業績

Kojima Y, Yokoya S, Kurita N, Idaka T, Ishikawa T, Tanaka H, Ezawa Y, Ohto H.
福島第一原子力発電所事故後の停留精巣: 因果関係か偶然か?
Fukushima Journal of Medical Science 2019; 65: 76-98. doi:10.5387/fms.2019-22

停留精巣は男児の先天性疾患で多いものです。福島第一原子力発電所事故後の停留精巣について執筆された論文“Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.”に対して、研究デザイン・データ解析手法・考察の妥当性などを多角的に検討しています。ご多忙の小島教授(泌尿器科学講座)が中心となって執筆した長編レビュー論文です。主指導教員はご縁をいただき、先行論文の研究デザインやデータ解析の適切さに対する評価でコミットさせていただきました。全文読めます[free-fulltext]。

Ito F, Tsutsumi Y, Shinohara K, Fukuhara S, Kurita N#. (#corresponding author)
前面衝突事故の時には車の前面形状の違いが外傷重症度の違いに影響する
PLoS ONE 2019; 14: e0223388. doi:10.1371/journal.pone.0223388

車はエンジンの位置の違いにより、「鼻のある」ボンネット型と、「鼻のない」キャブオーバー型のトラックおよびワゴンに分けられます。正面衝突事故で救急搬送された軽自動車の乗員943名を対象としたコホート研究により、四肢骨盤が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.2倍、ワゴンの場合に3.4倍高くなることが明らかとなりました。また、頭部頸部が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.0倍高くなることもわかりました。大学院生の伊藤 文人先生と一緒に主指導教員が研究を着想し、解析論文化を指導しました。福島県にも還元しうる知見を得ました。太田西ノ内病院の篠原一彰先生、救急医で交通外傷に詳しい堤悠介先生、福原先生のお蔭でもありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております

栗田宜明
福島リポート(第30回) 東日本大震災・原発事故の臨床疫学 数字の一人歩きにご注意!
日本医事新報 (株)日本医事新報社 2019; 54-59.

東日本大震災・原発事故の前後で病気が増えた、うつが増えた、…などといった研究が数多く出版されています。しかし、その増加は本当に原発事故のせいなのか?大震災のせいなのか?デザイン面で考える必要があります。この原稿では、分割時系列解析(interrupted time series analysis)を用いた臨床研究の読み方について解説しています。

Omae K, Yamamoto Y, Kurita N, Takeshima T, Naganuma T, Takahashi S, Ohnishi T, Ito F, Yoshioka T, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group
健康な地域在住超高齢者における歩行速度と過活動膀胱:須賀川研究
Neurourology and Urodynamics 2019; 38: 2324-2332. doi:10.1002/nau.24148
Iida H*, Kurita N*#, Takahashi S, Sasaki S, Nishiwaki H, Omae K, Yajima N, Fukuma S, Hasegawa T, Fukuhara S. The Sukagawa Study Group (*equally contributed; #corresponding author)
超高齢者の塩分摂取量・体重過多が高い血圧と関係する:須賀川研究
The Journal of Clinical Hypertension 2019; 21: 942-949. doi:10.1111/jch.13593

須賀川市の後期高齢者288名(平均年齢80歳)を対象に、一日食塩摂取量(田中式で推定)、体重と血圧上昇との関連を横断的に調査しました。一日食塩摂取量の平均は9.1g/日でした。食塩摂取量と体重の1標準偏差あたりの増加が、収縮期血圧4.1mmHg および5.3mmHg の上昇と関連しました。体重の1標準偏差あたりの増加が、拡張期血圧2.7mmHg の上昇と関連しました。生活習慣の変容により後期高齢者の血圧を管理できる可能性を示しました。大学院研究生の飯田 英和先生が着想し、主指導教員が解析論文化を指導しました。臨床研究イノベーションセンターのOB・現スタッフの努力の賜物で行うことができた研究です。須賀川市にも還元しうる知見を得ました。皆様のお蔭でありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております。[※研究成果が、7月11日の 福島民報 日刊に掲載されました。後期高齢者の高血圧 食塩摂取量と体重 関連. 福島民報. 2019年7月11日 日刊25ページ.]

