時間変動性要因/time-updated exposure

Shimizu S*, Niihata K*, Nishiwaki H*, Shibagaki Y, Yamamoto R, Nitta K, Tsukamoto T, Uchida S, Takeda A, Okada H, Narita I, Isaka Y, Kurita N#, and Japan Nephrotic Syndrome Cohort Study group. (*equally contributed; #corresponding author)
特発性ネフローゼ症候群患者におけるレニン-アンジオテンシン系阻害薬の新規処方と初回の完全寛解との関係性:全国コホート研究
Clinical and Experimental Nephrology 2023; 27: 480-489. doi:10.1007/s10157-023-02331-3

ネフローゼ症候群GL作成ワーキンググループから発案されたクリニカル・クェスチョン、膜性腎症などの特発性ネフローゼ症候群の治療中に処方されるレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、はたして完全寛解に有効なのか?を検証しました。尿蛋白・腎機能などのように時々刻々と変化する交絡因子を調整するため、周辺構造モデルで解析しました。副腎皮質ステロイドやその他の免疫抑制剤が約9割の患者に投薬された中、約3分の2の患者でRAS阻害薬が新たに処方されました。特に膜性腎症ではRAS阻害薬の新規処方により、完全寛解が高く発生する可能性が示されました(調整発生率比2.27倍)。清水さやか先生(京都大学)・博士研究員の西脇宏樹先生・新畑覚也先生を中心に解析・論文化が進められました。主指導教員は、当時のワーキンググループリーダーの柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁でリサーチ・クエスチョンの発案に関わり、清水先生・新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援にコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。

栗田宜明
腎疾患における臨床研究の進歩 【臨床研究の最新手法】周辺構造モデル
腎と透析 東京医学社 2022; 93巻3号(9月号): 335-340.

腎透析領域の臨床研究で応用されている周辺構造モデル(marginal structural model)について解説しています。特に、周辺構造モデルを必要とする臨床セッティングとクリニカル・クェスチョンの例、周辺構造モデルで用いられる統計モデルの例、解釈の仕方や注意点について説明を試みました。

Sada KE*, Kurita N*, Noma H*, Matsuki T*, Quasny H, Levy AR, Jones-Leone RA, Gairy K, Yajima N* (*Equally contributed)
MOONLIGHT研究:Belimumabの市販後データと日本ループス全国登録コホート(LUNA)からループス腎炎に対するBelimumabの有効性を検証する研究のプロトコル論文
Lupus Science & Medicine 2022; 9: e000746. doi:10.1136/lupus-2022-000746

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に用いられるベリムマブ(belimumab)が、維持期のループス腎炎の再発予防に有効性があるかどうかを検証する研究(MOONLIGHT研究)のプロトコール論文です。

Honda H, Kimachi M, Kurita N, Joki N, Nangaku M.
日本の血液透析患者では高いMCVの値よりも低いMCVの値が予後と関連する:J-DOPPS研究
Scientific Reports 2020; 10: 15663. doi:10.1038/s41598-020-72765-2

MCV(平均赤血球容積)と予後などの臨床アウトカムとの関係性を検討した研究です。先行研究によると、国外のCKD患者ではMCVの値が高い方が生命予後が悪いとされていました。日本の血液透析患者では、MCVの値が低い方が、死亡および感染症入院の増加につながることが本研究より判明しました。日本の患者への診療のために、海外の観察研究の結果を頼りにするのは良いとは限らないことを示した事例と感じました。本田浩一教授(昭和大学)がクリニカル・クエスチョンを発案され、京都大学の来海先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と支援を重点にコミットさせていただきました。

Kurita N, Hayashino Y, Yamazaki S, Akizawa T, Akiba T, Saito A, Fukuhara S
透析間体重増加と生命予後の関係性を、血清アルブミンとのインターアクションで再考する:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2017; 27: 421-429. doi:10.1053/j.jrn.2017.05.003

血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。


Yokoyama K*, Kurita N*, Fukuma S, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、ミネラル代謝の測定頻度:ガイドライン達成および治療の調節との関係性
Nephrology Dialysis Transplantation 2017; 32: 534–541. doi:10.1093/ndt/gfw020
[ 海外学会の公表記事 ]

血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。



Akizawa T*, Kurita N*, Mizobuchi M, Fukagawa M, Onishi Y, Yamaguchi T, Ellis AR, Fukuma S, Alan Brookhart M, Hasegawa T, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、シナカルセトのPTH依存的な有効性
Scientific Reports 2016; 6: 19612. doi:10.1038/srep19612
[ 紹介記事(日本骨代謝学会) ]

二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者において、シナカルセト処方開始の有効性がintact PTHの重症度の別に異なるかどうかを調べました。その結果、シナカルセト処方開始の有効性は、iPTH が高いほど大きい可能性があることが示されました。この研究はステアリング委員の先生によるご指導、iHopeの大西良浩様の支援、東北大学の山口拓洋先生、大阪大学の新谷歩先生らのご助言など、多くの先生方のご協力で実現しました。