業績

Omae K, Kurita N#, Takahashi S, Fukuma S, Yamamoto Y, Fukuhara S, and The Sukagawa Study Group (Collaborators: Iida H, Niihata K, Tominaga R). (#corresponding author)
AGEs蓄積と過活動膀胱(OAB)の関係性:須賀川研究
Asian Journal of Urology 2021; 8: 189-196. doi:10.1016/j.ajur.2020.03.004

終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、過活動膀胱である可能性が高いか否かを検証した横断研究です。過活動膀胱は、尿意切迫感(突然にトイレに行きたくなって我慢ができない状況)を中心に、頻尿・夜間頻尿・失禁を伴うものです。膀胱組織における終末糖化産物の関与を示唆する先行研究があったにもかかわらず、健常な後期高齢者においては、過活動膀胱との関連性があるとはいえませんでした。ネガティブスタディーは一般的にアクセプトされにくいですが、臨床研究教育推進部の大前先生が辛抱強く研究を続けて出版されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。全文お読みいただけます[free-fulltext]。

Kojima Y, Yokoya S, Kurita N, Idaka T, Ishikawa T, Tanaka H, Ezawa Y, Ohto H.
福島第一原子力発電所事故後の停留精巣: 因果関係か偶然か?
Fukushima Journal of Medical Science 2019; 65: 76-98. doi:10.5387/fms.2019-22

停留精巣は男児の先天性疾患で多いものです。福島第一原子力発電所事故後の停留精巣について執筆された論文“Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.”に対して、研究デザイン・データ解析手法・考察の妥当性などを多角的に検討しています。ご多忙の小島教授(泌尿器科学講座)が中心となって執筆した長編レビュー論文です。主指導教員はご縁をいただき、先行論文の研究デザインやデータ解析の適切さに対する評価でコミットさせていただきました。全文読めます[free-fulltext]。

Inoue H, Shimizu S, Watanabe K, Kamiyama Y, Shima H, Nakase A, Ishida H, Kurita N, Fukuma S, Fukuhara S, Yamada Y
Nephrology Dialysis Transplantation 2018; 33: 676-683. doi:10.1093/ndt/gfx253

血液透析患者の腹部大動脈レベルにおける血管石灰化の2年間の推移(トラジェクトリー)混合軌跡モデリング(Group-based multi-trajectory modeling)でグループ分けされました。石灰化の急激な増加のグループと、研究開始時点で高度な石灰化があり、ゆっくり増加するグループの両方が、その後の悪い生命予後と関連する結果となっていました。

Niihata K*, Takahashi S*, Kurita N#, Yajima N, Omae K, Fukuma S, Okano T, Nomoto Y, Omori K, Fukuhara S. (*Equally contributed; Collaborators: Iida H, Tominaga R; #corresponding author)
高齢地域住民における終末糖化産物(AGEs)の蓄積と難聴の関係性:須賀川研究
Journal of the American Medical Directors Association 2018; 19: 235-239.e1. doi:10.1016/j.jamda.2017.09.008

終末糖化産物(AGEs:Advanced Glycation End-products)が蓄積しているほど、聴力障害である可能性が高いことを示した横断研究です。新畑先生と高橋先生がリサーチ・クエスチョンを考案し、主筆されました。臨床研究イノベーションセンターが受託している須賀川市の健康長寿事業から生まれた成果です。主指導教員が解析・論文化で参画させていただいたことに、感謝しております。

Akizawa T*, Kurita N*, Mizobuchi M, Fukagawa M, Onishi Y, Yamaguchi T, Ellis AR, Fukuma S, Alan Brookhart M, Hasegawa T, Kurokawa K, Fukuhara S. (*co-first authors)
二次性副甲状腺機能亢進症を伴う血液透析患者における、シナカルセトのPTH依存的な有効性
Scientific Reports 2016; 6: 19612. doi:10.1038/srep19612
[ 紹介記事(日本骨代謝学会) ]

