日本の抗菌薬適正使用政策が、不要な抗菌薬処方の減少と関連し、重症細菌感染症による入院増加を伴わなかったことを報告しました。
本研究では、2016~2019年度の約300万人の被保険者データを用いて、分割時系列デザインにより抗菌薬適正使用政策の影響を評価しました。対象とした政策は、①2017年6月の「抗微生物薬適正使用の手引き」の公表、②2018年4月の「小児抗菌薬適正使用支援加算」の導入です。
その結果、非細菌性急性呼吸器感染症(ARI)に対する外来抗菌薬処方率は、「抗微生物薬適正使用の手引き」公表後に低下しました。また、「小児抗菌薬適正使用支援加算」導入後には、3歳未満で処方率の低下がみられ、政策対象年齢層への影響が示唆されました。
一方で、いずれの政策後も、ARI関連の重症細菌感染症による入院が全体として増加した明確な証拠は認められませんでした。
本研究は、国レベルの抗菌薬適正使用政策が実臨床に与える影響を示した研究として、今後の感染症対策や医療政策を考える上で重要な知見になると考えられます。
本研究は、大阪大学の山本舜悟先生が研究構想、解析、論文化を主導されました。栗田宜明は、研究計画立案、解析方針の検討、結果の解釈、および論文記載の改善に協力しました。

ワクチン普及後の血液透析患者におけるCOVID-19への不安と、多面的なヘルスリテラシーとの関連を調査した多施設共同研究です。研究の結果、透析患者のCOVID-19への不安は、パンデミック初期の一般市民より低いことが示されました。一方で、情報を「読んで理解する力」である機能的ヘルスリテラシーが低い患者ほど不安が強く、逆に、情報を「批判的に吟味する力」である批判的ヘルスリテラシーが高い患者ほど不安が強いことが明らかになりました。これらの結果は、医療従事者が患者のリテラシー特性に応じて、平易で理解しやすい情報提供や、情報の適切な解釈を支援することの重要性を示唆しています。本研究は、将来のパンデミック時における患者支援のあり方を考えるうえで重要な知見を提供するものです。
膝関節置換術(KA)は、痛みや身体機能を改善する有効な治療法ですが、術後の回復経過には患者ごとに大きな違いがあります。しかし、術後1年間の機能回復にどのような経過パターン(トラジェクトリ)があるのか、また、その違いを術前の筋機能で予測できるかは十分に分かっていませんでした。
本研究では、手術側の骨格筋指数(SMI)、大腿四頭筋力、位相角(Phase angle: PhA)を術前に測定しました。PhAは、生体電気インピーダンス法(BIA)から得られる指標で、近年では「筋質」や細胞の健康状態を反映する指標として注目されています。また、患者立脚型アウトカムであるKnee Society Score(KSS)の機能活動スコアを用いて、術前から術後12か月までのスコアの変化を評価しました。
その結果、患者は「低機能だが大きく改善する群」など、4つの回復パターンに分類されました。特に、術前のPhAが高い患者ほど、術後に良好な機能回復を示すグループに属する可能性が高いことが分かりました。一方で、骨格筋量(SMI)との関連は限定的でした。
これらの結果から、筋量だけでなく、筋質を反映するPhAを術前に評価することで、術後の回復が不良となるリスクの高い患者を予測できる可能性が示唆されました。



