業績

Honda H, Kimachi M, Kurita N, Joki N, Nangaku M.
日本の血液透析患者では高いMCVの値よりも低いMCVの値が予後と関連する:J-DOPPS研究
Scientific Reports 2020; 10: 15663. doi:10.1038/s41598-020-72765-2

MCV(平均赤血球容積)と予後などの臨床アウトカムとの関係性を検討した研究です。先行研究によると、国外のCKD患者ではMCVの値が高い方が生命予後が悪いとされていました。日本の血液透析患者では、MCVの値が低い方が、死亡および感染症入院の増加につながることが本研究より判明しました。日本の患者への診療のために、海外の観察研究の結果を頼りにするのは良いとは限らないことを示した事例と感じました。本田浩一教授(昭和大学)がクリニカル・クエスチョンを発案され、京都大学の来海先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と支援を重点にコミットさせていただきました。

Iida H, Fujimoto S, Wakita T, Yanagi M, Suzuki T, Koitabashi K, Yazawa M, Kawarazaki H, Ishibashi Y, Shibagaki Y, Kurita N#. (#corresponding author)
進行期の慢性腎臓病と透析における心理的柔軟性(アクセプタンス)とうつ発生の関係性
Kidney Medicine 2020; 2: 684-691.e681. doi:10.1016/j.xkme.2020.07.004

マインドフルネス領域では、心理学的柔軟性(psychological flexibility)が注目を浴びています。心理学的柔軟性は、病と共に生きる患者が病気の体験をどのように受け入れるか-すなわち受容(acceptance)-を包含する概念といえます。他方で、うつは慢性腎臓病に多く、患者さんにとって重要な健康問題として認識されています。保存期慢性腎臓病と透析の患者において、心理学的柔軟性を測定するAAQ-II(Acceptance and Action Questionnaire-II)が良好であるほど-言い換えると、受容が良好であるほど-、うつの発生が少ないことが明らかにされました。慢性腎臓病患者のうつの予防や治療の手段として、心理学的柔軟性を高めるような行動療法(例えば、acceptance and commitment therapy)が有用である可能性を示唆しました。

Yazawa M, Omae K, Shibagaki Y, Inaba M, Tsuruya K, Kurita N
血液透析患者における透析施設までの交通手段と健康関連QOLとの関係性:J-DOPPS研究
Clinical Kidney Journal 2020; 13: 640-646. doi:10.1093/ckj/sfz110

透析施設へ自力で通院できる血液透析患者では、他者による運転よりも、自分で運転する場合や、自転車や徒歩で通院する場合の方が、将来の健康関連QOLが良好である可能性が示されました(健康が日常生活機能に及ぼすインパクトや、主観的な健康感がより良いということです。身体的コンポーネントサマリースコア、精神的コンポーネントサマリースコアのいずれもです)。聖マリアンナ医科大学の谷澤先生がリサーチ・クエスチョンを発案され、臨床研究教育推進部の大前先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と、論文執筆の支援でコミットさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあってか、ジャーナルの総説記事にもとりあげられました [Editorial記事: Often forgotten, transport modality to dialysis may be life-saving (透析施設への移動手段は忘れられがちだが、命を救うかもしれない)]。小職の地域では遠方から通院する必要がある方が多いため、解釈はもちろん慎重でないといけないと思っております。


Hasegawa J, Kimachi M, Kurita N, Kanda E, Wakai S, Nitta K
血液透析患者のフレイルの別に評価した、n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性:J-DOPPS研究
Journal of Renal Nutrition 2020; 30: 535-539. doi:10.1053/j.jrn.2019.12.005

n-PCR(標準化蛋白異化率)と生命予後の関係性に関してはこれまでたくさんの研究報告がありましたが、フレイルの別に評価した研究はほぼありませんでした。長谷川純平先生がクリニカル・クェスチョンを発案され、京都大学の来海先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と支援を重点にコミットさせていただきました。

Fukuhara S*, Kurita N*#, Wakita T, Green J, Shibagaki Y. (*co-first authors; #corresponding author)
健康関連ホープ(HR-Hope)を測定する尺度:開発と計量心理学的検証
Annals of Clinical Epidemiology 2019; 1: 102-119. doi:10.37737/ace.1.3_102

私たちは、健康に関わる「ホープ」(希望)という概念を測定することを目的に、18項目からなる「健康関連ホープ尺度(HR-Hope)」を開発し、計量心理学的に検証しました。この尺度は、「健康と病/Health & illness」、「役割と社会的なつながり/Role & social connectedness」、「生きがい/Something to live for」という3つの領域から構成されています。私たちの研究では、この尺度が高い信頼性係数を示し、一般的に使われている希望尺度よりも優れた基準関連妥当性があることがわかりました。これにより、治療が困難な疾患を抱える患者さんや超高齢者を対象にした研究において、有用なアウトカム指標として活用されることが期待されます。さらに、この尺度は、健康行動を決定する上での心理的な要因の1つとしても活用されることが期待されます。科学研究費補助金を受けて、この研究を実施しました(基盤研究(B) 課題番号16H05216; 研究代表者:柴垣有吾; 研究分担者:福原 脇田 栗田)。全文読めます[free-fulltext]。

Niihata K*, Nishiwaki H*, Kurita N#, Okada H, Maruyama S, Narita I, Shibagaki Y, Nakaya I.(*Equally contributed; #corresponding author)
診療方針のばらつきと、ネフローゼ症候群診療ガイドラインからの乖離:腎臓専門医の調査研究
Clinical and Experimental Nephrology 2019; 23: 1288-1297. doi:10.1007/s10157-019-01772-z
[ 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績 ]

ネフローゼ症候群GLワーキンググループで行った調査研究で、主指導教員は柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁で参画させていただきました。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などのネフローゼ症候群に関する診療のばらつきの実態を調べました。また、診療のばらつきを決定する、腎臓専門医の特性、施設の特性などを調べました。本研究では、専門医が担当する症例数が多い場合、ステロイドの投与期間が長いことがわかりました。また、経験年数が長い場合、あるいは大学附属病院の場合、高齢者へのステロイドの減量投与が行われやすいことがわかりました。専門医の回答割合が低かったため、今後はより代表性のあるサンプリングで検証することが望まれます。中屋来哉先生(岩手県立中央病院)を中心に、博士研究員の新畑覚也先生・西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)で調査票を作成されました。主指導教員は、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援でコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。[free-fulltext (全文読めます)]

Kurita N#, Akizawa T, Fukuhara S. (#corresponding author)
自己報告のエネルギーとして測定した活力と血液透析患者の関連因子、および臨床アウトカム:J-DOPPS研究
American Journal of Kidney Diseases 2019; 73: 486-495. doi:10.1053/j.ajkd.2018.10.001
[ 紹介記事(福島医大HP) ]

バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。