概要
栗田、矢嶋宣幸(昭和大学)、小黒奈緒(昭和大学)、脇田貴文(関西大学)らは、翻訳・逆翻訳の正式な手続きを経て、短縮版Wake Forest Physician Trust Scale – the Trust in Doctors Generally Scale:主治医(担当医)への信頼尺度の日本語版を作成しました(Oguro N, Suzuki R, Yajima N, Wakita T, Kurita N, et al. BMC Health Serv Res. 2021)。原作者のお1人であるMark A. Hall教授(ウェイク・フォレスト大学医学部・法学部)にも逆翻訳の意味内容をご確認いただき、日本語版の使用許可を得ました(2020年4月20日)。本ページで紹介する短縮版Wake Forest Physician Trust Scaleは、医師一般(医師全般)に対する信頼を、能力、正直さ、忠実さ、全般的な信頼の面から測定する5項目のスケールです。専門領域を問わず使用に適しています(Dugan E, Hall MA, et al. BMC Health Serv Res. 2005; 5(1): 64)。日本語訳作成に求められるプロセスを手順通りに実施し、信頼性・妥当性を検証したものです。したがって、世界に発信する臨床研究を目標とする場合に、安心してご活用・引用して頂けます。ご利用を検討される方は、論文本文とサプリメントに情報がありますので、ご覧ください。
- 5項目の質問文があります。
- 問1が逆転項目です。
- それぞれの質問文に対して、5つの回答文の中から1つを選択してもらいます。
- 選んだ回答文に対して、1点(まったくそう思わない)から5点(とてもそう思う)までの得点が付与されます。最高得点は25点になります。
- (合計得点-最低得点[5点])÷(最高得点[25点]-最低得点[5点])×100の換算によって、0-100点の得点に変換できます。
- 内的整合性信頼性は、Cronbachのαで0.88でした。
- 医師と患者の関係についての類似の概念との相関の程度を調べることで、基準関連妥当性を検証しました。
短縮版Wake Forest Physician Trust Scale – the Trust in Doctors Generally Scale日本語版の版権者
Noriaki Kurita, Nobuyuki Yajima, Takafumi Wakita, Nao Oguro, Mark A. Hall
尺度の利用について
非営利目的のご利用の場合
短縮版Wake Forest Physician Trust Scale日本語版を活用して研究を行い、学会・論文で発表したい場合や、教育目的の書籍で使用される場合は、無償でご利用ください。但し、下記の論文(BMC Health Serv Res 2021)の引用を条件とします。
Oguro N, Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Wakita T, Kurita N.
Dissatisfaction with family members’ medical care: the relationship with trust in personal physicians and physicians generally in Japan.
medRxiv. 2021:2021.04.21.21255773. DOI:10.1101/2021.04.21.21255773
営利目的でのご利用の場合
営利目的で短縮版Wake Forest Physician Trust Scale日本語版のご利用をお考えの場合は、お問い合わせください。
※短縮版Wake Forest Physician Trust Scale – the Trust in Doctors Generally Scale日本語版を活用した臨床研究論文が、The Journal of Rheumatology誌から出版されました。また、Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌から出版されました。さらに、Arthritis Care & Research誌から出版されました。
日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)の方々を対象に、患者の共同意思決定(SDM)への参加が医師への信頼とどのように関係するかを追跡調査により分析しました。
その結果、共同意思決定の質が高いほど、主治医に対する信頼度が高くなることがわかりました。さらに、医師全般に対する信頼度も高くなることがわかりました。
以上から、SLEの方々がSDMに参加することによって、医師-患者関係や医療全体の信頼が向上する可能性が示唆されました。この研究は、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けたTRUMP2-SLEプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果であり、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生、岡山大学の宮脇先生らとのチームプロダクトであり、リサーチ・クエスチョンの発案・解析・論文化に主指導教員が力を注いだものです。[※研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。難病患者の主治医への信頼度 治療の共同決定で向上 福島医大・栗田氏ら発表. 福島民友. 2024年9月5日 日刊4ページ.]
日本の血液透析患者を対象に質問紙調査を行い、健康に関する情報を入手して適切に活用する力(ヘルスリテラシー)が服薬を指示通りに続ける程度(服薬の遵守度)にどのように影響するか、またこの影響が医師への信頼度によってどのように中継されるかを調査しました。
その結果、機能的なヘルスリテラシーと伝達的なヘルスリテラシーは、服薬の遵守度と良い関係があることが分かりましたが、批判的なヘルスリテラシーが高いと服薬の遵守度が低下する傾向がありました。さらに、これらのヘルスリテラシーと服薬の遵守度の関係は、医師への信頼によって中継される可能性が示されました。言いかえると、健康情報を理解する力が高いほど、服薬の遵守度が高くなりますが、これは医師の治療の説明などに対する信頼が役割を果たしており、信頼するほど医師の指示通りに服薬を続けられる傾向があるという考えを、研究が支持しました。
この結果から、血液透析患者の服薬の遵守度を向上させるためには、適切なヘルスリテラシーに対応したアプローチだけでなく、医師との信頼関係の構築も重要であることが確認できました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。福島医大 人工透析患者の服薬行動調査 効用に懐疑で中断の傾向 稲永医師、栗田特任教授のチーム. 福島民報. 2024年1月31日 日刊21ページ. また、研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。医療情報 積極収集する患者 服薬順守度高く 福島医大の稲永医師ら調査. 福島民友. 2024年1月31日 日刊19ページ.]
日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)の方々を対象に、ヘルスリテラシーが主治医への信頼や医師全般への信頼とどのように関係するかを横断的に分析しました。基本的・伝達的ヘルスリテラシーが高いほど、主治医に対する信頼が厚いことがわかりました。一方で、伝達的ヘルスリテラシーが高いほど医師全般への信頼が高く、批判的ヘルスリテラシーが高いほど医師全般に対する信頼が低いことがわかりました。また、インターネットの利用時間が長いほど、医師全般に対する信頼度が低くなる関係性が認められましたが、主治医への信頼度が必ずしも低くなるわけではないことを示しました。科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けたTRUMP2-SLEプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果であり、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生、岡山大学の宮脇先生らとのチームプロダクトです。[※本研究は、リウマチの診療に役立つ重要な論文として、ジャーナルの編集長であるSilverman博士によって「Editor's Picks」に選ばれました。そして、ポッドキャストでも紹介されました(15:16-17:53)。また、研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。難病全身性エリテマトーデス患者 情報を積極的に収集 医師への信頼度高く 福島医大大学院 研究チームまとめ. 福島民報. 2023年1月29日 日刊21ページ. また、福島民友に掲載されました。患者と対話で信頼醸成 福島医大 ヘルスリテラシー研究. 福島民友. 2023年1月27日 日刊3ページ.]