業績

Kurita N, Wakita T, Fujimoto S, Yanagi M, Koitabashi K, Yazawa M, Suzuki T, Kawarazaki H, Ishibashi Y, Shibagaki Y.
BMC Nephrology 2024; 25: 362. doi:10.1186/s12882-024-03818-1

成人の慢性腎臓病(CKD)患者において、健康関連ホープ尺度(HR-Hope)と水分制限・食事制限による苦痛との関係を縦断的に分析しました。その結果、HR-Hopeスコアが高い患者ほど、1年後に水分制限や食事制限に対する負担感が有意に軽減されることが示されました。これは、CKDにおける食事療法のアドヒアランスを妨げる心理的苦痛が、患者がどの程度健康に対するホープを持っているかに依存する可能性を示唆しています。本研究は日本学術振興会(JSPS)の科学研究費補助金の助成を受けて実施されました。

Hayashino Y, Okamura S, Kurita N, Tsujii S, Ishii H.
2型糖尿病において総タンパク質摂取量、植物性タンパク質摂取量、動物性タンパク質摂取量と腎アウトカム発症との関係性が腎機能によって異なる
Acta Diabetologica 2024; doi:10.1007/s00592-024-02364-4 (in press)

2型糖尿病の方を対象に、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎機能低下などの複合エンドポイントの発生が多いことを検証したコホート研究が行われました。3109名を対象にしました。腎機能低下は、推算GFR(糸球体濾過量)の40%の低下、推算GFR<15ml/min/1.73m2、腎死、腎代替療法の導入のいずれかで評価されました。この研究の結果、総たんぱく質の摂取量・動物性たんぱく質の摂取量が多いと、腎エンドポイントの発生が多いことがわかりました。さらにこの関係性は、慢性腎臓病(推算GFR<60ml/min/1.73m2)に該当する患者さんほど強いことが確認されました。主筆は天理よろづ相談所病院の林野先生であり、主指導教員は解析方法やRQの掘り下げでコミットしました。糖尿病の臨床における一般的な疑問に答えることができました。文献はこちらからお読みいただけます。

Yamamoto S*, Niihata K*, Toida T*, Abe M, Hanafusa N, Kurita N# (*co-first authors; #last author).
維持透析療法の継続年数とフレイル(虚弱)・寝たきりの関係性:日本における全国規模横断研究
American Journal of Kidney Diseases 2024; 84: 601-612. doi:10.1053/j.ajkd.2024.04.012

日本で透析療法を受けている50歳以上の患者22万7136名を対象に分析した横断研究です。透析療法の期間が長いほど、フレイルの有病率や寝たきりの有病率が高くなることが明らかとなりました。これは様々な共変量で補正しても同様でした。新潟大学の山本卓病院教授が主筆で、博士研究員の新畑先生・戸井田先生が解析論文化にコミットしました。主指導教員の栗田はリサーチ・クエスチョンの発案から解析論文化まで山本教授と進めて参りました。切実なリサーチ・クエスチョンであれば横断研究でも伝統ある雑誌に掲載されるという実例を皆で示し、金字塔を打ち立てることができました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。透析患者の治療期間が長期化するほど…「フレイル」・寝たきり 発症高まる. 福島民報. 2024年6月21日 日刊21ページ. また、研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。透析長期化と寝たきり関連 福島医大栗田氏ら 有病率増加を確認. 福島民友. 2024年6月21日 日刊3ページ. また、研究成果が、読売新聞 オンライン版に掲載されました。透析治療が長くなると寝たきり・フレイルになる頻度高く…九州医療科学大准教授「健康寿命延ばしたい」. 読売新聞. 2024年月30日 オンライン. また、研究成果が、毎日新聞 オンライン版に掲載されました。透析30年以上で寝たきりの割合増 九州医療科学大グループが研究. 毎日新聞. 2024年9月30日 オンライン. ]



栗田宜明
日本透析医会雑誌 2024; 39: 85-92.

この総説は、市中病院からでも国際学会や学術英文論文に臨床研究を発表できるかな?と憂いている医療者の声を耳にしたことを契機に誕生しました。主指導教員がクリニカル・クェスチョンの着想のヒントやフレームワークへの落とし込み方を中心に解説しています。腎臓・透析領域での自験例や臨床疫学研究の先駆者のエッセイや発表を見聞した体験を交えて、疑問を深めていくための実例を示しています。

Koizumi M, Ishimoto T, Shimizu S, Sasaki S, Kurita N*, Wada T*. (*co-last authors)
成人微小変化症候群に対するリツキシマブ療法の日本における診療パターン2021:腎臓専門医を対象としたWebアンケート調査
PLOS ONE 2024; 19: e0299053. doi:10.1371/journal.pone.0299053

エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」の出版に伴い、微小変化型ネフローゼ症候群に対するリツキシマブの使用実態を調査しました。
2021年11月から12月にかけて、380名の腎臓専門医からウェブ調査に回答をいただきました。その結果、微小変化型ネフローゼ症候群に対する使用経験は47.6%でした。
リツキシマブ療法が保険適用にならなかった経験があるとの回答が15.5%ありました。
リツキシマブ療法の適応症例を治療する機会があったとしても、54.4%が投与を差し控えると回答しました。最も多い理由は、保険適用とならないことによる費用負担が約80%を占めました。
東海大学の小泉先生が主筆となり、多くの先生方のご支援を頂きながら進めて達成できた成果です。主指導教員は特に調査の計画と解析、論文化でコミットしました。

Kanakubo Y, Kurita N#, Ukai M, Aita T, Inanaga R, Kawaji A, Toishi T, Matsunami M, Munakata Y, Suzuki T, Okada T. (#corresponding author)
血液透析における人を中心に据えた医療の質とアドバンスケアプランニングへの参加との関連性
BMJ Supportive & Palliative Care 2024; doi:10.1136/spcare-2024-004831 (in press)

Sasaki S, Shimizu S, Nakaya I, Miyaoka Y, Koizumi M, Nishiwaki H, Sofue T, Ishimoto T, Kurita N*, Wada T*. (*co-last authors)
膜性腎症が疑われる患者における抗ホスホリパーゼA2受容体抗体測定の選好:ネフローゼ症候群診療ガイドライン2020年版発行後の診療実態調査
Clinical and Experimental Nephrology 2024; 28: 531-538. doi:10.1007/s10157-024-02462-1

エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」の出版に伴い、原発性膜性腎症が疑われるネフローゼ症候群に対する診断検査「抗ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)抗体」の使用実態と使用の選好を調査しました。
2021年11月から12月にかけて、306の施設で勤務する427名の腎臓専門医からウェブアンケート調査に回答をいただきました。その結果、現職場での測定経験があったのは140名(32.8%)でした。腎生検の禁忌のない原発性膜性腎症が疑われる症例では、回答者の147人(34.4%)が抗PLA2R抗体検査を測定する意向を示しました。
さらに、現在の職場の限られたキャパシティーと職場や患者への検査費用の負担が測定を妨げている可能性も示唆されました。
京都大学の佐々木先生が主筆となり、多くの先生方のご支援を頂きながら進めて達成できた成果です。主指導教員は特に調査の計画と解析、論文化でコミットしました。

Murashima M, Yamamoto R, Kanda E, Kurita N, Noma H, Hamano T, Fukagawa M.
ビタミンD受容体活性化薬およびカルシウム受容体作動薬と転倒との関係性と身体活動による効果の修飾:日本透析アウトカム研究
Therapeutic Apheresis and Dialysis 2024; 28: 547-556. doi:10.1111/1744-9987.14122
Toida T*, Kurita N*, Abe M, Hanafusa N, Joki N. (*co-first authors)
血清マグネシウム異常が維持血液透析患者の心房細動に与える影響:全国規模の研究
Cardiorenal Medicine 2024; 14: 105–112. doi:10.1159/000536595

血液透析患者における血清マグネシウム値と心房細動の関係を調べた研究です。血液透析治療で2549の施設に通院中の16万5926名を対象に、血清マグネシウム値を、7つのカテゴリー(≦1.5、>1.5-≦2、>2-≦2.5、>2.5-≦3、>3-≦3.5、>3.5-≦4、>4.0mg/dL)に分類して解析を行いました。その結果、基準値(>2.5-≦3mg/dL)と比較して、より低い血清マグネシウム値は心房細動の増加と関連していました(血清マグネシウム値が≦1.5、>1.5-≦2、および>2-≦2.5mg/dLのカテゴリーにおける調整オッズ比はそれぞれ、1.49、1.24、および1.11)。やや高めの血清マグネシウム値は、心房細動の少なさと関連していました(>3.0-≦3.5mg/dLのカテゴリーにおける調整オッズ比は0.87)。血清マグネシウム値の補正が心房細動の発生を減少させるかどうかを明らかにするためには、縦断研究や介入研究による検証が必要です。東邦大学の常喜教授の研究課題に参画し、博士研究員の戸井田先生と主指導教員がリサーチ・クエスチョンの発案と解析論文化でコミットしました。

Joki N*, Toida T*, Nakata K, Abe M, Hanafusa N, Kurita N. (*co-first authors)
血液透析患者の心房細動と虚血性脳卒中の発生の関連性に動脈硬化性疾患が及ぼす影響の評価
Scientific Reports 2024; 14: 1330. doi:10.1038/s41598-024-51439-3

血液透析を受ける患者の動脈硬化性疾患の数が心房細動と虚血性脳卒中の発症との関連を修飾するかどうかを検討しました。15万1350人が分析対象となり、心房細動の有病率は6.5%であり、2019年から2020年の間に対象者全体のうちの3.2%が虚血性脳卒中を発症しました。虚血性脳卒中に対する心房細動の調整オッズ比は1.5でしたが、動脈硬化性疾患の増加とともにオッズ比が減少傾向を示すエビデンスは明確ではありませんでした。主指導教員は、博士研究員とともに研究計画の明確化と解析にコミットしました。