Hasegawa J, Kimachi M, Kurita N, Kanda E, Wakai S, Nitta K
血液透析患者のフレイルの別に評価した、n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2020; 30: 535-539. doi:10.1053/j.jrn.2019.12.005

n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性に関してはこれまでたくさんの研究報告がありましたが、フレイルの別に評価した研究はほぼありませんでした。長谷川純平先生がクリニカル・クェスチョンを発案され、京都大学の来海先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と支援を重点にコミットさせていただきました。

Kojima Y, Yokoya S, Kurita N, Idaka T, Ishikawa T, Tanaka H, Ezawa Y, Ohto H.
福島第一原子力発電所事故後の停留精巣: 因果関係か偶然か?
Fukushima Journal of Medical Science 2019; 65: 76-98. doi:10.5387/fms.2019-22

停留精巣は男児の先天性疾患で多いものです。福島第一原子力発電所事故後の停留精巣について執筆された論文“Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.”に対して、研究デザイン・データ解析手法・考察の妥当性などを多角的に検討しています。ご多忙の小島教授(泌尿器科学講座)が中心となって執筆した長編レビュー論文です。主指導教員はご縁をいただき、先行論文の研究デザインやデータ解析の適切さに対する評価でコミットさせていただきました。全文読めます[free-fulltext]。

Ito F, Tsutsumi Y, Shinohara K, Fukuhara S, Kurita N#. (#corresponding author)
前面衝突事故の時には車の前面形状の違いが外傷重症度の違いに影響する
PLoS ONE 2019; 14: e0223388. doi:10.1371/journal.pone.0223388

車はエンジンの位置の違いにより、「鼻のある」ボンネット型と、「鼻のない」キャブオーバー型のトラックおよびワゴンに分けられます。正面衝突事故で救急搬送された軽自動車の乗員943名を対象としたコホート研究により、四肢骨盤が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.2倍、ワゴンの場合に3.4倍高くなることが明らかとなりました。また、頭部頸部が重症化する可能性は、ボンネット型と比較して、トラックの場合に調整オッズ比で2.0倍高くなることもわかりました。大学院生の伊藤 文人先生と一緒に主指導教員が研究を着想し、解析論文化を指導しました。福島県にも還元しうる知見を得ました。太田西ノ内病院の篠原一彰先生、救急医で交通外傷に詳しい堤悠介先生、福原先生のお蔭でもありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております

Fukuhara S*, Kurita N*#, Wakita T, Green J, Shibagaki Y. (*co-first authors; #corresponding author)
健康関連ホープ(HR-Hope)を測定する尺度:開発と計量心理学的検証
Annals of Clinical Epidemiology 2019; 1: 102-119. doi:10.37737/ace.1.3_102

私たちは、健康に関わる「ホープ」(希望)という概念を測定することを目的に、18項目からなる「健康関連ホープ尺度(HR-Hope)」を開発し、計量心理学的に検証しました。この尺度は、「健康と病/Health & illness」、「役割と社会的なつながり/Role & social connectedness」、「生きがい/Something to live for」という3つの領域から構成されています。私たちの研究では、この尺度が高い信頼性係数を示し、一般的に使われている希望尺度よりも優れた基準関連妥当性があることがわかりました。これにより、治療が困難な疾患を抱える患者さんや超高齢者を対象にした研究において、有用なアウトカム指標として活用されることが期待されます。さらに、この尺度は、健康行動を決定する上での心理的な要因の1つとしても活用されることが期待されます。科学研究費補助金を受けて、この研究を実施しました(基盤研究(B) 課題番号16H05216; 研究代表者:柴垣有吾; 研究分担者:福原 脇田 栗田)。全文読めます[free-fulltext]。

Kurita N#, Wakita T, Kamitani T, Wada O, Mizuno K. (#corresponding author)
運動器疾患でのサルコペニア拾い上げを目的としたSARC-F質問票の診断精度の検証と、SARC-F+EBM診断法の開発
The Journal of Nutrition, Health & Aging 2019; 23: 732-738. doi:10.1007/s12603-019-1222-x

サルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-F質問票の診断精度を、運動器疾患およそ960人で検証しました。さらに、"EBM"(EldelyとBMI)の追加による診断精度の改善を調べました。感度・特異度は、SARC-F単独では不良でしたが、SARC-F+EBMでは約80%・70%でした。SARC-F単独に比べて、SARC-F+EBMの感度やAUCが優れました。この簡便な"SARC-F+EBM"がスクリーニングに応用できる可能性を示しました。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。加齢や疾患で筋肉量減少 サルコペニアの新診断方法考案. 福島民報. 2019年8月1日 日刊29ページ. また、福島民友に掲載されました。筋力低下に新診断選別法 福島医大 栗田特任教授チーム. 福島民友. 2019年8月11日 日刊4ページ.]

