業績

Kunisho Y, Sofue T, Kurita N, Kawarazaki H, Toida T, Inoue K, Kado H, Toda S, Nishiwaki H, Sugitani S, Nakaya I, Yamada Y, Yamamoto M, Shibata S, Maeda A, Oka H, Nishino T, Suzuki T, Komukai D, Furusho M, Inanaga R, Nishi K, Taki Y, Shimizu H, Yamada S, Asano K, Miyasato H, Murakami M, Tsutsui T, Nakamura T, Adachi T, Asada H, Uehara K, Tsukamoto T, Zamami R, Raita Y, Miyoshi K-i, Okamoto T, Ito T, Terawaki H, Fukuhara C, Yamamoto M, Naganuma T, Nagai K, Nagai K, Fujisaki K, Tamura Y, Shimizu H, Hirashio S, Nakanishi S, Furukata S, Nakano N, Shibagaki Y, on behalf of the PREPARES Study Group.
腎代替療法の選択における家族参加と協働意思決定(SDM)の質
Scientific Reports 2026; doi:10.1038/s41598-026-71177-y (in press)

腎代替療法(RRT)の選択における家族の関与と協働意思決定[Shared Decision Making(SDM)]の質との関連を、日本全国49施設・475人のステージ5の慢性腎臓病患者を対象に検討しました。その結果、医師のみが意思決定する場合と比べて、患者と医師がともに意思決定に関わる場合、また患者・医師・キーパーソンの三者が関わる場合にSDMの質が有意に高く、特に患者・医師・キーパーソンの三者が関わる場合にスコア差が最も大きくなりました。また、家族がいる患者を対象とした「役割別」分析では、患者が意思決定に関与しない場合と比較して、患者が医師またはキーパーソンからの助言を踏まえて意思決定する場合や、患者が医師またはキーパーソンと協働で意思決定する場合に、SDMの質が有意に高いことが示されました。本研究は、RRT選択における家族の関与は、患者自身の意思決定への参加を伴う場合に、より質の高いSDMと関連することを示唆するものです。

本研究は、科学研究費補助金(JP21K10314)の助成を受けたPREPARES研究PREference for PAtient REnal replacement therapy and Sharing Study)の成果です。香川大学の國正靖先生が筆頭著者を務め、祖父江先生の指導のもと実施しました。栗田は、研究構想、統計解析、論文の方法・結果の執筆を担当しました。

Takami R, Nishiwaki H, Tsujimoto Y, Oe Y, Onishi K, Oba Y, Sugihara S, Miyaoka Y, Yoshida M, Yazawa M, Sofue T, Nakaya I, Ishimoto T, Kawaguchi T, Kurita N, Shimizu S, Furuichi K, Okada H, Wada T.
Clinical and Experimental Nephrology 2026; doi:10.1007/s10157-026-02944-4 (in press)
栗田宜明.
臨牀透析2026年8月 2026; 8: 831–836.

透析患者において健康関連 QOL(HRQOL)は重要な患者アウトカムであり,疲労や生活への参加が重視されています.本稿では,透析患者の QOL評価法として,包括的尺度である SF-36®v2 と腎疾患特異的尺度であるKDQOL-SFTM を概説し,その特徴と活用上の留意点を整理しました.さらに,J-DOPPS 研究等の知見をもとに,栄養状態や身体機能が QOL と関連することを紹介しました.また,健康関連ホープ(HR-Hope)が食事・水分制限に伴う苦痛の軽減や身体機能の維持と関連する可能性について概説しました.QOL 評価は,患者が望む生活への参加を支援する患者中心の透析医療の実践に重要です.

 

Kurita N*, Miyashita J*, Nishimura M*, Kawarazaki H, Sofue T, Toida T, Inoue K, Kado H, Toda S, Nishiwaki H, Sugitani S, Nakaya I, Yamada Y, Yamamoto M, Shibata S, Maeda A, Oka H, Nishino T, Suzuki T, Komukai D, Furusho M, Inanaga R, Nishi K, Taki Y, Shimizu H, Yamada S, Asano K, Miyasato H, Murakami M, Tsutsui T, Nakamura T, Adachi T, Asada H, Uehara K, Tsukamoto T, Zamami R, Raita Y, Miyoshi K, Okamoto T, Ito T, Terawaki H, Fukuhara C, Yamamoto M, Naganuma T, Nagai K, Nagai K, Fujisaki K, Tamura Y, Shimizu H, Hirashio S, Nakanishi S, Furukata S, Nakano N, Shibagaki Y. (*co-first authors)
Journal of Nephrology 2026; 39: 1031–1041. doi:10.1093/joneph/aajag079


本研究では、腎代替療法の選択における共同意思決定(Shared Decision-Making: SDM)の根幹となる「患者が自身の価値観を医療者へ伝えること」に着目し、その抵抗感と背景要因を明らかにしました。全国49施設で実施した調査では、約4分の1の患者が私生活や価値観について医療者に話すことへ抵抗を感じており、この抵抗感が強いほどSDMの質が低いことが示されました。さらに、量的・質的データを統合した収斂型混合研究法により、医療者への信頼や健康を優先したいという思いが価値観の開示を後押しする一方で、療法選択への姿勢、性格的特徴などが、価値観を開示できる患者と開示しにくい患者を分ける重要な要因であることが明らかとなりました。
これらの結果から、真に患者中心の腎代替療法選択を実現するためには、医療者が患者一人ひとりの価値観、感情、性格、療法選択への姿勢の多様性を理解し、信頼関係を築きながら意思決定を支援することが重要であることを示しています。本研究は、科学研究費補助金(JP21K10314、JP19KT0021、JP22K19690)の助成を受けたPREPARES研究PREference for PAtient REnal replacement therapy and Sharing Study)の成果です。栗田が研究構想、量的・質的データの統合解析、および論文執筆を担当し、質的研究の専門家である宮下先生、西村先生と共同で質的データの分析・解釈を行いました。

