第1著者/(co-)first author

本研究では、腎代替療法の選択における共同意思決定(Shared Decision-Making: SDM)の根幹となる「患者が自身の価値観を医療者へ伝えること」に着目し、その抵抗感と背景要因を明らかにしました。全国49施設で実施した調査では、約4分の1の患者が私生活や価値観について医療者に話すことへ抵抗を感じており、この抵抗感が強いほどSDMの質が低いことが示されました。さらに、量的・質的データを統合した収斂型混合研究法により、医療者への信頼や健康を優先したいという思いが価値観の開示を後押しする一方で、療法選択への姿勢、性格的特徴などが、価値観を開示できる患者と開示しにくい患者を分ける重要な要因であることが明らかとなりました。
これらの結果から、真に患者中心の腎代替療法選択を実現するためには、医療者が患者一人ひとりの価値観、感情、性格、療法選択への姿勢の多様性を理解し、信頼関係を築きながら意思決定を支援することが重要であることを示しています。本研究は、科学研究費補助金(JP21K10314、JP19KT0021、JP22K19690)の助成を受けたPREPARES研究(PREference for PAtient REnal replacement therapy and Sharing Study)の成果です。栗田が研究構想、量的・質的データの統合解析、および論文執筆を担当し、質的研究の専門家である宮下先生、西村先生と共同で質的データの分析・解釈を行いました。

透析療法を受ける方、特に高齢の方では、「長く生きること」だけでなく、「自分で生活できること」や「疲れにくく過ごせること」を大切にされる場合があります。
このような価値観が重視されるなかでも、透析期間の長期化がフレイル(虚弱)や寝たきりの進行とどのように関連するのか、またベースライン時の身体機能状態が長期予後にどのような影響を与えるのかについては、十分に明らかになっていませんでした。
そこで本研究では、日本透析医学会レジストリ(JRDR)を用いて、約22万人の維持血液透析を受ける方を8年間追跡し、身体機能の変化を検討しました。
その結果、8年後には59.9%がお亡くなりになり、8.8%がフレイル、2.4%が寝たきりとなっていました。
また、透析歴が長い方ほど、その後のフレイル、寝たきり、死亡のリスクが段階的に高くなる「用量依存的な関連」が認められました。
さらに、ベースラインで寝たきりだった方は、非フレイルの方と比べて死亡リスクが16倍以上高くなっていました。
死因にも特徴がみられ、非フレイルの方では脳血管障害や心筋梗塞による死亡が比較的多かった一方、フレイルや寝たきりの方では、感染症や心不全による死亡が多くみられました。
一方で、ベースラインで非フレイルだった方でも、8年後に「非フレイルのまま生存」していた割合は約40%に留まっていました。
これらの結果は、透析導入後の長期経過を見据えながら、早い段階からご本人の価値観を共有し、「どのように生活したいか」を含めた人生設計や個別化ケアについて対話していく必要性を示唆しています。

本総説は、腎臓医かつ臨床疫学者の視点から、日常診療で生じるクリニカルクエスチョンを、どのように質の高い臨床研究へと発展させるかを解説した論文です。医療の質を「構造・プロセス・アウトカム」で捉える基本モデルをベースにして、バイオマーカー評価のような従来型の研究から、患者報告アウトカム(PROs)、患者の体験や感情、さらには医療者と患者の関係性といった主観的要素までを、臨床疫学の枠組みの中で体系的に整理しています。臨床統計学的手法そのものだけでなく、「何を問い、なぜそれを問うのか」というリサーチ・クエスチョンをデザインする力の重要性を強調している点が特徴であり、患者を中心に据えた腎臓診療を実現するための臨床研究の考え方を、次世代の医療者・研究者に向けて示しています。
腎臓・透析における臨床研究で用いられるPRO (patient reported outcome) とPRE (patient reported experience)に関するコンセプトや使い道、健康関連ホープ尺度について解説しています。

慢性腎臓病の生活の質(QOL)を評価する方法の一つとして、健康関連QOL尺度のSF-36ⓇやKDQOL-SF™の活用法について解説しています。




