2025年

Shibagaki Y, Sofue T, Kawarazaki H, Toida T, Suzuki T, Nishiwaki H, Asano K, Terawaki H, Ito T, Oka H, Nagai K, Murakami M, Nagai K, Komukai D, Adachi T, Furukata S, Tsutsui T, Fujisaki K, Sugitani S, Shimizu H, Nishino T, Asada H, Shimizu H, Tsukamoto T, Nakaya I, Yamada Y, Inanaga R, Yamada S, Nakanishi S, Maeda A, Yamamoto M, Hirashio S, Okamoto T, Nakamura T, Miyoshi K, Kado H, Toda S, Shibata S, Nishi K, Yamamoto M, Naganuma T, Zamami R, Furusho M, Miyasato H, Tamura Y, Raita Y, Fukuhara C, Uehara K, Inoue K, Taki Y, Nakano N, Kurita N#. (#last author)
Japanese Patients’ Perceptions of Shared Decision-Making in Renal Replacement Therapy
Kidney International Reports 2025; (in press)
Ichikawa T, Kishida D, Shimojima Y, Yajima N, Oguro N, Yoshimi R, Sakurai N, Hidekawa C, Sada K, Miyawaki Y, Hayashi K, Shidahara K, Ishikawa Y, Sekijima Y, Kurita N#. (#last author)
ソーシャルネットワーキング時代における全身性エリテマトーデス患者の健康情報源に対する信頼度: TRUMP2-SLE研究
The Journal of Rheumatology 2025; doi:10.3899/jrheum.2024-1088 (in press)

全身性エリテマトーデス(SLE)をもつ方々が、どこから健康情報を得ているのか? そして、その情報をどのくらい信頼しているのか? さらに、その“信頼度”に影響を与える背景とは?そんな疑問に迫ったのが、この研究です。最初にアクセスする健康情報源としてはオンライン情報源が最多で、医療機関のWebサイトだけでなく、同じ病をもつ患者さんのブログやSNS(X、Instagramなど)も多くアクセスしていました。しかしながら、SNSを信頼する割合は医師と比べて低いことが判明しました。特に、機能的なヘルスリテラシー(情報を理解し活用する力)が高い人ほど、SNSを信頼せず、医師への信頼が高い傾向がありました。この結果は、患者さんが診察時に持ってくる“情報の出どころ”や“その情報をどれくらい信じているか”が、個々の背景によって異なる可能性を示しています。医療者としては、こうした多様な情報源へのアクセス実態をふまえ、どのように対話し、どのプラットフォームを通じて情報発信するかを考えるヒントになるかもしれません。弊分野の博士研究員でもある、信州大学の市川貴規先生が筆頭の研究論文です。科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けた♣️TRUMP2-SLE♠️プロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果です。

Tominaga R*, Ikenoue T*, Ishii R, Niihata K, Aita T, Okuda T, Shimizu S, Taguri M#, Kurita N#. (*co-first authors; #co-last authors)
日本人の骨粗鬆症患者へのロモソズマブとビスフォスフォネート使用による心臓血管系への安全性の比較:操作変数法を用いた新規ユーザーデザイン
Journal of Bone and Mineral Research 2025; doi:10.1093/jbmr/zjaf010 (in press)

この研究は、骨粗鬆症治療薬であるロモソズマブとビスフォスフォネートが心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の発生に及ぼす影響について、日本の骨粗鬆症患者を対象に比較したものであり、ロモソズマブが心血管疾患リスクを高める可能性が指摘されている中でビスフォスフォネートとの比較を通じてロモソズマブの安全性を評価することを目的としました。日本の医療レセプトデータ(医療機関が診療報酬を請求する際に作成する記録)を利用し、骨粗鬆症の診断を受けたかもしくは脆弱性骨折を経験し、ロモソズマブまたはビスフォスフォネートを新規に処方された患者約6万人弱を対象に分析しました。1年以内の心血管疾患について、ロモソズマブの非調整発生率比は1.08倍(95%信頼区間: 1.00–1.18)であり、さらに操作変数法と呼ばれる治療適応によるバイアスを補正する方法で分析した結果、ロモソズマブのハザード比は1.30倍(95%信頼区間: 0.88–1.90)でした。以上から、ロモソズマブはビスフォスフォネートと比較して1年以内の心血管疾患リスクを有意に増加させる明確なエビデンスがあるとは言えませんでした。この研究は、ロモソズマブの心血管リスクが重大でない可能性を示唆する一方で、統計的パワーが十分でない可能性もあるため、より大規模な疫学研究が望まれます。

滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センターの池之上辰義先生と東京医科大学 医療データサイエンス分野の田栗正隆先生らとの共同成果(チームプロダクト)です。主筆は、富永亮司先生が務められました。主指導教員は、研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。[※研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。福島医大などのグループ 骨粗しょう症新薬 比較研究 従来薬と心血管疾患大差なし. 福島民友. 2025年2月19日 日刊5ページ.]

