腎臓領域の臨床疫学研究について主指導教員が執筆したレビュー論文が出版されました。

Kurita N.
腎臓診療のための臨床疫学:研究の問いの立て方 ― バイオマーカーから患者報告型アウトカム(PRO)まで
Clinical and Experimental Nephrology 2026; doi:10.1007/s10157-026-02822-z (in press)

本総説は、腎臓医かつ臨床疫学者の視点から、日常診療で生じるクリニカルクエスチョンを、どのように質の高い臨床研究へと発展させるかを解説した論文です。医療の質を「構造・プロセス・アウトカム」で捉える基本モデルをベースにして、バイオマーカー評価のような従来型の研究から、患者報告アウトカム(PROs)、患者の体験や感情、さらには医療者と患者の関係性といった主観的要素までを、臨床疫学の枠組みの中で体系的に整理しています。臨床統計学的手法そのものだけでなく、「何を問い、なぜそれを問うのか」というリサーチ・クエスチョンをデザインする力の重要性を強調している点が特徴であり、患者を中心に据えた腎臓診療を実現するための臨床研究の考え方を、次世代の医療者・研究者に向けて示しています

本総説の背景と目的

腎臓診療の現場では、日々さまざまなクリニカルクエスチョンが生まれます。
しかし、それらを質の高い臨床研究へと発展させるための体系的な考え方は、必ずしも明確に共有されてきたとは言えません。

本総説は、腎臓医かつ臨床疫学者の視点から、
「日常診療の疑問を、どのように研究可能な問いへと構造化するか」
を整理し、包括的な腎臓診療(Comprehensive Kidney Care)を実現するための臨床研究のフレームワークを提示することを目的としました。


中核となる考え方:医療の質をどう捉えるか

本稿では、医療の質を評価する基本モデル(構造・プロセス・アウトカム)を基軸に、クリニカル・クエスチョンを整理しています。

  • 構造(Structure):医療提供体制、システム、人的資源

  • プロセス(Process):診療内容、医療者–患者の関係性

  • アウトカム(Outcome):臨床アウトカム、患者報告アウトカム(PROs)

この枠組みを用いながら、バイオマーカー評価に代表される従来型研究から、患者の体験・感情・生活の質(QOL)を扱う研究までの実例を紹介しています。


バイオマーカーからPROsへ、さらにその先へ

本総説では、以下のような幅広い研究テーマを取り上げています。

  • バイオマーカーの臨床的価値をどのように評価するか

  • 患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcomes: PROs)を研究目的に応じてどう選択・活用するか

  • 医療者–患者関係、信頼、ホープといった数値化が難しい要素を、いかに科学的に扱うか

特に、患者中心のケアを支える視点を、臨床疫学の言葉で整理している点が、本総説の特徴です。


本稿が目指すもの

研究手法が高度化・多様化する現代において、ますます重要になるのは統計技術だけではなく、

  • どこに着目するのか

  • 何をアウトカムと考えるのか

  • その問いは、患者にとってどのような意味を持つのか

を明確にする力です。

本総説は、医師、看護師、その他の医療専門職、そして若手研究者が、患者中心の腎臓ケアを実現するための臨床研究を構想する際のアイデアのガイドとなることを目指しています。

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