業績

Niihata K*, Nishiwaki H*, Kurita N#, Okada H, Maruyama S, Narita I, Shibagaki Y, Nakaya I.(*Equally contributed; #corresponding author)
診療方針のばらつきと、ネフローゼ症候群診療ガイドラインからの乖離:腎臓専門医の調査研究
Clinical and Experimental Nephrology 2019; 23: 1288-1297. doi:10.1007/s10157-019-01772-z
[ 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績 ]

ネフローゼ症候群GLワーキンググループで行った調査研究で、主指導教員は柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁で参画させていただきました。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などのネフローゼ症候群に関する診療のばらつきの実態を調べました。また、診療のばらつきを決定する、腎臓専門医の特性、施設の特性などを調べました。本研究では、専門医が担当する症例数が多い場合、ステロイドの投与期間が長いことがわかりました。また、経験年数が長い場合、あるいは大学附属病院の場合、高齢者へのステロイドの減量投与が行われやすいことがわかりました。専門医の回答割合が低かったため、今後はより代表性のあるサンプリングで検証することが望まれます。中屋来哉先生(岩手県立中央病院)を中心に、博士研究員の新畑覚也先生・西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)で調査票を作成されました。主指導教員は、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援でコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。[free-fulltext (全文読めます)]

Kurita N#, Akizawa T, Fukuhara S. (#corresponding author)
自己報告のエネルギーとして測定した活力と血液透析患者の関連因子、および臨床アウトカム:J-DOPPS研究
American Journal of Kidney Diseases 2019; 73: 486-495. doi:10.1053/j.ajkd.2018.10.001
[ 紹介記事(福島医大HP) ]

バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。

Iida H, Kurita N#, Fujimoto S, Kamijo Y, Ishibashi Y, Fukuma S, Fukuhara S. (#corresponding author)
International Urology and Nephrology 2018; 50: 763-769. doi:10.1007/s11255-018-1789-x

自己管理手帳の記載割合と腹膜透析関連感染症の発生との関連性を調べた臨床研究論文です。現場の疑問を温めていた飯田英和先生と、弊分野・臨床研究イノベーションセンターの共同作業で発信できた成果です。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化の指導に参画しました。

Inoue H, Shimizu S, Watanabe K, Kamiyama Y, Shima H, Nakase A, Ishida H, Kurita N, Fukuma S, Fukuhara S, Yamada Y
Nephrology Dialysis Transplantation 2018; 33: 676-683. doi:10.1093/ndt/gfx253

血液透析患者の腹部大動脈レベルにおける血管石灰化の2年間の推移(トラジェクトリー)混合軌跡モデリング(Group-based multi-trajectory modeling)でグループ分けされました。石灰化の急激な増加のグループと、研究開始時点で高度な石灰化があり、ゆっくり増加するグループの両方が、その後の悪い生命予後と関連する結果となっていました。

Kurita N, Hayashino Y, Yamazaki S, Akizawa T, Akiba T, Saito A, Fukuhara S
透析間体重増加と生命予後の関係性を、血清アルブミンとのインターアクションで再考する:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2017; 27: 421-429. doi:10.1053/j.jrn.2017.05.003

血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。


Miyamoto M, Kurita N, Suemitsu K, Murakami M
透析導入前の慢性腎臓病ステージ5における、内シャントと生命予後のアウトカム
American Journal of Nephrology 2017; 45: 356-364. doi:10.1159/000466707
[ Editorial記事 ]

保存期腎不全(CKD)で内シャント(AVF)を作製するタイミングについては、欧米のガイドラインでは早期(CKDステージ4)を推奨しています。しかし、早期の作製をする場合、透析を導入する前にAVFが閉塞したり、お亡くなりになる割合が高い実態が報告されていました。本邦のガイドラインでは、AVFを作製するタイミングについて、CKDステージ5の段階を推奨していることに本研究では着目しました。その結果、CKDステージ5でAVFを作成した後に、透析を始める前にAVFが機能しなくなったり・お亡くなりになる割合は低いことを明らかにしました(1年で約5%)。本邦独自のステージでの作製する診療実態を記述した研究です。教員が計画立案・解析・論文化に参画しました。研究は総説記事に取り上げられました[Editorial記事: When Is the Right Time for Arteriovenous Fistula Placement in Patients with End-Stage Renal Disease? (末期腎不全患者の内シャント造設の適時はいつなのか?)]。また、UpToDateに引用され、「腎不全患者の血管アクセスが必要と思われる時期、とくに推算GFRで5-15ml/min/m2のころに、血管アクセス外科医に患者さんを紹介すべき」というUpToDateの著者によるオピニオンの礎となりました。 [Arteriovenous fistula creation for hemodialysis and its complications]。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。

Yokoyama K*, Kurita N*, Fukuma S, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、ミネラル代謝の測定頻度:ガイドライン達成および治療の調節との関係性
Nephrology Dialysis Transplantation 2017; 32: 534–541. doi:10.1093/ndt/gfw020
[ 海外学会の公表記事 ]

血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。



Akizawa T*, Kurita N*, Mizobuchi M, Fukagawa M, Onishi Y, Yamaguchi T, Ellis AR, Fukuma S, Alan Brookhart M, Hasegawa T, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、シナカルセトのPTH依存的な有効性
Scientific Reports 2016; 6: 19612. doi:10.1038/srep19612
[ 紹介記事(日本骨代謝学会) ]

二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者において、シナカルセト処方開始の有効性がintact PTHの重症度の別に異なるかどうかを調べました。その結果、シナカルセト処方開始の有効性は、iPTH が高いほど大きい可能性があることが示されました。この研究はステアリング委員の先生によるご指導、iHopeの大西良浩様の支援、東北大学の山口拓洋先生、大阪大学の新谷歩先生らのご助言など、多くの先生方のご協力で実現しました。