ヘルスサービスリサーチ/health service research

Oguro N, Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Wakita T, Hall MA, Kurita N#. (#corresponding author)
家族の医療体験が自分の主治医や医師全般へのトラスト(信頼感)に与えるインパクト
BMC Health Services Research 2021; 21: 1122. doi:10.1186/s12913-021-07172-y

非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の成人患者を対象に、家族が受けた医療に不満を抱くと、現在の主治医に対する信頼度や医師全般に対する信頼度にどのような影響があるかについて調査を行いました。主治医に対する信頼度は、今回我々が日本語化した5項目の短縮版Wake Forest Physician Trust Scaleで評価しました。結果、家族の受けた医療に対する不満は、医師全般に対する信頼の低下と関連していることがわかりました(平均差は-9.58点、95%信頼区間は-12.4点~-6.76点)。現在の主治医に対する信頼度も低下しましたが、低下の程度は医師全般に対する信頼度の低下に比べて小さいものでした(平均差は-3.19点、95%信頼区間は-6.02点~-0.36点)。ウェイク・フォレスト大学医学部のMark Hall教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[※この研究は、健康政策やヘルスサービスリサーチの専門誌であるThe Milbank Quarterly誌に引用されました。具体的には、家族のコンテキストが健康の社会的決定要因のメカニズムを理解する上で重要であることの根拠に用いられました。]

Suzuki R, Yajima N, Sakurai K, Oguro N, Wakita T, Thom DH, Kurita N#. (#corresponding author)
誤診経験と現主治医への信頼との関係性
Journal of General Internal Medicine 2022; 37: 1115-1121. doi:10.1007/s11606-021-06950-y

成人の非感染性疾患(がん、糖尿病、うつ病、心疾患、膠原病)の患者を対象に、患者本人及び、患者家族の誤診経験が現主治医への信頼にどの程度影響をおよぼすのかを調べました。主治医に対する信頼は、今回我々が日本語化した11項目の改良版Trust in Physicians Scaleで評価しました。患者および家族の誤診経験は、現主治医に対する信頼の低下と関連していました(平均差 -4.30点、95%CI -8.12点~-0.49点および-3.20点、95%CI -6.34点~-0.05点)。隠れた信頼低下の原因として、患者本人や家族の誤診体験に着目することの重要性が示唆されました。スタンフォード大学医学部のThom教授との共同研究であり、科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田)を受けたTRUMP2-Netプロジェクト (the Trust Measurement for Physicians and Patients - the Net survey) の成果です。[free-fulltext (全文読めます)][※研究成果が、福島民報に掲載されました。患者らの誤診体験 別の医師でも信頼低下. 福島民報. 2021年7月7日 日刊2ページ. また、福島民友に掲載されました。主治医の信頼度数値化 福島医大 患者への質問票開発. 福島民友. 2021年7月7日 日刊3ページ. また、デンマーク患者安全学会が発行するニュースレターでも紹介されました。Fagligt Nyt om patientsikkerhed, Dansk Selskab for Patientsikkerhed. 加えて、米国Agency for Healthcare Research and Qualityが発行する患者安全に関するレポートでも引用されました。Patient Experience as a Source for Understanding the Origins, Impact, and Remediation of Diagnostic Errors.]

Nishiwaki H*, Niihata K*, Shimizu S, Shibagaki Y, Yamamoto R, Nitta K, Tsukamoto T, Uchida S, Takeda A, Okada H, Narita I, Isaka Y, Kurita N, and Japan Nephrotic Syndrome Cohort Study group. (*equally contributed)
成人特発性ネフローゼ症候群におけるレニン-アンジオテンシン系阻害薬の処方と処方関連因子:全国コホート研究
The Journal of Clinical Hypertension 2021; 23: 999–1007. doi:10.1111/jch.14224

ネフローゼ症候群GL作成ワーキンググループから発案されたクリニカル・クェスチョンです。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などの特発性ネフローゼ症候群に対するレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の処方実態を調べました。ネフローゼの治療開始前に4割弱の患者にRAS阻害薬が処方されていました。処方されていなかった患者のうち、約3分の1の患者でRAS阻害薬が新たに処方されました。特に膜性腎症や、観察開始時点の収縮期血圧が高い患者ほど、新規処方される実態が明らかとなりました。今後は、RAS阻害薬により蛋白尿を寛解させるだけの有効性が実臨床で認められるかどうか、その検証が望まれます。西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)・博士研究員の新畑覚也先生を中心に解析・論文化が進められました。主指導教員は、当時のワーキンググループリーダーの柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁でリサーチ・クエスチョンの発案に関わり、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援にコミットしました。

