この研究では、大震災と原発災害が福島市における出生率にどのような影響を与えたのかを調べました。自由に閲覧できる行政の月別データを、臨床疫学的な方法で分析しました。震災後2年の間は、出生率が10%低下したと推定しました。しかし、その後の2017年までの出生率の傾向は、震災前と同じくらいに回復していました(分割時系列解析の結果から分かるように、震災が起こる前と後では、出生率の傾向に大きな変化がなかったのです)。この回復は、福島市の復興の努力が反映されたものであると考えられました。このようなデータサイエンス研究こそが、私たちにとって、災害から立ち上がり、再び希望を持って未来を歩んでいく力を与えてくれると思いませんか?全文読めます[free-fulltext]。また、日経メディカル・福島民報・福島民友で紹介されました。[原発事故から2年間の福島市の出生率は低下 3年目以後は震災前からの長期的な少子化トレンドに]


福島市の出生率低下 震災前と同じ水準に. 福島民友新聞. 2019年3月7日 2ページ
第1著者/(co-)first author
バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。

血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。
血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。
大学院教育に関する研究論文です。初期臨床研修の修了後に市中病院で勤務する若手医師を対象に、大学院進学を希望する程度とその関係因子や、志望しない理由などについての実態を調べた研究です。志望しない理由で多かったのは、①活動に興味がない、②自分の給与・労働条件に満足している、③専門医取得に必要な臨床経験がまだ十分でない、④魅力的でないポジションを押し付けられるのは嫌だ、などであり、⑤将来のキャリアパスについて不安があるという回答もありました。
血液透析患者の生命予後は以前に比べて改善している一方で、血液透析導入後に早期にお亡くなりになる患者さんも残念ながらいらっしゃいます。そのような患者を予測することは、透析導入の意思決定を医師・患者間で行う際に有用な情報となる可能性があります。本研究では、保存期腎不全診療を受けていた患者において、血液透析導入1年後の死亡リスクを予測するスコアを開発しました。予測に使う因子は、血液透析導入時の診療情報から入手可能なものです。さらに、予測スコアの内的妥当性も検証しました。今後、外部妥当性の検証が必要です。ご縁を頂き、広島大学・新潟大学・名古屋大学・岡山大学の腎臓・透析医の先生方とともにご一緒することができた研究です。他大学の先生がリサーチ・クエスチョンを考案され、教員が研究計画の立案、解析、論文化にコミットしました。




