業績
本研究では、福島県および山梨県の医療機関の協力のもと、診療録を用いた包括的なデータ収集を実施し、比較対照を備えた分割時系列デザイン(controlled interrupted time-series)により、福島第一原子力発電所事故前後における停留精巣発生率の変化を検証しました。その結果、原発事故後に停留精巣発生率が増加したことを示す疫学的証拠は認められませんでした。
栗田は前任の福島県立医科大学 臨床研究教育推進部において、研究デザイン、解析計画の策定、および統計解析の監修(実解析:大前憲史先生) を担当しました。本研究は、多施設でのデータ収集を主導された福島県立医科大学泌尿器科学講座の先生方、比較地域である山梨県でのデータ収集にご尽力いただいた山梨大学泌尿器科学講座の先生方、さらに放射線医学など多分野の研究者との共同研究として実施された、環境省 放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業) の成果によるものです。
長年にわたり本研究を牽引された小島祥敬先生をはじめ、共同研究者の皆様に深く敬意を表します。
2023年、「日本腰痛学会」では、20–90歳の全国一般住民を対象とした大規模訪問調査「腰痛疫学調査」を実施しました(調査報告書はこちら)。本研究では、この全国調査データを用いて、日本語版オズウェストリー障害指数(ODI version 2.1a:腰痛によって日常生活がどの程度障害されているかを評価する代表的指標)の計量心理学的妥当性を検証するとともに、国民標準値(normative values)の推定を行いました。
解析の結果、ODI version 2.1a は、日本人一般住民において単一の総合スコアとして適切に利用できることが確認されました。さらに、腰痛有訴者におけるODIの国民標準値は平均20.23(標準偏差16.42)であり、腰痛の持続期間によって国民標準値が異なることが示されました(急性腰痛:12.54、亜急性腰痛:13.54、慢性腰痛:22.74)。
これらの知見は、臨床現場における患者の障害度の評価指標として、ODI version 2.1aをより適切に活用するための基盤になることが期待されます。また、日本人一般住民における基準値を提示したことで、今後の腰痛研究や疫学研究における比較指標としての活用も期待されます。
本研究では、福島県立医科大学整形外科学講座の遠藤先生が筆頭著者を担いました。本研究は、二階堂先生、紺野名誉教授らが推進してきた全国腰痛疫学研究プロジェクトの主要テーマの一つとして実施されたものです。指導教員は、調査票の設計、リサーチクエスチョンの定式化、統計解析、論文作成に至るまで、研究全体にわたり中心的に関与しました。
また、ODI version 2.1aの計量心理学的評価については関西大学の脇田貴文教授、全国住民調査データの適正利用については福島県立医科大学医療研究推進センターの小早川雅男教授をはじめ、多くの研究者の支援を受けながら実現した成果でもあります。
2023年に「日本腰痛学会」では、20〜90歳の全国の一般住民を対象に、訪問調査による大規模な「腰痛の疫学」調査を実施しました(調査報告書はこちら)。本研究では、この調査データを用いて、腰痛と睡眠障害の関係を分析しました。
その結果、慢性腰痛のある人では、睡眠障害を抱えている割合が高いことがわかりました。さらに、睡眠障害の増加は「痛みそのもの」よりも、腰痛によって日常生活がどの程度制限されるか(機能障害の程度)によって説明される可能性が示されました。つまり、痛みによる生活上の困難さが、睡眠の質により強く影響していると考えられます。
本研究は、藤田医科大学 整形外科学講座の先生方が主導されたもので、本学整形外科学講座からは二階堂先生、遠藤先生、そして弊分野から博士研究員の富永先生が参画しました。また、主指導教員は特に研究デザインおよび統計解析プランへコミットメントしました。