Yazawa M, Omae K, Shibagaki Y, Inaba M, Tsuruya K, Kurita N
血液透析患者における透析施設までの交通手段と健康関連QOLとの関係性:J-DOPPS研究
Clinical Kidney Journal 2020; 13: 640-646. doi:10.1093/ckj/sfz110

透析施設へ自力で通院できる血液透析患者では、他者による運転よりも、自分で運転する場合や、自転車や徒歩で通院する場合の方が、将来の健康関連QOLが良好である可能性が示されました(健康が日常生活機能に及ぼすインパクトや、主観的な健康感がより良いということです。身体的コンポーネントサマリースコア、精神的コンポーネントサマリースコアのいずれもです)。聖マリアンナ医科大学の谷澤先生がリサーチ・クエスチョンを発案され、臨床研究教育推進部の大前先生が解析されました。主指導教員はご縁をいただき、研究計画および解析方針に対する助言と、論文執筆の支援でコミットさせていただきました。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあってか、ジャーナルの総説記事にもとりあげられました [Editorial記事: Often forgotten, transport modality to dialysis may be life-saving (透析施設への移動手段は忘れられがちだが、命を救うかもしれない)]。小職の地域では遠方から通院する必要がある方が多いため、解釈はもちろん慎重でないといけないと思っております。


Kojima Y, Yokoya S, Kurita N, Idaka T, Ishikawa T, Tanaka H, Ezawa Y, Ohto H.
福島第一原子力発電所事故後の停留精巣: 因果関係か偶然か?
Fukushima Journal of Medical Science 2019; 65: 76-98. doi:10.5387/fms.2019-22

停留精巣は男児の先天性疾患で多いものです。福島第一原子力発電所事故後の停留精巣について執筆された論文“Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.”に対して、研究デザイン・データ解析手法・考察の妥当性などを多角的に検討しています。ご多忙の小島教授(泌尿器科学講座)が中心となって執筆した長編レビュー論文です。主指導教員はご縁をいただき、先行論文の研究デザインやデータ解析の適切さに対する評価でコミットさせていただきました。全文読めます[free-fulltext]。

Niihata K*, Nishiwaki H*, Kurita N#, Okada H, Maruyama S, Narita I, Shibagaki Y, Nakaya I.(*Equally contributed; #corresponding author)
診療方針のばらつきと、ネフローゼ症候群診療ガイドラインからの乖離:腎臓専門医の調査研究
Clinical and Experimental Nephrology 2019; 23: 1288-1297. doi:10.1007/s10157-019-01772-z
[ 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績 ]

ネフローゼ症候群GLワーキンググループで行った調査研究で、主指導教員は柴垣教授(聖マリアンナ医科大学)によるご縁で参画させていただきました。微小変化型ネフローゼ症候群や、膜性腎症などのネフローゼ症候群に関する診療のばらつきの実態を調べました。また、診療のばらつきを決定する、腎臓専門医の特性、施設の特性などを調べました。本研究では、専門医が担当する症例数が多い場合、ステロイドの投与期間が長いことがわかりました。また、経験年数が長い場合、あるいは大学附属病院の場合、高齢者へのステロイドの減量投与が行われやすいことがわかりました。専門医の回答割合が低かったため、今後はより代表性のあるサンプリングで検証することが望まれます。中屋来哉先生(岩手県立中央病院)を中心に、博士研究員の新畑覚也先生・西脇宏樹先生(昭和大学、イノベーションセンターOB)で調査票を作成されました。主指導教員は、新畑先生・西脇先生の解析・論文化支援でコミットしました。研究成果は、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性腎障害に関する調査研究 研究班の業績として報告されました。[free-fulltext (全文読めます)]

Yokoyama K*, Kurita N*, Fukuma S, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、ミネラル代謝の測定頻度:ガイドライン達成および治療の調節との関係性
Nephrology Dialysis Transplantation 2017; 32: 534–541. doi:10.1093/ndt/gfw020
[ 海外学会の公表記事 ]

血液透析患者の血清カルシウム(Ca),リン(P),副甲状腺ホルモン(PTH)を測定する頻度の目安は、国内外の診療ガイドラインに記されています。しかし、測定頻度の根拠がありませんでした。二次性副甲状腺機能亢進症の血液透析患者3276名が対象の本コホート研究では、日本透析医学会のガイドラインの目標域を超えている場合、血清Caの毎週測定が毎月測定よりも目標域に達しやすく、PTHの毎月測定が3ヵ月毎の測定よりもガイドラインの目標域に達しやすかったことが明らかとなりました。ガイドラインの目標域内にある場合、より頻回な測定によって血清Ca, P, PTHの目標域が維持される可能性は、明らかになりませんでした。教員がリサーチ・クエスチョンの立案・解析・論文化にコミットしました。