分割時系列解析/ITSA

Sato Y, Omae K, Ogawa S, Kirihana Y, Yaginuma K, Hasegawa A, Natsuya H, Hakozaki Y, Endo Y, Meguro S, Tanji R, Takinami-Honda R, Matsuoka K, Koguchi T, Hata J, Idaka T, Ishikawa T, Shimizu H, Tanaka H, Shimura H, Mochizuki T, Oyachi N, Mitsui T, Yokoya S, Ohto H, Kurita N, Kojima Y.
福島第一原発事故は停留精巣の発生率を増加させなかった:分割時系列解析による検討
International Journal of Epidemiology 2026; 55: dyag114. doi:10.1093/ije/dyag114

本研究では、福島県および山梨県の医療機関の協力のもと、診療録を用いた包括的なデータ収集を実施し、比較対照を備えた分割時系列デザイン(controlled interrupted time-series)により、福島第一原子力発電所事故前後における停留精巣発生率の変化を検証しました。その結果、原発事故後に停留精巣発生率が増加したことを示す疫学的証拠は認められませんでした

栗田は前任の福島県立医科大学 臨床研究教育推進部において、研究デザイン、解析計画の策定、および統計解析の監修(実解析:大前憲史先生) を担当しました。本研究は、多施設でのデータ収集を主導された福島県立医科大学泌尿器科学講座の先生方、比較地域である山梨県でのデータ収集にご尽力いただいた山梨大学泌尿器科学講座の先生方、さらに放射線医学など多分野の研究者との共同研究として実施されたものです。

長年にわたり本研究を牽引された小島祥敬先生をはじめ、共同研究者の皆様に深く敬意を表します。

Yamamoto S, Goto M, Ikenoue T, Jindai K, Kurita N.
Open Forum Infectious Diseases 2026; 13: ofag312. doi:10.1093/ofid/ofag312

日本の抗菌薬適正使用政策が、不要な抗菌薬処方の減少と関連し、重症細菌感染症による入院増加を伴わなかったことを報告しました。
本研究では、2016~2019年度の約300万人の被保険者データを用いて、分割時系列デザインにより抗菌薬適正使用政策の影響を評価しました。対象とした政策は、①2017年6月の「抗微生物薬適正使用の手引き」の公表、②2018年4月の「小児抗菌薬適正使用支援加算」の導入です。
その結果、非細菌性急性呼吸器感染症(ARI)に対する外来抗菌薬処方率は、「抗微生物薬適正使用の手引き」公表後に低下しました。また、「小児抗菌薬適正使用支援加算」導入後には、3歳未満で処方率の低下がみられ、政策対象年齢層への影響が示唆されました。
一方で、いずれの政策後も、ARI関連の重症細菌感染症による入院が全体として増加した明確な証拠は認められませんでした。
本研究は、国レベルの抗菌薬適正使用政策が実臨床に与える影響を示した研究として、今後の感染症対策や医療政策を考える上で重要な知見になると考えられます。
本研究は、大阪大学の山本舜悟先生が研究構想、解析、論文化を主導されました。栗田宜明は、研究計画立案、解析方針の検討、結果の解釈、および論文記載の改善に協力しました。

栗田宜明
福島リポート(第30回) 東日本大震災・原発事故の臨床疫学 数字の一人歩きにご注意!
日本医事新報 (株)日本医事新報社 2019; 54-59.

東日本大震災・原発事故の前後で病気が増えた、うつが増えた、…などといった研究が数多く出版されています。しかし、その増加は本当に原発事故のせいなのか?大震災のせいなのか?デザイン面で考える必要があります。この原稿では、分割時系列解析(interrupted time series analysis)を用いた臨床研究の読み方について解説しています。

Kurita N# (#corresponding author)
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故と福島市の出生率の関係性:分割時系列解析
JAMA Network Open 2019; 2: e187455. doi:10.1001/jamanetworkopen.2018.7455
[ 原発事故から2年間の福島市の出生率は低下 3年目以後は震災前からの長期的な少子化トレンドに ]


この研究では、大震災と原発災害が福島市における出生率にどのような影響を与えたのかを調べました。自由に閲覧できる行政の月別データを、臨床疫学的な方法で分析しました。震災後2年の間は、出生率が10%低下したと推定しました。しかし、その後の2017年までの出生率の傾向は、震災前と同じくらいに回復していました(分割時系列解析の結果から分かるように、震災が起こる前と後では、出生率の傾向に大きな変化がなかったのです)。この回復は、福島市の復興の努力が反映されたものであると考えられました。このようなデータサイエンス研究こそが、私たちにとって、災害から立ち上がり、再び希望を持って未来を歩んでいく力を与えてくれると思いませんか?全文読めます[free-fulltext]。また、日経メディカル・福島民報・福島民友で紹介されました。[原発事故から2年間の福島市の出生率は低下 3年目以後は震災前からの長期的な少子化トレンドに]



福島市の出生率低下 震災前と同じ水準に. 福島民友新聞. 2019年3月7日 2ページ