福島の研究/fukushima

Katayama K, Kurita N#, Takada T, Miyashita J, Azuma T, Fukuhara S, Takeshima T. (#corresponding author)
嚥下リハビリテーションを受けた誤嚥性肺炎の高齢者における経口摂取開始のタイミングと院内アウトカムの関係性
Clinical Nutrition 2022; 41: 2219-2225.

白河厚生総合病院(福島県白河市)に入院し、摂食・嚥下リハビリテーションを受けた高齢の誤嚥性肺炎患者を対象に、24時間以内の経口摂取開始(早期開始)と院内アウトカムとの関連について分析しました。48時間以降の経口摂取に開始した群と比較して、24時間以内の経口摂取開始によって経口摂取退院の可能性が増えるという十分なエビデンスは得られませんでしたが、24時間以内の経口摂取開始は入院期間の短縮と関連しました。慎重な嚥下機能評価に基づいて早期の経口摂取を決めることで、誤嚥性肺炎の予後を悪化させずに在院日数を短縮できる可能性を示しました。当時、白河総合診療アカデミーのシニアレジデントであった片山皓太先生の臨床研究の成果です。白河総合診療アカデミーの教員の先生方とのチームプロダクトでもあり、リサーチ・クエスチョンの明確化に高田先生・宮下先生・東先生・福原先生で指導され、リサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化に竹島先生・主指導教員がコミットしました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。誤嚥性肺炎患者の経口摂取 1日以内再開で入院日数が短縮. 福島民報. 2022年10月25日 日刊20ページ. また、福島民友に掲載されました。誤嚥性肺炎の患者 入院24時間以内の食事再開 退院まで日数短縮 福島医大研究. 福島民友. 2022年10月25日 日刊20ページ.]

Tominaga R, Kurita N, Kokubun Y, Nikaido T, Sekiguchi M, Otani K, Iwabuchi M, Shirado O, Fukuhara S, Konno S
SRS-Schwab ASD分類の3つの矢状面修飾因子(sagittal modifier)でみた脊椎・骨盤アライメントと腰痛特異的QOLの用量反応関係
European Spine Journal 2021; 30: 3019-3027.

「脊柱の変形がどの程度あると、腰痛に伴う生活の質がどれぐらいインパクトを受けるのか?」これが、成人脊柱変形の診療で重要なクリニカル・クエスチョンとなっています。国際側弯症学会では、脊椎のX線撮影から得られる脊椎・骨盤アラインメントの計測値を、変形の程度の指標としています。
本研究では、矢状面で計測される「骨盤形態角(Pelvic Incidence)と腰椎前弯角(Lumbar Lordosis)の差分(PI-LL)」が10°を超えるほど、腰痛に伴う生活の質が低くなる可能性を示しました。脊柱変形に伴って骨盤で体の重心を保とうとする代償メカニズム(cone of economy)と代償の限界を説明できる知見と考えられます。博士研究員の富永亮司先生が着想し、主指導教員はリサーチ・クエスチョンの明確化・統計解析・論文化でコミットしました。福島県の南会津・只見町の成人を対象に行われた研究で、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野との共同成果です。

Kato K, Otoshi K, Tominaga R, Kaga T, Igari T, Sato R, Kurita N, Konno S
高校野球選手における筋骨格系の痛みと心理的ストレス反応の関連性:横断的研究
The Orthopaedic Journal of Sports Medicine 2021; 9: 23259671211054422.

整形外科学講座の加藤欽志先生が筆頭で解析論文化したリサーチ・クエスチョンが、米国整形外科スポーツ医学会の系列誌に掲載されました。福島県の高校野球選手944名を対象に「体のどこの部位の筋骨格系の痛みが、強い心理的ストレス反応と関係するか?」を分析した調査研究です。特にピッチャーでは、重度の肘痛・腰痛の経験が、強い心理的ストレス反応と関連することがわかりました。博士研究員の富永亮司先生と主指導教員が解析・結果の解釈・論文の準備で参画させて頂きました。

Naganuma T*, Takahashi S*, Takeshima T, Kurita N, Omae K, Yoshioka T, Ohnishi T, Ito F, Fukuma S, Hamaguchi S, Fukuhara S, and the Sukagawa Study Group (*equally contributed).
コホートプロファイル:日本の超高齢集団に基づくコホート(須賀川研究)
International Journal of Epidemiology 2021; 50: 727-727h.
Omae K, Kurita N, Takeshima T, Naganuma T, Takahashi S, Yoshioka T, Onishi T, Ito F, Hamaguchi S, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group.
地域在住の高齢者における転倒の予測因子としての過活動性膀胱の意義
The Journal of Urology 2021; 205: 219-225.
Omae K, Kurita N#, Takahashi S, Fukuma S, Yamamoto Y, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group (Collaborators: Iida H, Niihata K, Tominaga R). (#corresponding author)
AGEs蓄積と過活動膀胱(OAB)の関係性:須賀川研究
Asian Journal of Urology 2021; 8: 189-196.

