概要

栗田、矢嶋宣幸(昭和大学)、小黒奈緒(昭和大学)、脇田貴文(関西大学)らは、翻訳・逆翻訳の正式な手続きを経て、改良版Trust in Physician Scale日本語版を作成しました(Suzuki R, Yajima N, Oguro N, Wakita T, Kurita N, et al. J Gen Intern Med. 2022)。原作者のお1人であるDavid H. Thom教授(スタンフォード大学医学部)にも逆翻訳の意味内容をご確認いただき、日本語版の使用許可を得ました(2020年4月20日)。本ページで紹介する改良版Trust in Physician Scale日本語版は、主治医(担当医)に対する信頼を、医師の頼もしさ、知識や技術に対する信用、医師と患者の間で交わされる情報の機密性や確からしさの面から測定する11項目のスケールです。専門領域を問わずプライマリ・ケアの現場においても使用に適しています(Thom DH, et al. Med Care. 1999; 37(5): 510-7)。日本語訳作成に求められるプロセスを手順通りに実施し、信頼性・妥当性を検証したものです。したがって、世界に発信する臨床研究を目標とする場合に、安心してご活用・引用して頂けます。ご利用を検討される方は、論文本文サプリメントに情報がありますので、ご覧ください。

  • 11項目の質問文があります。
  • 問1・問5・問7・問11が逆転項目です。
  • それぞれの質問文に対して、5つの回答文の中から1つを選択してもらいます。
  • 選んだ回答文に対して、1点(まったくそう思わない)から5点(とてもそう思う)までの得点が付与されます。最高得点は55点になります。
  • (合計得点-最低得点[11点])÷(最高得点[55点]-最低得点[11点])×100の換算によって、0-100点の得点に変換できます。
  • 内的整合性信頼性は、Cronbachのαで0.91でした。
  • 医師と患者の関係についての類似の概念との相関の程度を調べることで、基準関連妥当性を検証しました。

改良版Trust in Physician Scale日本語版の版権者

Noriaki Kurita, Nobuyuki Yajima, Takafumi Wakita, Nao Oguro, David H. Thom

尺度の利用について

非営利目的のご利用の場合

改良版Trust in Physician Scale日本語版を活用して研究を行い、学会・論文で発表したい場合や、教育目的の書籍で使用される場合は、無償でご利用ください。但し、下記の論文(JGIM 2022)の引用を条件とします。

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N#. (#corresponding author)
誤診経験と現主治医への信頼との関係性
Journal of General Internal Medicine 2022; 37: 1115-1121. doi:10.1007/s11606-021-06950-y

成人の非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の患者を対象に、患者本人及び、患者家族の誤診経験が現主治医への信頼にどの程度影響をおよぼすのかを調べました。主治医に対する信頼は、今回我々が日本語化した11項目の改良版Trust in Physicians Scaleで評価しました。患者および家族の誤診経験は、現主治医に対する信頼の低下と関連していました(平均差 -4.30点、95%CI -8.12点~-0.49点および-3.20点、95%CI -6.34点~-0.05点)。隠れた信頼低下の原因として、患者本人や家族の誤診体験に着目することの重要性が示唆されました。スタンフォード大学医学部のThom教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト (the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報に掲載されました。患者らの誤診体験 別の医師でも信頼低下. 福島民報. 2021年7月7日 日刊2ページ. また、福島民友に掲載されました。主治医の信頼度数値化 福島医大 患者への質問票開発. 福島民友. 2021年7月7日 日刊3ページ. また、デンマーク患者安全学会が発行するニュースレターでも紹介されました。Fagligt Nyt om patientsikkerhed, Dansk Selskab for Patientsikkerhed. 加えて、米国Agency for Healthcare Research and Qualityが発行する患者安全に関するレポートでも引用されました。Patient Experience as a Source for Understanding the Origins, Impact, and Remediation of Diagnostic Errors.]