栗田宜明
福島リポート(第30回) 東日本大震災・原発事故の臨床疫学 数字の一人歩きにご注意!
日本医事新報 (株)日本医事新報社 2019; 54-59.

東日本大震災・原発事故の前後で病気が増えた、うつが増えた、…などといった研究が数多く出版されています。しかし、その増加は本当に原発事故のせいなのか?大震災のせいなのか?デザイン面で考える必要があります。この原稿では、分割時系列解析(interrupted time series analysis)を用いた臨床研究の読み方について解説しています。

Kurita N#, Kamitani T, Wada O, Shintani A, Mizuno K. (#corresponding author)
変形性関節症において、痛みや炎症を伴う状況での筋肉バイオマーカーとサルコペニアの関係性をひも解く:SPSS-OK研究
Journal of Clinical Rheumatology 2021; 27: 56-63. doi:10.1097/RHU.0000000000001156

変形性関節症およそ1400症例を対象にした研究です。クレアチンキナーゼ(CK)の値が低いほど、サルコペニア(筋肉量が減り、筋力が落ちることによる症候群)であることが分かりました。変形性関節症に伴いやすい炎症や痛みは、サルコペニアと関連がありませんでした。アウトカムのサルコペニア基準がアジア版でも、ヨーロッパ版でも、結果は同じでした。今後は、CKなどを含めた臨床情報の組み合わせで診断が可能であるか検討する予定です。

Omae K, Yamamoto Y, Kurita N, Takeshima T, Naganuma T, Takahashi S, Ohnishi T, Ito F, Yoshioka T, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group
健康な地域在住超高齢者における歩行速度と過活動膀胱:須賀川研究
Neurourology and Urodynamics 2019; 38: 2324-2332. doi:10.1002/nau.24148
Niihata K*, Nishiwaki H*, Kurita N#, Okada H, Maruyama S, Narita I, Shibagaki Y, Nakaya I.(*Equally contributed; #corresponding author)
診療方針のばらつきと、ネフローゼ症候群診療ガイドラインからの乖離:腎臓専門医の調査研究
Clinical and Experimental Nephrology 2019; 23: 1288-1297. doi:10.1007/s10157-019-01772-z
[ 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績 ]

ネフローゼ症候群GLワーキンググループで行った調査研究で、主指導教員は柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁で参画させていただきました。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などのネフローゼ症候群に関する診療のばらつきの実態を調べました。また、診療のばらつきを決定する、腎臓専門医の特性、施設の特性などを調べました。本研究では、専門医が担当する症例数が多い場合、ステロイドの投与期間が長いことがわかりました。また、経験年数が長い場合、あるいは大学附属病院の場合、高齢者へのステロイドの減量投与が行われやすいことがわかりました。専門医の回答割合が低かったため、今後はより代表性のあるサンプリングで検証することが望まれます。中屋来哉先生(岩手県立中央病院)を中心に、博士研究員の新畑覚也先生・西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)で調査票を作成されました。主指導教員は、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援でコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。[free-fulltext (全文読めます)]

Iida H*, Kurita N*#, Takahashi S, Sasaki S, Nishiwaki H, Omae K, Yajima N, Fukuma S, Hasegawa T, Fukuhara S. The Sukagawa Study Group (*equally contributed; #corresponding author)
超高齢者の塩分摂取量・体重過多が高い血圧と関係する:須賀川研究
The Journal of Clinical Hypertension 2019; 21: 942-949. doi:10.1111/jch.13593

須賀川市の後期高齢者288名(平均年齢80歳)を対象に、一日食塩摂取量(田中式で推定)、体重と血圧上昇との関連を横断的に調査しました。一日食塩摂取量の平均は9.1g/日でした。食塩摂取量と体重の1標準偏差あたりの増加が、収縮期血圧4.1mmHg および5.3mmHg の上昇と関連しました。体重の1標準偏差あたりの増加が、拡張期血圧2.7mmHg の上昇と関連しました。生活習慣の変容により後期高齢者の血圧を管理できる可能性を示しました。大学院研究生の飯田 英和先生が着想し、主指導教員が解析論文化を指導しました。臨床研究イノベーションセンターのOB・現スタッフの努力の賜物で行うことができた研究です。須賀川市にも還元しうる知見を得ました。皆様のお蔭でありますため、筆頭著者・主指導教員ともにこの機会を頂いたことに大変感謝しております。[※研究成果が、7月11日の 福島民報 日刊に掲載されました。後期高齢者の高血圧 食塩摂取量と体重 関連. 福島民報. 2019年7月11日 日刊25ページ.]