終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、過活動膀胱である可能性が高いか否かを検証した横断研究です。過活動膀胱は、尿意切迫感(突然にトイレに行きたくなって我慢ができない状況)を中心に、頻尿・夜間頻尿・失禁を伴うものです。膀胱組織における終末糖化産物の関与を示唆する先行研究があったにもかかわらず、健常な後期高齢者においては、過活動膀胱との関連性があるとはいえませんでした。ネガティブスタディーは一般的にアクセプトされにくいですが、臨床研究教育推進部の大前先生が辛抱強く研究を続けて出版されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。全文お読みいただけます[free-fulltext]。

Kojima Y, Yokoya S, Kurita N, Idaka T, Ishikawa T, Tanaka H, Ezawa Y, Ohto H.
福島第一原子力発電所事故後の停留精巣: 因果関係か偶然か?
Fukushima Journal of Medical Science 2019; 65: 76-98.

停留精巣は男児の先天性疾患で多いものです。福島第一原子力発電所事故後の停留精巣について執筆された論文“Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.”に対して、研究デザイン・データ解析手法・考察の妥当性などを多角的に検討しています。ご多忙の小島教授(泌尿器科学講座)が中心となって執筆した長編レビュー論文です。主指導教員はご縁をいただき、先行論文の研究デザインやデータ解析の適切さに対する評価でコミットさせていただきました。全文読めます[free-fulltext]。

Ito F, Tsutsumi Y, Shinohara K, Fukuhara S, Kurita N#. (#corresponding author)
前面衝突事故の時には車の前面形状の違いが外傷重症度の違いに影響する
PLoS ONE 2019; 14: e0223388.

車はエンジンの位置の違いにより、「鼻のある」ボンネット型と、「鼻のない」キャブオーバー型のトラックおよびワゴンに分けられます。正面衝突事故で救急搬送された軽自動車の乗員943名を対象としたコホート研究により、四肢骨盤が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.2倍、ワゴンの場合に3.4倍高くなることが明らかとなりました。また、頭部頸部が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.0倍高くなることもわかりました。大学院生の伊藤 文人先生と一緒に主指導教員が研究を着想し、解析論文化を指導しました。福島県にも還元しうる知見を得ました。太田西ノ内病院の篠原一彰先生、救急医で交通外傷に詳しい堤悠介先生、福原先生のお蔭でもありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております

Omae K, Yamamoto Y, Kurita N, Takeshima T, Naganuma T, Takahashi S, Ohnishi T, Ito F, Yoshioka T, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group
健康な地域在住超高齢者における歩行速度と過活動膀胱:須賀川研究
Neurourology and Urodynamics 2019; 38: 2324-2332.
Iida H*, Kurita N*#, Takahashi S, Sasaki S, Nishiwaki H, Omae K, Yajima N, Fukuma S, Hasegawa T, Fukuhara S. The Sukagawa Study Group (*equally contributed; #corresponding author)
超高齢者の塩分摂取量・体重過多が高い血圧と関係する:須賀川研究
The Journal of Clinical Hypertension 2019; 21: 942-949.

須賀川市の後期高齢者288名(平均年齢80歳)を対象に、一日食塩摂取量(田中式で推定)、体重と血圧上昇との関連を横断的に調査しました。一日食塩摂取量の平均は9.1g/日でした。食塩摂取量と体重の1標準偏差あたりの増加が、収縮期血圧4.1mmHg および5.3mmHg の上昇と関連しました。体重の1標準偏差あたりの増加が、拡張期血圧2.7mmHg の上昇と関連しました。生活習慣の変容により後期高齢者の血圧を管理できる可能性を示しました。大学院研究生の飯田 英和先生が着想し、主指導教員が解析論文化を指導しました。臨床研究イノベーションセンターのOB・現スタッフの努力の賜物で行うことができた研究です。須賀川市にも還元しうる知見を得ました。皆様のお蔭でありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております。[※研究成果が、7月11日の 福島民報 日刊に掲載されました。後期高齢者の高血圧 食塩摂取量と体重 関連. 福島民報. 2019年7月11日 日刊25ページ.]