透析/dialysis

Iida H, Fujimoto S, Wakita T, Yanagi M, Suzuki T, Koitabashi K, Yazawa M, Kawarazaki H, Ishibashi Y, Shibagaki Y, Kurita N#. (#corresponding author)
進行期の慢性腎臓病と透析における心理的柔軟性(アクセプタンス)とうつ発生の関係性
Kidney Medicine 2020; 2: 684-691.e681. doi:10.1016/j.xkme.2020.07.004

マインドフルネス領域では、心理学的柔軟性(psychological flexibility)が注目を浴びています。心理学的柔軟性は、病と共に生きる患者が病気の体験をどのように受け入れるか-すなわち受容(acceptance)-を包含する概念といえます。他方で、うつは慢性腎臓病に多く、患者さんにとって重要な健康問題として認識されています。保存期慢性腎臓病と透析の患者において、心理学的柔軟性を測定するAAQ-II(Acceptance and Action Questionnaire-II)が良好であるほど-言い換えると、受容が良好であるほど-、うつの発生が少ないことが明らかにされました。慢性腎臓病患者のうつの予防や治療の手段として、心理学的柔軟性を高めるような行動療法(例えば、acceptance and commitment therapy)が有用である可能性を示唆しました。

Yazawa M, Omae K, Shibagaki Y, Inaba M, Tsuruya K, Kurita N
血液透析患者における透析施設までの交通手段と健康関連QOLとの関係性:J-DOPPS研究
Clinical Kidney Journal 2020; 13: 640-646. doi:10.1093/ckj/sfz110

透析施設へ自力で通院できる血液透析患者では、他者による運転よりも、自分で運転する場合や、自転車や徒歩で通院する場合の方が、将来の健康関連QOLが良好である可能性が示されました(健康が日常生活機能に及ぼすインパクトや、主観的な健康感がより良いということです。身体的コンポーネントサマリースコア、精神的コンポーネントサマリースコアのいずれもです)。聖マリアンナ医科大学の谷澤先生がリサーチ・クエスチョンを発案され、臨床研究教育推進部の大前先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と、論文執筆の支援でコミットさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあってか、ジャーナルの総説記事にもとりあげられました [Editorial記事: Often forgotten, transport modality to dialysis may be life-saving (透析施設への移動手段は忘れられがちだが、命を救うかもしれない)]。小職の地域では遠方から通院する必要がある方が多いため、解釈はもちろん慎重でないといけないと思っております。


Hasegawa J, Kimachi M, Kurita N, Kanda E, Wakai S, Nitta K
血液透析患者のフレイルの別に評価した、n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2020; 30: 535-539. doi:10.1053/j.jrn.2019.12.005

n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性に関してはこれまでたくさんの研究報告がありましたが、フレイルの別に評価した研究はほぼありませんでした。長谷川純平先生がクリニカル・クェスチョンを発案され、京都大学の来海先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と支援を重点にコミットさせていただきました。

Kurita N#, Akizawa T, Fukuhara S. (#corresponding author)
自己報告のエネルギーとして測定した活力と血液透析患者の関連因子、および臨床アウトカム:J-DOPPS研究
American Journal of Kidney Diseases 2019; 73: 486-495. doi:10.1053/j.ajkd.2018.10.001
[ 紹介記事(福島医大HP) ]

バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。

Iida H, Kurita N#, Fujimoto S, Kamijo Y, Ishibashi Y, Fukuma S, Fukuhara S. (#corresponding author)
International Urology and Nephrology 2018; 50: 763-769. doi:10.1007/s11255-018-1789-x

自己管理手帳の記載割合と腹膜透析関連感染症の発生との関連性を調べた臨床研究論文です。現場の疑問を温めていた飯田英和先生と、弊分野・臨床研究イノベーションセンターの共同作業で発信できた成果です。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化の指導に参画しました。

Inoue H, Shimizu S, Watanabe K, Kamiyama Y, Shima H, Nakase A, Ishida H, Kurita N, Fukuma S, Fukuhara S, Yamada Y
Nephrology Dialysis Transplantation 2018; 33: 676-683. doi:10.1093/ndt/gfx253

血液透析患者の腹部大動脈レベルにおける血管石灰化の2年間の推移(トラジェクトリー)混合軌跡モデリング(Group-based multi-trajectory modeling)でグループ分けされました。石灰化の急激な増加のグループと、研究開始時点で高度な石灰化があり、ゆっくり増加するグループの両方が、その後の悪い生命予後と関連する結果となっていました。

Kurita N, Hayashino Y, Yamazaki S, Akizawa T, Akiba T, Saito A, Fukuhara S
透析間体重増加と生命予後の関係性を、血清アルブミンとのインターアクションで再考する:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2017; 27: 421-429. doi:10.1053/j.jrn.2017.05.003

血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。


Yokoyama K*, Kurita N*, Fukuma S, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、ミネラル代謝の測定頻度:ガイドライン達成および治療の調節との関係性
Nephrology Dialysis Transplantation 2017; 32: 534–541. doi:10.1093/ndt/gfw020
[ 海外学会の公表記事 ]

血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。



Akizawa T*, Kurita N*, Mizobuchi M, Fukagawa M, Onishi Y, Yamaguchi T, Ellis AR, Fukuma S, Alan Brookhart M, Hasegawa T, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、シナカルセトのPTH依存的な有効性
Scientific Reports 2016; 6: 19612. doi:10.1038/srep19612
[ 紹介記事(日本骨代謝学会) ]

二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者において、シナカルセト処方開始の有効性がintact PTHの重症度の別に異なるかどうかを調べました。その結果、シナカルセト処方開始の有効性は、iPTH が高いほど大きい可能性があることが示されました。この研究はステアリング委員の先生によるご指導、iHopeの大西良浩様の支援、東北大学の山口拓洋先生、大阪大学の新谷歩先生らのご助言など、多くの先生方のご協力で実現しました。