概要
加齢や疾患によって筋肉量が減少し、筋力が低下する「サルコペニア」という症候群が注目されています。サルコペニアを診断するには、筋肉量を評価する必要があります。筋肉量の計測のために、マルチ周波数体組成計やX線骨密度測定装置、CTなどによる筋断面積の使用が推奨されています。しかし、サルコペニアのスクリーニングや臨床疫学研究を行うセッティングでは、これらの検査機器を使用できない場合があります。
海外では、5つの質問で構成されるSARC-Fがサルコペニアのスクリーニングに使用されています。本邦でも、学会が2019年11月よりSARC-F質問票の使用を推奨し始めたのは記憶に新しいところです(出典:日本サルコペニア・フレイル学会)。栗田、紙谷司(京都大学)、脇田貴文(関西大学)らは、翻訳・逆翻訳の正式な手続きを経て、SARC-F日本語版を作成しました。原作者のお1人であるJohn Morley教授(セント・ルイス大学)にも逆翻訳の意味内容をご確認いただき、日本語版の使用許可を得ました(2017年11月30日)。他の研究者もSARC-F日本語版を公表していますが、本ページで紹介するSARC-F日本語版は、日本語訳作成に求められるプロセスを手順通りに実施したものです。したがって、世界に発信する臨床研究を目標とする場合に、安心してご活用・引用して頂けます。ご利用を検討される方は、論文本文とサプリメントに情報が掲載されていますので、ご覧ください。
- 5項目の質問文があります。
- それぞれの質問文に対して、3つの回答文の中から1つを選択してもらいます。
- 選んだ回答文に対して、0点から2点までの得点が付与されます。最高得点は10点になります。
- スクリーニング陽性とされる得点は4点以上と定められています。
※SARC-F日本語版と論文タイトルが、茨城県土浦市ホームページ内「生活不活発病予防のポイント」の中で紹介されました。
『感染症に負けない健康づくり 気付きチェックシート』の一部としてご利用になられました。
※SARC-F+EBM診断法によるサルコペニアのスクリーニングの有用性が、海外の一般住民を対象とした研究で検証されました。その結果、SARC-F+EBM診断法は、ishii scoreや下腿周囲長によるスクリーニング法と比べて、男女ともに高い識別力と感度を示すことが実証されました(Guo Q et al. Sci Rep 2024)。
参考文献・引用文献・Reference記載のお願い
本ページでご紹介するSARC-F日本語版を使った研究を、学会・論文で発表される場合や、書籍で使用される場合は、次の論文を引用して下さい。ご不明な点がありましたらe-mailでご連絡ください。
サルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-F質問票の診断精度を、運動器疾患およそ960人で検証しました。さらに、"EBM"(EldelyとBMI)の追加による診断精度の改善を調べました。感度・特異度は、SARC-F単独では不良でしたが、SARC-F+EBMでは約80%・70%でした。SARC-F単独に比べて、SARC-F+EBMの感度やAUCが優れました。この簡便な"SARC-F+EBM"がスクリーニングに応用できる可能性を示しました。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。加齢や疾患で筋肉量減少 サルコペニアの新診断方法考案. 福島民報. 2019年8月1日 日刊29ページ. また、福島民友に掲載されました。筋力低下に新診断選別法 福島医大 栗田特任教授チーム. 福島民友. 2019年8月11日 日刊4ページ.]
※SARC-F日本語版を主要評価項目(別称、アウトカム・エンドポイント)として活用した臨床研究論文が、The Journal of Nutrition, Health & Aging誌およびGeriatrics & Gerontology International誌から出版されました。
私たちは、成人の慢性腎臓病(CKD)患者において、健康関連ホープ尺度(HR-Hope)/うつとサルコペニアの関係性を長期的に分析しました。その結果、HR-Hopeスコアが低いほど、サルコペニアになる可能性が示されました。さらに、抑うつを抱えることも、独立した要因としてサルコペニアを引き起こす可能性があることがわかりました。この研究は、ヨーロッパ臨床栄養・代謝学会(ESPEN)とヨーロッパ腎臓学会・ヨーロッパ腎栄養グループ(ERN-ERA)によってまとめられた、高齢のCKD患者向けのタンパク質・エネルギー摂取量の指針とするためのレビュー論文(Piccoli GB et al. Clinical Nutrition 2023)に引用されました。
この研究は、科学研究費補助金の助成を受けて実施されたものです(基盤研究(B) 課題番号16H05216, 研究代表者:柴垣有吾, 研究分担者:福原 脇田 栗田; 若手研究 課題番号18K17970)。
東京・奈良・長崎で在宅医療を受ける患者の要介護度と自己報告による生活機能・身体機能との関係性を横断的に分析しました。生活機能は国際生活機能分類(ICF)を反映するWHODAS2.0で、身体機能はサルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-Fで評価しました。要介護度が高くなるほど、自己報告に基づく生活機能や身体機能のレベルが低下することを示しました。
長崎在宅Dr.ネット・医療法人社団鉄祐会・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku Evaluative Initiatives and Outcome Study)の成果(チームプロダクト)です。