臨床研究で用いられている効果の指標(effect measure)と、効果の大きさの解釈について解説しています。効果の指標は評価項目の変数の種類や、研究デザインの種類によって異なることが伝わるように説明しました。臨床の前線で活躍される整形外科医の先生方に親しんでいただけるよう、整形外科の医学に関係する実例をふんだんに取り入れるようにしました。
業績
日本の血液透析患者を対象に質問紙調査を行い、健康に関する情報を入手して適切に活用する力(ヘルスリテラシー)が服薬を指示通りに続ける程度(服薬の遵守度)にどのように影響するか、またこの影響が医師への信頼度によってどのように中継されるかを調査しました。
その結果、機能的なヘルスリテラシーと伝達的なヘルスリテラシーは、服薬の遵守度と良い関係があることが分かりましたが、批判的なヘルスリテラシーが高いと服薬の遵守度が低下する傾向がありました。さらに、これらのヘルスリテラシーと服薬の遵守度の関係は、医師への信頼によって中継される可能性が示されました。言いかえると、健康情報を理解する力が高いほど、服薬の遵守度が高くなりますが、これは医師の治療の説明などに対する信頼が役割を果たしており、信頼するほど医師の指示通りに服薬を続けられる傾向があるという考えを、研究が支持しました。
この結果から、血液透析患者の服薬の遵守度を向上させるためには、適切なヘルスリテラシーに対応したアプローチだけでなく、医師との信頼関係の構築も重要であることが確認できました。[※研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。福島医大 人工透析患者の服薬行動調査 効用に懐疑で中断の傾向 稲永医師、栗田特任教授のチーム. 福島民報. 2024年1月31日 日刊21ページ. また、研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。医療情報 積極収集する患者 服薬順守度高く 福島医大の稲永医師ら調査. 福島民友. 2024年1月31日 日刊19ページ.]
日本人の全身性エリテマトーデス(SLE)の方々と、その主治医を対象に質問票調査を行い、患者さんの担当医に対する信頼度と担当医自身が答えた自分の性格傾向がどのように関係するかを分析しました。同意性・外向性が高いほど、担当医に対する信頼が厚いことがわかりました。一方で、勤勉性が高いほど、担当医に対する信頼度が低くなる関係性が認められました。以上より、SLEを診療する担当医に対する信頼度は、担当医のパーソナリティーの特性によって差が生じうることが示されました。👨⚕️👩⚕️科学研究費補助金の助成(基盤研究(B) 課題番号19KT0021; 研究代表者:栗田; 研究分担者:矢嶋 脇田 佐田 下島 吉見)を受けたTRUMP2-SLEプロジェクト(the Trust Measurement for Physicians and Patients with SLE)の成果であり、昭和大学の矢嶋先生、高知大学の佐田先生、信州大学の下島先生、横浜市立大学の吉見先生、岡山大学の宮脇先生らとのチームプロダクトです。[※本研究の学会発表時の内容が、メディカルトリビューンに掲載されました。患者の信頼獲得に過度な勤勉さが仇となる⁉ TRUMP2-SLE研究. 2023年6月5日. 研究成果が、福島民報 日刊に掲載されました。主治医の性格で信頼度に差 福島医大大学院研究チーム 難病患者の結果まとめる. 福島民報. 2023年12月19日 日刊19ページ. また、研究成果が、福島民友 日刊に掲載されました。話しやすい主治医、患者信頼 福島医大が調査. 福島民友. 2023年12月19日 日刊19ページ.]
腎透析領域の臨床研究で応用されている周辺構造モデル(marginal structural model)について解説しています。特に、周辺構造モデルを必要とする臨床セッティングとクリニカル・クェスチョンの例、周辺構造モデルで用いられる統計モデルの例、解釈の仕方や注意点について説明を試みました。
透析における臨床研究で用いられるPROと身体データとのつながり、PROの使い道、健康関連ホープ尺度について解説しています。
腎臓臨床研究における効果の指標、観察研究の妥当性の評価などについて解説しています。
東日本大震災・原発事故の前後で病気が増えた、うつが増えた、…などといった研究が数多く出版されています。しかし、その増加は本当に原発事故のせいなのか?大震災のせいなのか?デザイン面で考える必要があります。この原稿では、分割時系列解析(interrupted time series analysis)を用いた臨床研究の読み方について解説しています。