二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者において、シナカルセト処方開始の有効性がintact PTHの重症度の別に異なるかどうかを調べました。その結果、シナカルセト処方開始の有効性は、iPTH が高いほど大きい可能性があることが示されました。この研究はステアリング委員の先生によるご指導、iHopeの大西良浩様の支援、東北大学の山口拓洋先生、大阪大学の新谷歩先生らのご助言など、多くの先生方のご協力で実現しました。

Kurita N, Horie S, Yamazaki S, Otani K, Sekiguchi M, Onishi Y, Takegami M, Ono R, Konno S, Kikuchi S, Fukuhara S
男性ホルモンの低い値が低い腎機能と関係する:LOHAS研究
Journal of the American Medical Directors Association 2016; 17: 371.e1-.e6. doi:10.1016/j.jamda.2016.01.011
[ テストステロンで男らしさと健やかさを保て! ]

福島の高齢化地域に在住の成人男性848名を対象にした横断調査です。唾液テストステロン濃度が低いほど、推算糸球体濾過量(eGFR)が低いことを示しました。この関係性は、年齢などの背景因子で補正した上での結果でした。60歳以上の高齢者に限定して分析した場合も同じ結果でした。この研究により、腎機能は男性ホルモンの低下によって減少する可能性が示唆された。今後、縦断的な検証が必要であると考えております。この研究成果は、順天堂大学の 堀江 重郎 教授、本学の整形外科学講座、京都大学医療疫学分野のご縁で実現したものです。堀江先生より、メディカルトリビューでご紹介いただきました。[テストステロンで男らしさと健やかさを保て!]

Kurita N, Akizawa T, Fukagawa M, Onishi Y, Kurokawa K, Fukuhara S.
二次性副甲状腺機能亢進症を合併症した血液透析患者における、血清マグネシウム異常による生命予後への寄与:3年間のコホート研究
Clinical Kidney Journal 2015; 8: 744-752. doi:10.1093/ckj/sfv097

慢性腎臓病患者で是正すべきミネラル代謝異常の眼目はカルシウムやリンとされています。近年は、マグネシウム(Mg)も注目されるようになりました。本研究はMgが生命予後に寄与する大きさを見える化するために行われたものです。対象は二次性副甲状腺機能亢進症を合併した血液透析患者3276名のコホート(MBD-5D)です。血清Mgと死亡率の関係性は U 字型でした。特に、血清Mg 2.5-2.7mg/dlを基準にすると、血清Mg≦2.5mg/dlでは死亡率が1.6-1.7倍高いことが明らかとなりました。また、血清Mg≦2.5mg/dlが血清Mg 2.5-2.7mg/dlになった場合、集団レベルで約4分の1の死亡が防げる可能性を示唆しました。

Kurita N, Ito T, Shimizu S, Hirata T, Uchihara H.
Diabetes Care 2014; 37: e198-e199. doi:10.2337/dc14-1252

この症例報告では、DDP-4阻害薬のビルダグリプチンを服用した患者に薬剤性肝障害が発生した事例を報告しました。ビルダグリプチンを服用している間に行われたリンパ球幼若化試験(DLST)は陽性でしたが、他のDDP-4阻害薬に切り替えた後に肝障害が改善し、DLSTの結果も陰性化が確認されました。そのため、この肝障害はビルダグリプチンに特異的なものであると考察しました。この報告は1事例についての報告に過ぎませんがDiabetes Care誌に掲載されました。それから8年後には、この症例を引用して、イギリスのビッグデータを使用した観察研究論文がDiabetes Care誌に掲載され、DDP-4阻害薬全体で急性肝障害が増加することが示されました。この報告は、常に進歩が続く医療の現場で、私たちが何を学ぶことができるかを示しています。私たちは、患者の安全を最優先に考えると同時に、未知の有害事象の可能性も追及することがいかに重要であるかを再認識しました。