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N.
Association of patients’ past misdiagnosis experiences with trust in their current physician: the TRUMP2-Net study.
medRxiv. 2021:2021.01.25.21250300. DOI:10.1101/2021.01.25.21250300

営利目的でのご利用の場合

営利目的で改良版Trust in Physician Scale日本語版のご利用をお考えの場合は、お問い合わせください。

改良版Trust in Physician Scale日本語版を活用した臨床研究論文が、Arthritis Care & Research誌から出版されました。また、Arthritis Research & Therapy誌から出版されました。

Yoshimi R, Yajima N, Hidekawa C, Sakurai N, Oguro N, Shidahara K, Hayashi K, Ichikawa T, Kishida D, Miawaki Y, Sada KE, Shimojima Y, Ishikawa Y, Yoshioka Y, Kunishita Y, Kishimoto D, Takase K, Kirino Y, Ohno S, Kurita N*, Nakajima H*. (*co-last authors)
全身性エリテマトーデスの管理における協働意思決定が医師への信頼に及ぼす影響: TRUMP2-SLE前向きコホート研究
Arthritis Care & Research 2024; doi:10.1002/acr.25409 (in press)

日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)の方々を対象に、患者の共同意思決定(SDM)への参加が医師への信頼とどのように関係するかを追跡調査により分析しました。
その結果、共同意思決定の質が高いほど、主治医に対する信頼度が高くなることがわかりました。さらに、医師全般に対する信頼度も高くなることがわかりました。
以上から、SLEの方々がSDMに参加することによって、医師-患者関係や医療全体の信頼が向上する可能性が示唆されました。この研究は、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けた♣️TRUMP2♠️-SLEプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果であり、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生、岡山大学の宮脇先生らとのチームプロダクトであり、リサーチ・クエスチョンの発案・解析・論文化に主指導教員が力を注いだものです。[※研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。難病患者の主治医への信頼度 治療の共同決定で向上 福島医大・栗田氏ら発表. 福島民友. 2024年9月5日 日刊4ページ.]

Katayama Y, Miyawaki Y, Shidahara K, Nawachi S, Asano Y, Katsuyama E, Katsuyama T, Takano-Narazaki M, Matsumoto Y, Oguro N, Yajima N, Ishikawa Y, Sakurai N, Hidekawa C, Yoshimi R, Ohno S, Ichikawa T, Kishida D, Shimojima Y, Sada K, Wada J, Thom DH, Kurita N#. (#last author)
同僚医師の代診の頻度とSLEの患者さんが担当リウマチ医に抱く信頼感の関係性:TRUMP2-SLE研究
Arthritis Research & Therapy 2024; 26: 195. doi:10.1186/s13075-024-03428-0

全身性エリテマトーデス(SLE)患者が担当リウマチ医に抱く信頼度に対して、リウマチ医の代診回数がどのような影響を与えるかを調査しました。過去1年間の代診回数を「なし」「1~3回」「4回以上」の3つに分けて分析した結果、代診回数が1~3回および4回以上のグループでは、担当リウマチ医への信頼度がそれぞれ3.0ポイントおよび4.2ポイント低いことが明らかとなりました。通常の外来診療で、医師の学会研修や病気などで他の医師による代診が避けられないことがあります。この研究結果は、できる限り主治医との継続的な診療を確保しつつ、代診の医師が関わる際に患者の信頼感を維持するための工夫が必要であることを示唆しています。この研究は、科学研究費補助金の助成(挑戦的研究(萌芽) 課題番号22K19690; 研究代表者:栗田, 基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田)を受けた♣️TRUMP2♠️-SLEプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果の一部です。スタンフォード大学医学部のThom教授、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生との共同研究として実施され、岡山大学の片山先生・宮脇先生らが論文化しました。主指導教員は、リサーチ・クエスチョンの発案・解析、および論文化のプロセスにおいて役割を果たしました。