腎臓・透析における臨床研究で用いられるPRO (patient reported outcome) とPRE (patient reported experience)に関するコンセプトや使い道、健康関連ホープ尺度について解説しています。

「人を中心に据えた医療」や「医師への信頼」が透析患者の服薬アドヒアランスに影響することが経験的に知られていますが、それらがどのように服薬アドヒアランスにつながるのかが明らかではありませんでした。日本の6施設に通院する血液透析患者を分析した結果、「人を中心に据えた医療の質」が高いほど服薬の困難度は少なく、その関連は「医師への信頼」の高さを通じて部分的に媒介されていました。特に質が最も高い群では、服薬アドヒアランスへの影響の約3分の1が「医師への信頼」を介したものでした。本研究は、透析患者の服薬アドヒアランス向上のためには、信頼関係の構築やケアの継続性・ケアの連携を含む多面的な「人を中心に据えた医療アプローチ」が重要であることを示しています。科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号JP19KT0021 および 挑戦的研究(萌芽) 課題番号JP22K19690; 研究代表者:栗田; 基盤研究(C) 課題番号23K16271; 研究代表者:戸井田)を受けた研究の成果(チームプロダクト)です。[※論文はこちらよりご覧頂けます。]
抑うつは、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんによくみられる気分の障害です。抑うつの原因の一つとして「睡眠時呼吸障害(いびきや無呼吸など)」が知られていますが、SLE患者でどのくらい多いのか、また抑うつにどのように関係しているかはよくわかっていませんでした。
本研究では、ベルリン質問票という調査票を使って睡眠時呼吸障害のリスクが高い人の割合を調べたところ、15.2%の患者が該当しました。また、中等度から重度のうつ症状がある人は19.1%でした。さらに分析したところ、睡眠時呼吸障害のリスクが高いSLE患者では、そうでない患者に比べて中等度~重度のうつ症状を持つ割合が約2.6倍高いことがわかりました。
睡眠時呼吸障害は治療が可能な疾患であり、抑うつとの関係も深いため、抑うつ症状を持つSLE患者では、積極的に睡眠時呼吸障害の評価を行うことが重要と考えられます。
日本リウマチ学会のModern Rheumatology Young Researcher Excellent Paper Award (MRY Excellent Paper Award)受賞論文に選出されました。
