響を比較した研究――に対する読者からの投書を受けて実施した、追加解析の結果をまとめたものです。再検討の結果、以下の知見が得られました。

  1. 処方薬の中断や切り替えに伴って生じる可能性のあるバイアスを取り除くための統計処理を行っても、テリパラチドと比較してロモソズマブで骨折発生が少ない傾向は変わりませんでした。

  2. 処方薬開始後90日以内に発生した胸椎・腰椎骨折を評価項目とした解析でも、ロモソズマブ群で骨折発生が少ない傾向が認められました。

  3. さらに、処方薬開始後90日以降の胸椎・腰椎骨折を評価した場合でも同様の傾向が確認され、この傾向は主要評価項目であった「骨粗しょう症性骨折」においても一貫していました。

滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの池之上辰義先生と東京医科大学 医療データサイエンス分野の田栗正隆先生らとの共同成果(チームプロダクト)です。レスポンスレターの主筆は富永亮司先生が務め、主指導教員は研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。

Kawabata S, Kurita N, Nikaido T, Tominaga R, Endo Y, Fujita N, Konno Si, Ohtori S, and Clinical Research Committee of the Japanese Society of Lumbar Spine Disorders.
PLOS ONE 2025; 20: e0328684. doi:10.1371/journal.pone.0328684

2023年に、日本腰痛学会が全国の20〜90歳の成人を対象に、訪問調査による大規模な腰痛の疫学を実施しました(調査報告書はこちら)。本研究ではその調査データをもとに、「生活習慣と腰痛との関係」について分析しました。その結果、現在腰痛のある人は、体重(BMI)が高いこと、喫煙していること、血中脂質の異常(脂質異常症)といった生活習慣と関係があることが分かりました。さらに、腰痛が重い人では、喫煙、運動不足、脂質異常症の傾向が強いことも明らかになりました。また、喫煙は慢性的な腰痛とも関係している可能性があることが示されました。今後は、これらの生活習慣が腰痛の「原因」になっているのか、あるいは「悪化させる要因」なのかを明らかにするため、時間を追って観察する縦断研究が求められます。この論文は、本学の整形外科学講座の二階堂先生・遠藤先生、博士研究員の富永先生とともに参画したもので、藤田医科大学の整形外科学講座の先生方が主導しました。

Tominaga R*, Ikenoue T*, Ishii R, Niihata K, Aita T, Okuda T, Shimizu S, Kurita N#, Taguri M#. (*co-first authors; #co-last authors)
日本人の骨粗鬆症患者へのロモソズマブとテリパラチド使用による骨粗鬆症性骨折に対する有効性の比較:新規ユーザーデザイン
Bone 2025; 198: 117523. doi:10.1016/j.bone.2025.117523


この研究は、骨粗鬆症治療薬であるロモソズマブとテリパラチドが主要な骨粗鬆症性骨折(上腕骨近位部骨折、前腕遠位部骨折、大腿骨近位部骨折、および胸椎と腰椎の椎体骨折)の発生に及ぼす影響について、日本の骨粗鬆症患者を対象に比較したものです。日本の医療レセプトデータ(医療機関が診療報酬を請求する際に作成する記録)を利用し、骨粗鬆症の診断を受けたかもしくは脆弱性骨折を経験し、ロモソズマブまたはテリパラチドを新規に処方された患者約3万5000人を対象に分析しました。1年以内の主要な骨粗鬆症性骨折について、ロモソズマブのハザード比は0.8倍(95%信頼区間: 0.71-0.89)であり、2年以内の主要な骨粗鬆症性骨折について、ロモソズマブのハザード比は0.81倍(95%信頼区間: 0.72-0.90)でした。以上から、ロモソズマブはテリパラチドと比較して1年以内の主要な骨粗鬆症性骨折リスクを有意に減少させる可能性が示唆されました。

滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの池之上辰義先生と東京医科大学 医療データサイエンス分野の田栗正隆先生らとの共同成果(チームプロダクト)です。主筆は、富永亮司先生が務められました。主指導教員は、研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。

栗田宜明
臨床整形外科 医学書院 2024; 10: 1217-1223.

臨床研究で用いられている効果の指標(effect measure)と、効果の大きさの解釈について解説しています。効果の指標は評価項目の変数の種類や、研究デザインの種類によって異なることが伝わるように説明しました。臨床の前線で活躍される整形外科医の先生方に親しんでいただけるよう、整形外科の医学に関係する実例をふんだんに取り入れるようにしました。

Wada O, Kamitani T, Mizuno K, Kurita N.
人工膝関節全置換術において位相角が1年後の大腿四頭筋筋力の変化に及ぼす影響:SPSS-OK研究
The Journal of Arthroplasty 2025; 40: 672-677.e1. doi: 10.1016/j.arth.2024.09.018

SPSS-OKプロジェクトの第10報目となる研究が、整形外科手術分野のトップジャーナルのひとつであり、股関節および膝関節の関節形成術に焦点を当てた学術誌であるThe Journal of Arthroplastyから出版されました。膝関節置換術およそ850名を分析した研究です。バイオインピーダンス測定で得られる位相角(PhA)と手術後1年間にわたる大腿四頭筋の筋力の推移との関係性を調べました。その結果、PhAが高いほど術後早期の筋力の低下が見られる傾向にありましたが、術後1年近くになると筋力の改善が高い傾向にあることがわかりました。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化を支援しました。あんしん病院の理学療法士で院長補佐の和田先生、京都大学の 紙谷司先生との共同研究でもあり、このご縁をいただいたことと、プロジェクトの支援をして頂いている皆様に感謝しております。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[11月28日までは論文がフリーで閲覧できますこちらをクリック]