バイタリティー(活力)を測るSF-12質問票の単一項目「過去4週間のうちどのぐらい活力(エネルギー)にあふれていましたか」への回答と、臨床アウトカム(健康に関しての結果)の関係性を、血液透析患者の大規模なコホート(J-DOPPS)で分析しました。頻脈・ベンゾジアゼピン等の使用が低い活力と関係し、高いBMI・アルブミン・透析量が高い活力と関係しました。バイタリティーへの回答が良好なほど、バイタルサイン等と独立に、生命予後が良好で、反復のある血管イベント入院・死亡が少ないことがわかりました。単一項目のバイタリティー(活力)を、”QOLのバイタルサイン”として、診療現場でバイタルサインのように測定する意義を示しました。
自己管理手帳の記載割合と腹膜透析関連感染症の発生との関連性を調べた臨床研究論文です。現場の疑問を温めていた飯田英和先生と、弊分野・臨床研究イノベーションセンターの共同作業で発信できた成果です。主指導教員が研究デザインの立案・解析・論文化の指導に参画しました。
ニボルマブ投与後に生じる腸炎の治療に関しての症例報告です。大学院研究生として在籍している伊與田友和氏が、御自身の医療現場での経験を題材に報告を行いました。伊與田氏は当時、坪井病院の薬剤師として活躍していました。弊分野の教員が論文の書き方を指導いたしました。今ではNature Reviews Clinical Oncologyにも引用されています。
前立腺がんの手術治療時に使われる縫合糸の違いで、手術後の尿道・尿道周囲の傷害の程度や、排尿の機能・QOLに一時的な違いが生じることを示しました。当時、泌尿器科学講座におられた羽賀先生がリサーチ・クエスチョンを考案され、弊分野の教員が、研究計画・解析論文化で参画させていただきました。この論文が発信されてから2年後の2020年度、羽賀先生は福岡大学医学部 腎泌尿器外科学講座の主任教授にご就任されました [詳しくはこちら]。
血液透析患者の透析間体重増加の上限値が診療ガイドラインに記されています。しかし、上限値の根拠とする既存の研究結果には栄養状態や治療条件が絡み合うため、不一致がありました。本邦で週3回の血液透析を受ける8,661名の患者が対象の本研究では、血清アルブミンが3.8 g/dL以上(国際腎臓栄養代謝学会のカットオフを採用)の場合のみ、過剰な透析間体重増加(7%以上)が予後不良でした。他方、血清アルブミンが3.8 g/dL未満の場合、透析間体重増加が少ない場合(2%未満)と中等度の場合(4%-5%)が、それぞれ予後不良・予後良好である可能性を示しました。この研究は、アメリカ腎臓財団が管理栄養士(Registered Dietitian)に提供する継続的専門教育(CPE)の題材に採用されました。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。研究が海をわたって、現場の腎臓栄養管理を考えるための贈り物になったかもしれない、と思います。
保存期腎不全(CKD)で内シャント(AVF)を作製するタイミングについては、欧米のガイドラインでは早期(CKDステージ4)を推奨しています。しかし、早期の作製をする場合、透析を導入する前にAVFが閉塞したり、お亡くなりになる割合が高い実態が報告されていました。本邦のガイドラインでは、AVFを作製するタイミングについて、CKDステージ5の段階を推奨していることに本研究では着目しました。その結果、CKDステージ5でAVFを作成した後に、透析を始める前にAVFが機能しなくなったり・お亡くなりになる割合は低いことを明らかにしました(1年で約5%)。本邦独自のステージでの作製する診療実態を記述した研究です。教員が計画立案・解析・論文化に参画しました。研究は総説記事に取り上げられました[Editorial記事: When Is the Right Time for Arteriovenous Fistula Placement in Patients with End-Stage Renal Disease? (末期腎不全患者の内シャント造設の適時はいつなのか?)]。また、UpToDateに引用され、「腎不全患者の血管アクセスが必要と思われる時期、とくに推算GFRで5-15ml/min/m2のころに、血管アクセス外科医に患者さんを紹介すべき」というUpToDateの著者によるオピニオンの礎となりました。 [Arteriovenous fistula creation for hemodialysis and its complications]。また、韓国腎臓学会の「至適血液透析の診療ガイドライン2021」で引用された日本の臨床データからの6編の論文のうちの1編として貢献しました[論文]。