Tsugihashi Y, Yasunaka M, Hayashi S, Iida H, Shirahige Y, Kurita N, and the ZEVIOUS group.
在宅医療患者における実際の余命と健康関連ホープとの関係性:ZEVIOUSコホート研究
Geriatrics & Gerontology International 2025; 25: 124-126. doi:10.1111/ggi.15029

東京・奈良・長崎で在宅医療を受ける患者さんを対象に、人生の最期の期間を追跡した後に、調査開始時点のQOL、およびホープとの関係性を分析しました。QOLはQOL-HC(高得点ほどQOLが高い)で、ホープは健康関連ホープ尺度のドメインスコア(「健康」、「役割とつながり」、「生きがい」:高得点ほど希望が高い)で評価しました。その結果、最後の期間が短い患者ほど、ホープのすべてのサブドメインが低下していました。この結果は、担当医が予測した期待余命とホープの先行研究で、「役割とつながり」というサブドメインが維持されている結果とは相反するものでした。先行研究の結果は、在宅医が希望や感謝を伝える患者さんを診たときに余命がわずかとみなす傾向があることで説明できるかもしれません。もしかすると本研究結果のように患者のホープが失われつつある状況を過小評価している可能性があります。したがって、患者の"真のホープ"の程度を理解するためには、在宅医が継続的な対話を重ねて、たとえ本音をはっきり言わなくても推測する努力が求められているのかもしれません。
長崎在宅Dr.ネット・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方・医療法人社団鉄祐会とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku Evaluative Initiatives and Outcome Study)の成果(チームプロダクト)です。主筆は、次橋幸男先生がが務められました。主指導教員は、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化支援でフルコミットしました。

Iida H, Hayashi S, Yasunaka M, Tsugihashi Y, Hirose M, Shirahige Y, Kurita N, and the ZEVIOUS group.
BMJ Open 2025; 15: e089639. doi:10.1136/bmjopen-2024-089639

東京、奈良、長崎の3地域で在宅医療を受ける患者を対象に、患者経験(ひらたく言えば、患者さん本位の医療を受けた経験を評価するスコア)QOL(生活の質)、および健康関連希望(ホープ)との関係性を横断的に分析しました。患者経験はプライマリ・ケアの質を反映するJPCAT-SFで評価しました。QOLはQOL-HCスケール(高得点ほど生活の質が高い)で評価し、ホープは健康関連ホープ尺度(HR-Hope)の総スコアで評価しました。その結果、患者経験が良好であるほど、QOLおよびホープのスコアが有意に高いことが明らかとなりました。患者経験のドメイン別に調べても同様の関係性があることも確認できました。
医療法人社団鉄祐会・長崎在宅Dr.ネット・天理よろづ相談所白川分院と奈良県内でご活躍の先生方とチームで行う、ZEVIOUS研究(Zaitaku EValuative Initiatives and OUtcome Study)の成果(チームプロダクト)です。主指導教員が、ロジスティクスを含めた研究計画の立案・解析・論文化でフルコミットしました。

Wada O, Kamitani T, Mizuno K, Kurita N.
人工膝関節全置換術において位相角が1年後の大腿四頭筋筋力の変化に及ぼす影響:SPSS-OK研究
The Journal of Arthroplasty 2025; 40: 672-677.e1. doi: 10.1016/j.arth.2024.09.018

SPSS-OKプロジェクトの第10報目となる研究が、整形外科手術分野のトップジャーナルのひとつであり、股関節および膝関節の関節形成術に焦点を当てた学術誌であるThe Journal of Arthroplastyから出版されました。膝関節置換術およそ850名を分析した研究です。バイオインピーダンス測定で得られる位相角(PhA)と手術後1年間にわたる大腿四頭筋の筋力の推移との関係性を調べました。その結果、PhAが高いほど術後早期の筋力の低下が見られる傾向にありましたが、術後1年近くになると筋力の改善が高い傾向にあることがわかりました。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化を支援しました。あんしん病院の理学療法士で院長補佐の和田先生、京都大学の 紙谷司先生との共同研究でもあり、このご縁をいただいたことと、プロジェクトの支援をして頂いている皆様に感謝しております。科学研究費補助金の助成を受けて実施した研究です。[11月28日までは論文がフリーで閲覧できますこちらをクリック]

Hayashino Y, Okamura S, Kurita N, Tsujii S, Ishii H.
2型糖尿病において総タンパク質摂取量、植物性タンパク質摂取量、動物性タンパク質摂取量と腎アウトカム発症との関係性が腎機能によって異なる
Acta Diabetologica 2025; 62: 375-383. doi:10.1007/s00592-024-02364-4

2型糖尿病の方を対象に、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎機能低下などの複合エンドポイントの発生が多いことを検証したコホート研究が行われました。3109名を対象にしました。腎機能低下は、推算GFR(糸球体濾過量)の40%の低下、推算GFR<15ml/min/1.73m2、腎死、腎代替療法の導入のいずれかで評価されました。この研究の結果、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎エンドポイントの発生が多いことがわかりました。さらにこの関係性は、慢性腎臓病(推算GFR<60ml/min/1.73m2)に該当する患者さんほど強いことが確認されました。主筆は天理よろづ相談所病院の林野先生であり、主指導教員は解析方法やRQの掘り下げでコミットしました。糖尿病の臨床における一般的な疑問に答えることができました。文献はこちらからお読みいただけます。