Haga T, Matsudo T, Itakura R, Yamagami Y, Sonota K, Miyazawa T, Noda S, Wada S, Sakihama H, Hayashi T, Fujiwara N, Ichisaka Y, Okada H, Tsukahara K, Miyaji M, Yaginuma K, Horikawa A, Koizumi T, Takarada S, Omori N, Toma K, Sakai W, Obara T, Kurita N† (†last author); on behalf of the jpCRRT Registry Group.
Pediatric Nephrology 2026; doi:10.1007/s00467-026-07411-6 (in press)

全国17施設が参加する日本初の小児持続的腎代替療法(jpCRRT)レジストリを、筆頭著者の芳賀先生を中心に構築し、小児集中治療領域における主要腎有害事象(Major Adverse Kidney Events: MAKE)の実態と関連因子を明らかにした研究です。
PICU退室時には50%以上の患児でMAKEを認め、腎疾患・感染症、高い循環作動薬使用量、高カリウム血症が短期予後と関連することを示しました。
本レジストリは、小児CRRTの長期予後の解明やエビデンス創出、治療戦略の最適化を推進する全国共同研究基盤として、今後の発展が期待されます。
本研究では、指導教員の栗田が研究デザイン・解析計画の立案、解析の監督、論文構成および編集を担当し、研究全体を支援しました。

Suzuki T, Toida T, Munakata Y, Kanakubo Y, Ukai M, Inanaga R, Toishi T, Aita T, Kawaji A, Matsunami M, Okada T, Kurita N.
Kidney360 2026; 7: 1825-1834. doi:10.34067/KID.0000001243

血液透析を受けている患者さんにとって、将来の病状の変化があった場合の治療方針について、あらかじめ自分の意向を考え、家族や医療者と話し合っておくことは重要です。こうした将来の医療やケアについての話し合いは「アドバンスケアプランニング(Advance Care Planning:ACP)」と呼ばれています。

一方で、ACPに参加するためには、病気や治療について情報を理解するだけでなく、その情報をもとに自分で考え、必要な情報を探したり、医療者と話し合ったりする力も必要です。
私たちは、このようなヘルスリテラシー(健康に関する情報を入手・理解し、判断や行動に活用する力)が、透析患者さんのACPへの参加とどのように関係しているのかを調べました。

日本の6施設で血液透析を受けている成人患者を対象に調査したところ、約半数の患者さんが、家族や医療者と将来の治療やケアについて何らかの話し合いをしていました。一方で、医療者を交えた正式なACPの機会を経験していた患者さんは5%にとどまりました。

興味深いことに、自分で情報を吟味し、考え、判断する「批判的ヘルスリテラシー」が高い患者さんほど、日常的なACPに参加していることが分かりました。一方、ヘルスリテラシー全体が高い患者さんでは、正式なACPへの参加も多いことが示されました。また、将来どのような治療を受けたいのか「まだ決められていない」と答えた患者さんでは、ヘルスリテラシーが低い傾向がみられました。

さらに、ACPについて話し合っていない患者さんに、その理由を尋ねたところ、最も多かったのは「話し合う機会がないから」という回答でした。つまり、ACPが進まない理由は、患者さん自身が関心を持っていないことだけではなく、そもそも患者さんが将来について考え、医療者と話し合うための「きっかけ」が十分に提供されていない可能性があります。

これらの結果から、透析医療における患者中心の意思決定を進めるためには、患者さんのヘルスリテラシーを高める取り組むことと、医療者側からACPについて話し合う機会を体系的に提供することが重要であると考えられます。患者さんが「自分はどうしたいのか」を考え、それを家族や医療者と共有できる環境をつくることが、より患者中心の透析医療につながる可能性があります。

Inanaga R, Toida T, Aita T, Kanakubo Y, Ukai M, Toishi T, Kawaji A, Matsunami M, Okada T, Munakata Y, Suzuki T, Kurita N.
Journal of Nephrology 2026; 39: 353–363. doi:10.1093/joneph/aajag041


日本の透析医療では、特定疾病療養制度などによる医療費助成が整備されている一方で、治療費や生活への経済的影響に伴う苦痛(経済毒性)を抱える患者が少なくありません。本研究では全国6施設の血液透析患者455名を対象に調査を行い、約7割が何らかの経済毒性を経験していました。また、経済毒性が強い患者ほど、服薬の煩雑さ・飲み忘れや服薬行動の困難度が高く、その関連には感情的な負担が仲介している可能性が示されました。

Kawaji A, Inanaga R, Ukai M, Aita T, Kanakubo Y, Toishi T, Matsunami M, Toida T, Munakata Y, Okada T, Suzuki T, Kurita N.
Therapeutic Apheresis and Dialysis 2026; 30: 613–621. doi:10.1002/1744-9987.70156


ワクチン普及後の血液透析患者におけるCOVID-19への不安と、多面的なヘルスリテラシーとの関連を調査した多施設共同研究です。研究の結果、透析患者のCOVID-19への不安は、パンデミック初期の一般市民より低いことが示されました。一方で、情報を「読んで理解する力」である機能的ヘルスリテラシーが低い患者ほど不安が強く、逆に、情報を「批判的に吟味する力」である批判的ヘルスリテラシーが高い患者ほど不安が強いことが明らかになりました。これらの結果は、医療従事者が患者のリテラシー特性に応じて、平易で理解しやすい情報提供や、情報の適切な解釈を支援することの重要性を示唆しています。本研究は、将来のパンデミック時における患者支援のあり方を考えるうえで重要な知見を提供するものです。