Niihata K*, Takahashi S*, Kurita N#, Yajima N, Omae K, Fukuma S, Okano T, Nomoto Y, Omori K, Fukuhara S. (*Equally contributed; Collaborators: Iida H, Tominaga R; #corresponding author)
高齢地域住民における終末糖化産物(AGEs)の蓄積と難聴の関係性:須賀川研究
Journal of the American Medical Directors Association 2018; 19: 235-239.e1. doi:10.1016/j.jamda.2017.09.008

終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、聴力障害である可能性が高いことを示した横断研究です。新畑先生と高橋先生がリサーチ・クエスチョンを考案し、主筆されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。

Kurita N, Horie S, Yamazaki S, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S
男性ホルモンの低い値が低い腎機能と関係する:LOHAS研究
Journal of the American Medical Directors Association 2016; 17: 371.e1-.e6. doi:10.1016/j.jamda.2016.01.011
[ テストステロンで男らしさと健やかさを保て! ]

福島の高齢化地域に在住の成人男性848名を対象にした横断調査です。唾液テストステロン濃度が低いほど、推算糸球体濾過量(eGFR)が低いことを示しました。この関係性は、年齢などの背景因子で補正した上での結果でした。60歳以上の高齢者に限定して分析した場合も同じ結果でした。この研究により、腎機能は男性ホルモンの低下によって減少する可能性が示唆された。今後、縦断的な検証が必要であると考えております。この研究成果は、順天堂大学の 堀江 重郎 教授、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野のご縁で実現したものです。堀江先生より、メディカルトリビューでご紹介いただきました。[テストステロンで男らしさと健やかさを保て!]

Kurita N, Horie S, Yamazaki S, Otoshi K, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S.
高齢男性での、男性ホルモンの低値・うつ症状と転倒:横断研究
Journal of the American Medical Directors Association 2014; 15: 30-35. doi:10.1016/j.jamda.2013.11.003
[ 海外学会誌紹介記事 ]

転倒は寝たきりの主な原因であり、発症予測・予防が重要です。本研究では、高齢男性に多く見られるテストステロン減少やうつ状態が脆弱性の一因となることに着目し、転倒との関係性を調べました。その結果、テストステロンが低い状態とうつ状態の両者は、独立に転倒と関係することがわかりました。男性ホルモン欠乏とうつ状態は合併しうるため、転倒の危険性を相乗的に高める可能性が示唆されます。今後は縦断的な評価が必要です。この研究成果は、順天堂大学の 堀江 重郎 教授、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野のご縁で実現したものです。堀江先生より、メディカルトリビューンでご紹介いただきました。[テストステロンで男らしさと健やかさを保て!]

Kurita N, Yamazaki S, Fukumori N, Otoshi K, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Horie S, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S
地域在住の成人では、過活動膀胱の症状の程度は転倒に関連する:LOHAS研究
BMJ open 2013; 3: e002413. doi:10.1136/bmjopen-2012-002413
[ 海外学会誌紹介記事 ]

過活動性膀胱(かかつどうぼうこう)と転倒の関係性を分析した横断研究です。過活動膀胱は、尿意切迫感(突然にトイレに行きたくなって我慢ができない状況)を中心に、頻尿・夜間頻尿・失禁を伴うものです。過活動性膀胱の症状が重症であるほど、転倒との関連が強くなることを明らかにしました。福島県只見町・南会津町の地域住民(40歳以上、平均68歳)が対象となっています。平成20年より実施されているLOHAS研究からの成果で、京都大学医療疫学分野の福原教授、本学整形外科学講座の菊地先生・紺野教授、順天堂大学泌尿器科学講座の堀江教授のご縁で研究をさせていただくことができました。米国泌尿器科学会の医学誌で紹介されました。[海外学会誌紹介記事]