2025年

Iida H, Hayashi S, Yasunaka M, Tsugihashi Y, Hirose M, Shirahige Y, Kurita N, and the ZEVIOUS group.
BMJ Open 2025; 15: e089639. doi:10.1136/bmjopen-2024-089639

東京、奈良、長崎の3地域で在宅医療を受ける患者を対象に、患者経験(ひらたく言えば、患者さん本位の医療を受けた経験を評価するスコア)QOL(生活の質)、および健康関連希望(ホープ)との関係性を横断的に分析しました。患者経験はプライマリ・ケアの質を反映するJPCAT-SFで評価しました。QOLはQOL-HCスケール(高得点ほど生活の質が高い)で評価し、ホープは健康関連ホープ尺度(HR-Hope)の総スコアで評価しました。その結果、患者経験が良好であるほど、QOLおよびホープのスコアが有意に高いことが明らかとなりました。患者経験のドメイン別に調べても同様の関係性があることも確認できました。
医療法人社団鉄祐会・長崎在宅Dr.ネット・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku EValuative Initiatives and OUtcome Study)の成果(チームプロダクト)です。主指導教員が、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化でフルコミットしました。

Wada O, Kamitani T, Mizuno K, Kurita N.
人工膝関節全置換術において位相角が1年後の大腿四頭筋筋力の変化に及ぼす影響:SPSS-OK研究
The Journal of Arthroplasty 2025; 40: 672-677.e1. doi: 10.1016/j.arth.2024.09.018

SPSS-OKプロジェクトの第10報目となる研究が、整形外科手術分野のトップジャーナルのひとつであり、股関節および膝関節の関節形成術に焦点を当てた学術誌であるThe Journal of Arthroplastyから出版されました。膝関節置換術およそ850名を分析した研究です。バイオインピーダンス測定で得られる位相角(PhA)と手術後1年間にわたる大腿四頭筋の筋力の推移との関係性を調べました。その結果、PhAが高いほど術後早期の筋力の低下が見られる傾向にありましたが、術後1年近くになると筋力の改善が高い傾向にあることがわかりました。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化を支援しました。あんしん病院の理学療法士で院長補佐の和田先生、京都大学の 紙谷司先生との共同研究でもあり、このご縁をいただいたことと、プロジェクトの支援をして頂いている皆様に感謝しております。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[11月28日までは論文がフリーで閲覧できますこちらをクリック]

Hayashino Y, Okamura S, Kurita N, Tsujii S, Ishii H.
2型糖尿病において総タンパク質摂取量、植物性タンパク質摂取量、動物性タンパク質摂取量と腎アウトカム発症との関係性が腎機能によって異なる
Acta Diabetologica 2025; 62: 375-383. doi:10.1007/s00592-024-02364-4

2型糖尿病の方を対象に、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎機能低下などの複合エンドポイントの発生が多いことを検証したコホート研究が行われました。3109名を対象にしました。腎機能低下は、推算GFR(糸球体濾過量)の40%の低下、推算GFR<15ml/min/1.73m2、腎死、腎代替療法の導入のいずれかで評価されました。この研究の結果、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎エンドポイントの発生が多いことがわかりました。さらにこの関係性は、慢性腎臓病(推算GFR<60ml/min/1.73m2)に該当する患者さんほど強いことが確認されました。主筆は天理よろづ相談所病院の林野先生であり、主指導教員は解析方法やRQの掘り下げでコミットしました。糖尿病の臨床における一般的な疑問に答えることができました。文献はこちらからお読みいただけます。